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使い捨てプラ削減目指す「プラスチック資源循環促進法」施行 でも、具体策は事業者に委ねられ...効果のほどは?

   プラごみ(廃プラスチック)の削減を目指す「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月1日に施行された。使い捨てプラを大量に使う事業者に使用量の削減を義務づけるほか、自治体に回収・リサイクルの努力義務を課す。ただ、具体的な削減策は事業者に委ねる部分が多く、削減効果には疑問符も付く。

  • 「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月1日に施行された(写真はイメージ)
    「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月1日に施行された(写真はイメージ)
  • 「プラスチック資源循環促進法」が2022年4月1日に施行された(写真はイメージ)

新法の目的は、プラスチック素材のリサイクル推進

   新法は、製品、容器、包装などにかかわらず、プラスチックという素材のリサイクルを推進することを目的にしている。

   具体的には、プラ製品を年間5トン以上提供する事業者に使用量削減を義務づけるものだ。対象製品は、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、櫛、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣料用カバーの12品目の「特定プラスチック使用製品」。想定される業者は、食器関係を使うコンビニなど小売、飲食業、宿泊業、クリーニング業などが中心になる。飲食は持ち帰り専門店やデリバリー業者も対象だ。

   削減方法は、製品軽量化▽有料化▽代替素材への転換▽辞退者へポイント還元――などの選択肢があり、事業者の裁量に委ねられる。

   国が取り組みをチェックし、不十分な場合は勧告や命令を出せ、従わない場合は罰金もある。

   家庭のプラごみの回収については、これまでペットボトルや、コンビニ弁当の容器など容器包装プラが分別回収の対象だったが、一気に157種のプラ製品を対象にする。文房具やおもちゃ、CDやDVDなどのプラ製品も一括回収してリサイクルしていこう、ということだ。

有料化は事業者の選択肢の一つ&自治体の回収も努力義務どまり

   J-CASTニュース 会社ウォッチも「待ったなし! 脱プラスチックへ食品・外食業界のエコ対応広がる」(2022年1月10日付)で紹介したように、外食やコンビニではプラ製のストローを紙製に、スプーンやフォークを木製にしたり、容器に植物由来のバイオマスプラスチックを使ったりする取り組みが広がっている。

   ただ、新法施行でどれだけの効果があるかは、心もとない。

   経済協力開発機構(OECD)の最新データでは、2019年の世界のプラ廃棄物は3億5300万トンと、2000年の2.2倍に達した。うち、日本は800万トン、一人当たりの廃棄量は米国に次ぎ世界2位だけに、生半可な削減では追い付かない。

   そのため、新法への期待は少なくないものの、なにしろ削減方法は事業者の裁量にゆだねられている。

   たとえば、施行前は「コンビニ弁当のスプーンも有料化か」などと話題になったが、有料化は事業者の対応手段の選択肢の一つでしかない。2年前に有料化を義務付けられたレジ袋に比べて、「緩い規制」というほかない。事業者への国の勧告や命令も、従わない場合の罰金を設けたとはいえ、最高50万円と少額だ。

   自治体の回収も、努力義務が課されるだけ。回収費用を製造事業者や利用事業者の負担にする仕組みはない。結局、自治体が負担しなければならないため、導入を検討する自治体は一部にとどまるのが実態だ。

   当面は新法施行の効果を見極めていくことになるが、着実に削減できなければ、デポジット制(プラ製品の販売時に預り金=デポジットを価格に上乗せして徴収し、消費者が使用済みプラを店などの回収システムに戻す際に預かり金を返却する仕組み)など、さらに踏み込んだ取り組みが必要になるかもしれない。(ジャーナリスト 済田経夫)