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最新データで見る「労働力人口」「就業者数」「雇用者数」...とりわけ男性の雇用状況「悪化」鮮明(鷲尾香一)

   総務省がこのほど発表した「令和3年 労働力調査年報」によると、新型コロナウイルス感染拡大下にあった2021年、雇用は回復傾向を辿ったが、その歩みは鈍く、新型コロナによる雇用悪化が、特に男性には色濃く残っている。

  • 「令和3年 労働力調査年報」に注目
    「令和3年 労働力調査年報」に注目
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就業者数では、男性は2年連続減、女性は前年増で回復傾向

   2021年の労働人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は、年平均6860万人で前年比8万人減少し、2年連続の減少となった。

   新型コロナ感染拡大前の2019年は6886万人だったことから、2020年、2021年の2年間で合計26万人減少した。

   労働力人口を男女別にみると、男性は3803万人と前年比20万人減少し、2年連続の減少となった。2019年は3828万人だったことから、2年間で合計25万人減少した。

   一方、女性は3057万人と同13万人増加した。2020年は同14万人減少の3044万人だったことから、女性は2019年の3058万人とほぼ同数まで回復したかたちだ。

   労働人口のうち就業者数は2021年平均で6667万人と前年比9万人減少し、2年連続の減少となった。

   就業者数は2019年には6724万人だったことから、2年間で就業者は57万人減少したことになる。2020年が前年比48万人の減少だったことを考えれば、2021年の減少が9万人にとどまったことは、新型コロナの影響が薄れているとの見方もできるものの、影響は色濃く残っている。

   男女別にみると、男性は3687万人と前年比22万人減少し、2年連続の減少となった。2019年は3733万人だったことから、2年間で合計46万人減少した。

   一方、女性は2980万人と同12万人増加した。2020年には前年比で24万人減少していたが、その半数を回復したことになる=表1

   男女別では、労働力人口、就業者数とも男性は2年連続の減少となっているのに対して、女性は2021年には増加しており、回復基調にある。こうした点を考えると、新型コロナの影響による雇用の悪化は、より大きく男性に出ているようだ。

   これは、就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合)が2021年平均で60.4%と、前年比0.1ポイント上昇し、2年ぶりの上昇となったものの、男女別にみると男性は69.1%と同0.2ポイント低下し、女性は52.2%と同0.4ポイントの上昇したことにも表れている。

雇用形態別では、正規雇用7年連続増加、非正規雇用2年連続減少

   就業者のうち雇用者数は2021年平均で5973万人と前年比横ばいだった。雇用者数は2020年に前年比31万人減少したが、2021年の雇用者数が横ばいだったことで、雇用者数の回復は見られていないということになる。

   ただ、雇用者を男女別にみると男性は3256万人と同14万人減少し、2年連続の減少となった。2019年は3264万人だったことから、2年間で合計28万人減少した。

   一方、女性は2717万人と同14万人の増加となった。2020年には前年比で17万人減少していたが、その大半を回復したことになる=表2

   雇用者数でも、労働力人口、就業者数と同様に男性の回復が遅れており、雇用悪化は男性に重くのしかかっている。

   さて、雇用形態別では、正規雇用者数は2021年平均で3565万人と前年比26万人増加し、7年連続の増加となった。一方で、非正規雇用者数は2064万人と同26万人減少し、2年連続の減少となり、非正規雇用者の厳しい状況が続いている。

   正規雇用者の男女別では、男性は2343万人と前年比2万人の減少、女性は1222万人と 同28万人の増加となり、女性の回復が鮮明となっている。

   一方、非正規雇用者の男女別では、男性は652万人と同13万人の減少、女性は1413万人と同12万人の減少となった。労働力人口、就業者数、雇用者数、正規雇用者数と女性の雇用回復が鮮明となっていたが、非正規雇用者については、女性も厳しい雇用状況が続いている=表3

   こうした雇用状況の結果、完全失業者数は2021年平均で193万人と前年比2万人の増加し、2年連続の増加となった。また、完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は2021年平均で2.8%と、前年と同率となった=表4

   男女別では、男性は116万人と前年比1万人の増加、女性は77万人と同1万人の増加となった。

   完全失業率の男女別では、男性は3.1%と同0.1ポイントの上昇、女性は2.5%と前年と同率となった=表5

   完全失業者数、完全失業率とも、男女ともに高止まりしており、雇用改善の遅れが目立つが、完全失業率では女性は前年比横ばいだったのに対して、男性は上昇するなど、やはり男性の雇用状況の悪化が鮮明になっている。

   原油や資源価格の上昇、円高の影響などにより、物価の上昇が一段と続き、国民生活に大きな負担となっている。雇用の回復、賃金の上昇は喫緊の課題だ。