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子どもを持たない人、男女とも過去30年で3倍増...東大研究で判明 所得、学歴、雇用形態の影響はどうか?(鷲尾香一)

   日本の少子化は危機的な状況にある。子どもを持たない人の数は男女とも過去30年の間に3倍近くに増えていたという研究結果を東京大学の研究チームが2022年4月28日に発表した。

   研究チームは国立社会保障・人口問題研究所が実施する出生動向基本調査を用いて、1943~1948年の間と、1971~1975年の間に生まれた40代の時点での夫婦が持つ子どもの数がどのように変化しているか。また、子どもの数は、収入や学歴によってどのように変わるのかを分析した。

  • 東京大学の研究チームがまとめた少子化実態の研究に注目(写真はイメージ)
    東京大学の研究チームがまとめた少子化実態の研究に注目(写真はイメージ)
  • 東京大学の研究チームがまとめた少子化実態の研究に注目(写真はイメージ)

少子化の著しい進行が鮮明に

   男女別では、まず男性では、1943~1947年生まれと1971~1975年生まれを比較した場合、子どもを持たない人の割合は14.3%から39.9%に増加していた。

   一方の女性では、1943~1947年生まれと1971~1975年生まれを比較した場合、子どもを持たない人の割合は11.6%から27.6%に増加していた。

   そのうえ、子どもを持っている人の場合でも、子どもが1人の割合は増え、一方で子どもが2人以上の割合は減少していた。

   合計特殊出生率では、男性は1943~1948年生まれで1.92人だったのに対して、1971~1975年生まれでは1.17人に減少していた。一方の女性では1943~1948年生まれで1.96人から1971~1975年生まれでは1.42人に減少していた=表1

   合計特殊出生率とは、15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものだ。1人の女性が、仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。

   この結果、男女ともに、合計出生率が大きく減少しており、少子化の著しい進行が鮮明に浮かび上がっている。

学歴による子どもの有無の割合を分析すると...

   ただ、少子化にはさまざまな要因が指摘されている。そこで、研究グループは所得階層別の子どもの有無と合計特殊出生率、学歴との関係を分析した。

   その結果、1943~1947年生まれと1971~1975年生まれの間で、子どもを持たない人の割合を比べた場合、最も所得が低い年収300万円以下の層を見ると、子どもを持たない人の割合は25.7%から62.8%に増えており、合計出生率も1.74人から0.73人に減っていた。

   一方で、最も所得が高い年収600万円以上の層ではどうか。結果は、子どもを持たない人の割合は6.9%から20.0%に増えており、合計出生率は2.10人から1.60人に減っていた=表2

   この結果を見る限り、収入が低いほど、子どものいない割合が増加しており、少子化対策では所得の増加が絶対条件であることがわかる。

   ただし、最も所得が高い層(年収600万円以上)でも、子どものいない割合が増加している。くわえて、合計特殊出生率も低下していることから、高所得だけが子どもを持つ条件ではないことも明らかだ。

   そこで、学歴による子どもを持っている割合を分析したところ、男性では大卒以上とそれ以下で比較した場合、大卒以上で子どもを持っている割合が大きいことがわかった。

   ただ、女性の場合、1956~1970年の間に生まれた人では、大卒以上の方が子どもを持つ割合が少なかった。しかし、1971~1975年の間に生まれた人では、大卒以上とそれ以下で子どもを持つ割合に差はなかった。

   これらの分析の結果、男性では子どもの有無、3人以上子どもがいるかどうかは、収入と関係しており、高収入の人ほど子どもを持っている割合が多く、また3人以上の子どもがいる割合も多かった。

   また、男性では、非正規雇用・パートタイムの人では子どもを持っている人の割合、3人以上の子どもがいる割合いずれも、正規雇用の人と比べて少なかった。

   一方で、女性では、正規雇用の人ではそれ以外の人と比べて子どもを持っている割合、3人以上の子どもがいる割合がとも少なかった。

   つまり、男性の場合には、所得、学歴、正規・非正規という雇用形態が子どもの有無に大きく関係している半面、女性では所得、学歴による影響は小さく、一方で正規雇用者では子どもがいる割合が少ないという雇用形態が大きく関係していた。

   こうしたことは、所得だけではなく、女性の働き方、働く女性の子育てが少子化に大きく影響していると言えそうだ。

   研究結果は4月27日に専門誌「Plos One」に掲載された。