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象印マホービン社員の年間平均給与、2021年はジャンプアップ! 気になる業績推移もチェック

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、炊飯ジャーやステンレス魔法瓶などを製造・販売する象印マホービンです。

   1918年に市川金三郎、銀三郎の兄弟が大阪で魔法瓶の製造を始め、1923年から象をトレードマークに販売を開始。1970年に電子ジャーを開発し家電部門に進出します。1986年に大証二部に上場、2018年に東証一部に市場変更しています。

  • 「象印マホービン」の名のとおり、魔法瓶の製造がスタートだった(写真はイメージ)
    「象印マホービン」の名のとおり、魔法瓶の製造がスタートだった(写真はイメージ)
  • 「象印マホービン」の名のとおり、魔法瓶の製造がスタートだった(写真はイメージ)

21年11月期で増収増益も右肩下がり傾向

   それではまず、象印マホービンの近年の業績の推移を見てみましょう。

   象印マホービンの業績は、売上高は2015年11月期の897億9600万円、営業利益は2016年11月期の121億900万円をピークに、右肩下がりに減少しています。 2020年11月期には、売上高がピーク時の16.5%減、営業利益が同55.1%減まで落ち込みました。

   2021年11月期には増収増益を果たし、特に営業利益率が8%台に改善したものの、ピーク時の13%台には遠く及んでいません。

   なお、2021年11月期は巣ごもり消費によりホットプレートやコーヒーメーカーなどが伸長。炊飯ジャーは高級路線の「炎舞炊き」シリーズが好調に推移したものの、普及価格帯が苦戦したようです。

   2022年11月期の業績予想は、売上高が793億円、営業利益が30億円の見込み。ただし、当期より適用する「収益認識に関する会計基準」の影響を除くと、売上高が810億円、営業利益が49億円(参考値)となる見込みです。

   なお、営業利益の減少要因の一つに「アルミ、銅、ニッケル、樹脂など原材料の大幅な高騰や為替の影響による売上原価の上昇」が挙げられており、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受ける恐れがありそうです。

主力は「炊飯ジャー」。海外売上比率は3割強

   象印マホービンは「家庭用品等の製造、販売及びこれらの付随業務」を営んでおり、セグメント情報の記載を省略していますが、決算説明資料では以下の区分で製品を整理しています。

Ⅰ. 調理家電
・炊飯調理(炊飯ジャー)
・湯沸調理(電気ポット、ケトル)
・電気調理(ホットプレート、コーヒーメーカー、オーブントースター)
Ⅱ.リビング
・ガラスマホービン(ガラスポット)
・ステンレスマホービン(ステンレスボトル、タンブラー、フードジャー)
・その他リビング
Ⅲ.生活家電
・空調・冷暖房(加湿器、空気清浄機)
・キッチン家事(食器乾燥機)
・その他生活家電
Ⅳ.その他(飲食事業など)

   製品区分別の売上高は、調理家電が全体の71.8%と大半を占め、リビングが20.9%、生活家電が5.0%、その他が2.3%となっています。

   細区分では、炊飯ジャーの炊飯調理が全体の45.2%を占める主力製品です。求人サイトによると、炊飯ジャーは「国内シェア15年連続No.1」とのことです。

   次いで、ステンレスマホービンが19.2%、電気調理が15.6%、湯沸調理が15.6%となっています。

   その他事業の飲食事業は、2018年にオープンしたごはんレストラン「象印食堂」(東京・表参道など)に続き、2021年3月に弁当専門店「象印銀白弁当」を大阪に出店し、JR新大阪駅の定番弁当の一つとして定着しているようです。

   なお、製品区分別の営業利益は、決算説明資料に記載されていませんでした。

   地域別の売上高構成比は、日本が66.9%、アジアが22.3%(うち、中国が11.6%)、北中南米が10.0%、その他が0.8%。同営業利益の構成比は、日本が52.2%、アジアが37.4%(うち、中国が20.8%)、北中南米が11.5%、その他がマイナス1.1%の赤字でした。

   営業利益率では、アジアが13.8%、北中南米が9.5%で、日本の6.4%を大きく上回っています。特に中国は14.8%で、日本の2.3倍と高い利益率を誇っています。

21年11月期の平均年収は800万円台に

   象印マホービンの2021年11月期末の従業員数は、単体508人、連結1304人。4期前の従業員数の単体501人、連結1325人とほとんど変わっていません。

   特に「その他」(総務及び経理等の管理部門)の従業員数は、377人と4期前とまったく同じです。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む時代にスリム化が図られていない点が気になります。

   象印マホービンの平均年間給与(単体)は、2021年11月期は803万2000円に。平均年齢は42.3歳、平均勤続年数は16.1年です。

   平均年齢はここ数期横バイですが、平均勤続年数は微増傾向にあります。これにあわせて2021年11月期は利益率も改善したため、平均年間給与は2020年11月期の減少を大きく取り戻す、800万円台となりました。

   象印マホービンの採用サイトには新卒採用の情報しかありませんが、転職サイトには東京勤務の営業職と、大阪本社勤務の財務経理、海外拠点での管理部門責任者候補の求人がありました。

   営業職の場合、月給30万~36万円。賞与実績として5.7か月分と記載されており、これを加えると想定年収は530万~637万円。管理部門責任者候補の場合、想定年収は700万~1000万円です。

「炊飯ジャー」の中国市場の伸長に期待

   象印マホービンの主力製品は炊飯ジャーで、高齢化により高級路線が進んだものの、今後は人口減少による内需縮小の影響を大きく受けそうです。

   国内事業は利益率が低く、海外展開を図っていますが、売上高ベースで3割強とまだまだ小さいのが現状。収益性の高い中国市場の伸長が期待されます。

   その一方で、製品の原材料となるニッケルなどの金属や樹脂などの高騰が利益を圧迫する不安があります。

   象印マホービンの株価は、コロナショック明けの2021年4月2日に2218円を記録しましたが、今年1月19日には1293円の年初来安値を記録。現在は1370円近辺で推移しています。(こたつ経営研究所)