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「新しい冷戦」時代の始まりなのか?...東洋経済「欧州動乱史」 ダイヤモンド「ゴルフ」、エコノミスト「防衛産業」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • なぜ戦争は終わらないのか(「週刊東洋経済」の特集から)
    なぜ戦争は終わらないのか(「週刊東洋経済」の特集から)
  • なぜ戦争は終わらないのか(「週刊東洋経済」の特集から)

ロシアの中に、ウクライナが隠れている

「週刊東洋経済」(2022年5月14日号)
「週刊東洋経済」(2022年5月14日号)

   「週刊東洋経済」(2022年5月14日号)の特集は、「欧州動乱史」。ウクライナ侵攻はなぜ起きたのか、なぜ戦争は終わらないのかを、地政学と歴史から読み解いている。

   ウクライナとロシアの長く複雑な関係について、歴史総合大学受験塾 史塾代表の福村国春氏が解説している。

   ロシア、ウクライナ、ベラルーシのいわゆる東スラブ人の歴史の起源は、9世紀末に成立したキエフ・ルーシ公国にある。だが、13世紀のモンゴルの侵略によって公国は滅んだ。その後、キエフに代わり、モスクワが台頭。

   その結果、キエフ・ルーシ公国は、キエフを中心とするウクライナ人の国家ではなく、モスクワを中心としたロシア人を発祥とする国家として捉えられるようになった。

   1917年にロシア革命が起き、ロシア帝国が崩壊すると、ウクライナは「ウクライナ国民共和国」として独立を宣言した。しかし、22年にソ連が建国されると、ウクライナは連邦の辺境として位置づけられた。

   スターリン時代、政府は農民の収穫の3分の1ないし半分を強引に徴発。抵抗する者は弾圧され、処刑された。徴発による人為的な飢饉が起こり、32~33年には、300万~600万人もの餓死者が発生したという。

   39年に第2次世界大戦が起こると、ウクライナはドイツの侵攻を受けた。ドイツはウクライナを占領すると、人々を強制連行して労働に従事させた。旧ソ連領から連行された280万人のうち230万人は、ウクライナからとされている。

   そのため、第2次世界大戦の「ソ連」や「ドイツ」に区分されている膨大な死者や犠牲となった人々の中には、多くの「ウクライナ」が潜んでいる、と指摘する。

   ソ連解体後、連邦を構成していたウクライナやベラルーシは独立した。ウクライナは、キエフ・ルーシ公国を継承するものとして自らの歴史を歩み始めた。

   ロシアのプーチン大統領は「ソ連崩壊は20世紀の世界における最大の地政学的惨事だ」と語っている。その心の中では大国ロシア復活への歪んだ夢が形成され、今回、「歴史的で決定的な行動に出た」と福村氏は書いている。

   協調と戦乱の歴史だった欧州の歴史。神奈川大学教授の的場昭弘氏は「西暦末尾『9』に注目すると意外な流れが見えてくる」と解説している。

   清教徒革命が終わったのが1649年。名誉革命が終わったのが1689年。フランス革命が終わったのが1799年。第1次世界大戦の講和条約、ベルサイユ条約が結ばれたのが1919年。

   巨額な賠償金支払いに苦しんだドイツから生まれたナチス・ドイツが東欧に侵攻したのが、1939年。第2次世界大戦後、東欧諸国がソ連圏に組み入れられ、経済相互援助会議(コメコン)を設立したのが1949年。そして、冷戦の崩壊が1989年。東欧の西欧化が進行していた。

   しかし、的場さんは「ここに来て、事態は新しい方向に進みつつある」と述べている。ロシアが西欧化を拒否し、それを中国やインドが後押しをするという構図である。巨大な人口を抱えるアフリカ諸国も入ることで、西欧との対立は冷戦以上に拮抗したものとなる、と考えている。

   ロシアのウクライナ侵攻に対し、国連が反ロシアで一枚岩にならないのは、そうした「新しい冷戦」の時代への布石があるのでは、と考えると腑に落ちる。

   今回の「戦争」を機会に、歴史を学び直してみてはどうだろうか。

ゴルフ場で結びつく財界人

「週刊ダイヤモンド」(2022年5月14日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年5月14日号)

   「週刊ダイヤモンド」(2022年5月14日号)は、「ゴルフ大全」と題し、ゴルフを通じた財界人の人脈やゴルフ場ビジネスについて特集している。

   初夏を迎え、ゴルフを楽しむ絶好のシーズンがやって来た。ゴルフ場支配人とアマチュアゴルファー939人が選んだ「プレーして最もよかったゴルフ場」ランキングを掲載している。

   1位になったのは太平洋クラブ御殿場コース(静岡県)と、川奈ホテルゴルフコース(同)だ。太平洋御殿場は、男子ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」が毎年開催され、松山英樹選手監修のもと、2018年に全面改修された国際基準のトーナメントコースである。

   もう1つの川奈は、西武グループが運営するパブリックコースで、富士コースは女子プロツアー「フジサンケイレディスクラシック」の舞台で、「東洋一難しい」とされるトーナメントコースだ。「景色が素晴らしい」「風光明媚で美しい」と評判は高い。

