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いま注目の「木造マンション」とは? カーボン・ニュートラル実現に向け、関心高まる...専門家がメリット&デメリット解説!【1】(中山登志朗)

   前回のコラム「最近、コロナ禍でひそかに人気急上昇中! 原状回復の必要ナシ「DIY型賃貸住宅」ってなんだ?」では、賃貸市場で注目される「DIY型賃貸」という仕組みを紹介しましたので、今回はマンションでの新たな取り組みを紹介しようと思います。

   これまで、マンションというと、コンクリートで固められた大きくて強靭な住宅というイメージがありました。

   分類すると、マンションは「SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造」、もしくは、「RC(鉄筋コンクリート)造」が圧倒的多数を占めています。そして、残りもほとんどが「S(鉄骨)造」であり、これには「鋼材の厚さが6mm以上の重量鉄骨造」と、「6mm未満の軽量鉄骨造」があります。

   つまり、鉄とコンクリートで造られた共同住宅はマンション。木造の共同住宅はアパート、もしくは、連棟型のタウンハウスやテラスハウスというのが一般的なイメージではないでしょうか。

   ところが、です。そこに、新たに「木造マンション」という概念が加わることになったのです。

   木造のオフィスビルというのはこれまでもいくつかありました。しかし、2021年末から、筆者が所属するLIFULL HOME'Sほか不動産ポータルサイト各社が、「木造マンション」という区分で広告掲載を可能にしたことにより、新たに木造のマンションが社会に広く知られることになりました。

  • 注目の「木造マンション」とは?(写真はイメージ)
    注目の「木造マンション」とは?(写真はイメージ)
  • 注目の「木造マンション」とは?(写真はイメージ)

先進的な取り組みで話題!三井ホーム「モクシオン稲城」

   第一号物件は2021年11月に竣工した三井ホームの「モクシオン稲城」で、こちらは5階建全51戸の賃貸物件として誕生しました(1階のみRC造)。

   国交省の「サステナブル建築物等先導事業」にも採択されており、数々の先進的な取り組みが採用されている物件として注目されています。

   当然のことながら、梁や床、壁など建物の主要部分にはほとんど木材が使われています。開発した三井ホームによると、建設時の二酸化炭素(CO2)排出量はRC造の約半分で、断熱性が高く調湿作用があり、ALC100mm厚の約4分の1の床衝撃音。

   それだけでなく、認定率わずか5.6%の「耐震等級3」という極めて高い耐震性能や、耐用年数75~90年という耐久性を誇る「劣化対策等級3」の取得など、多くのメリットがあることをウェブサイトで公表しています。

   これ以上説明すると、物件の宣伝になってしまうので控えますが、いずれにしても、魅力的な物件であることは間違いなさそうです。なお、三井ホームはこれまで、アメリカやカナダなど北米地域で木造マンションを建設してきた実績があります。ですから、これからも、木造マンションを次々と手掛けていく可能性があります。

なぜ今、木造マンションなのか?

   木造マンションの普及・推進は、現代社会の重要な関心事の一つである、カーボン・ニュートラルを実現するための取り組みに直結しています。

   2050年までに地球温暖化の元凶とされるCO2の排出量と吸収量を等しくする、カーボン・ニュートラル。この取り組みを実現するためには、鉄およびコンクリートに代えて、CO2の放出量が圧倒的に少なく、かつ、吸収量も高くて固定化が可能な木材を最大限に有効活用することが喫緊の課題とされています。

   素材製造時の1立方メートルあたりのCO2排出量は、鋼材が火力発電によって銑鉄するため5320キログラム発生するのに対して、木材はわずか124キログラムと鋼材の約43分の1に留まります。また、CO2を吸収し中に留めておく固定化においても、木材は優れた能力を持っています。ですから、木材の地球温暖化対策における重要性は増すばかりと言えそうです。

   では、木造マンションには、ほかにどのような「メリット」や「デメリット」があるのでしょうか――。<いま注目の「木造マンション」とは? カーボン・ニュートラル実現に向け、関心高まる...専門家がメリット&デメリット解説!【2】(中山登志朗)>で引き続き解説していきます。

(中山登志朗)