   3位は廣野ゴルフ倶楽部(兵庫県)、4位はザ・サイプレイスゴルフクラブ(同)、5位はABCゴルフ倶楽部(同)、6位には袖ケ浦カンツリークラブ 新袖コース(千葉県)、ゴールデンバレーゴルフ?楽部(兵庫県)、フェニックスカントリークラブ(宮崎県)が並んだ。

   一方、「二度と行きたくない」ゴルフ場には、業界最大手のアコーディア・ゴルフが運営するゴルフ場がワースト14のうち5コースを占めるという結果になった。アコーディアは全国に最多の169コースを保有。アコーディアに次いで多い146コースを持つパシフィックゴルフマネージメント(PGM)が運営するゴルフ場は1コースにとどまった。

   この違いについて、低価格路線のアコーディアには初心者が多く、マナーの順守が徹底されないため、ベテランゴルファーの不満につながっているのでは、と見られている。

   余談だが、評者である私はアコーディア傘下のゴルフ場のメンバーだが、混雑しているという指摘はたしかにうなずける。だが、その分、料金が安いと割り切っている。「二度と行きたくない」とまで言われるのは少々心外に思った。

   さて、限られたエリートしか入ることのできない名門ゴルフ倶楽部は、エスタブリッシュメントが集う「最強のサロン」であり、ゴルフ人脈が培われているという。今回の特集では、ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長とソフトバンクグループの孫正義代表取締役会長兼社長執行役員の華麗な「ゴルフ人脈」を公開している。

   孫氏は米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏、スタートトゥデイ代表取締役社長の前澤友作氏、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏らと、ゴルフを通じた交友を深めたという。霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)などのメンバーで、自宅にはゴルフシミュレーターを設置。シングルハンディ並みの腕前だとされる。

   また、柳井氏が通い詰めるホームコースは一時会員権価格が4億円を超えた名門の小金井カントリー倶楽部(東京都)。そこで、鈴木敏文・セブン&アイホールディングス名誉顧問と距離を縮めたという。それともう1人、ゴルフを通じて結びついたのは、ニトリホールディングスの似鳥昭雄代表取締役会長だ。2人はスリーハンドレッドクラブ(神奈川県)で定期的にランドを重ねているそうだ。

   それがきっかけで、ユニクロとニトリがタッグを組んだ兵庫県の宝塚歌劇場前店が誕生したというから、ゴルフ場でビジネスが動いているのだ。

   このほかに、鉄鋼業界と総合商社の重鎮が集う鷹之台カンツリー倶楽部(千葉県)の「鉄鋼マスターズゴルフ大会」の裏側など、ゴルフに関心のあるビジネスパーソンに興味深い記事が満載だ。なぜ、ゴルフがある種の人たちに欠かせないものであるかがわかるだろう。

ウクライナ侵攻が戦争の姿を変える

「週刊エコノミスト」(2022年5月17日号)
「週刊エコノミスト」(2022年5月17日号)

   「週刊エコノミスト」(2022年5月17日号)の特集は、「防衛産業&安全保障」。ジャベリン、ドローン、そして核兵器。ロシアによるウクライナ侵攻が戦争そのものの姿を変え、安全保障の根幹を揺るがしている事態をリポートしている。

   「撃ちっ放し」が特徴の携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」は、キエフからロシア軍を撤退に追い込んだことで知られる。だが、ジャベリンの米軍への配備開始は1990年代後半で、目新しい兵器ではないという。むしろ、使い道のない「古い兵器」と称されたというから驚く。

   今、脚光を浴びたワケは、正規軍同士の地上戦へと戦争の形が回帰したことを意味する、と同誌は書いている。ゲリラ相手には使えない兵器だったのだ。ジャベリンを共同で生産する米防衛企業ロッキード・マーチンの株価はウクライナ侵攻後、15%高と伸びている。

   ITが防衛産業の姿を大きく変えているとも。

   ウクライナ側による民生用ドローンの活用によって、ジャベリンによる攻撃の効果が上がったという。ウクライナ側はIT企業の力を借り、ドローンの映像情報を集約するセンターを作ったとされる。また、米起業家イーロン・マスク氏がCEOを務める米宇宙企業スペースXの衛星インターネットサービス「スターリンク」も使われた模様だという。

   世界の軍事費は今後も当面、増え続けることは確実で、防衛産業への需要も高まる、と予測している。

   このほかに、「台湾侵攻の虚実 到底足りない中国軍の兵力 習政権に大ばくちは打てない」というジャーナリスト・谷田邦一氏の寄稿、「ロシアの露骨な『脅し』効く 排除できない小型核の使用」という毎日新聞専門編集委員・会川晴之氏の寄稿も、興味深かった。

   今回の「戦争」は、兵器と軍の実力を露わにしたという点で、まれに見る「実験場」となったのは間違いない。防衛産業と安全保障はウクライナ後、一変するかもしれない。

(渡辺淳悦)