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もし上司が異常に理屈っぽかったら? 会社で「生き抜く」ための7つのポイント

   機嫌次第の上司、言うことをきかない部下、無茶ぶりするクライアント――。組織内での立ち居振る舞いに悩むビジネスパーソンのための人間方法論をまとめたのが、本書「官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術」(朝日新書)である。元霞ヶ関官僚の著者が書いたサバイバル術は、さまざまな組織で応用が効きそうだ。

「官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術」久保田崇著(朝日新書)

   著者の久保田崇さんは、現在静岡県掛川市長。京都大学卒業後、2001年内閣府入り。東日本大震災後のボランティア活動を契機として、11年から岩手県陸前高田市副市長を務める。16年立命館大学公務研究科教授、19年から掛川市副市長、21年から現職。著書に「官僚に学ぶ仕事術」「官僚に学ぶ勉強術」などがある。

   久保田さんには、こんな経験があるという。「徹夜で大臣答弁書を書き上げた後の翌日の国会審議中に倒れた」「国会議員の一言に振り回されて、仕事のやり直しや収拾に忙殺された」「機嫌が悪い時に話しかけて、上司に話も聞いてもらえない」。重いプレッシャーや長時間労働に悩んだ日々があった。

最も注意を払うべきは直接の上司

   そこで、さまざまなスキルを身に着けた。組織でサバイバルして働く上での7つのポイントは以下の通りだ。

1 人間関係で最も注意を払うべきは直接の上司
2 「内なる人脈」をつくれ
3 敵をつくってはいけない
4 正攻法がダメなときに使う「空中戦スキル」を身につけよ
5 部下の仕事を奪ってはならない
6 大きな壁に当たったときこそチャンスだと知れ
7 ブラックな職場から自分の身を守れ

   いくつか解説しよう。直接の上司との関係が最重要であることは言うまでもない。上司は人事評価や人事異動などの権限を持っているからだ。うまくやれなければ、不利益を被ることもある。

   上司とうまくやるには、よく観察してタイプを見極めることだ。「瞬間湯沸かし器タイプ」の上司には、「話しかけてはならないタイミング」があり、それには法則があるそうだ。また、異常に理屈っぽい上司には、議論しない、第三者を使うなどの対処法があるという。

   評者がいた会社は、実に変わった上司が多かった。まさに「人間博物館」の趣があった。そこで、ある先輩にこう教えられた。

「イヤな上司だと思っても、君か上司か、どちらかはいずれ異動する。せいぜい3年我慢することだな」

   実際、どの職場でも、その通りだった。ある程度の規模の企業(組織)では、「やり過ごす」というのが最も現実的な対処法ではないだろうか。

   「内なる人脈」とは、こういう意味だ。どの組織にも、全体を統括する部署がある。そうした部署の人に、普段から、世間話ができるくらいに人脈をつくっておき、トラブルが生じたときにすぐに報告・相談ができるようにしておくこと。

   また、役員や部長などの幹部にも、可能な範囲で名前を覚えてもらい、個人的な関係を構築しておくべきだという。

   そうすると、正攻法がダメなときに、その上司の上司を使うという裏技、「空中戦スキル」を使うこともできる。

   敵をつくらないことも大切だ。それには4つのポイントがあるという。

1 批判をしないこと
2 自分が批判されてもなお、批判しないこと、耐えること
3 相手の話をよく聞くこと
4 敵にも挨拶すること

   それでも敵対視してくる人へは、過剰反応しない。その人を変えようと思わない。距離を取ればよい。最小限の関わりでやり過ごす。こういう対処法があるそうだ。

「年上の」部下を持つようになったら...最初が肝心!

   逆に、自分が部下を持つ立場になった時は、どうしたらいいのか。ステージがいろいろある。まず、部下を1人持ったときは、「自分がやった方が早い」とばかりに、部下の仕事を奪わないこと。部下に任せた仕事の成果物の期限さえ守れていれば、時間がかかったとしても見守ればよい。

   部下を「複数」持ったときは、部下に話しかけるときは、警戒心を解きほぐすことを心がける。部下は、想像以上に、上司に気を使っているからだ。

   「年上の」部下を持ったときは、最初が肝心だという。最初に悪い印象を与えると、指示に協力しないなどのサボタージュをされたり、陰口をたたかれたりするなど厄介なことになるからだ。

   頭ごなしに命令・指示せず、まずは教えを乞うスタンスで接する。その一方で、なめられないように、自分の強みをさりげなく示し、一目置かれるようにすることも大切だという。

   課長・マネジャーになったとき、経営層・マネジメントポジションに就いたときについても詳しく書いている。

   最後に、人望は1日で形成されるものではなく、長時間の言動の積み重ねである、と書いている。だから、「コツコツとヒットを打とう。ホームランはいきなり打てない」と諭している。

   そうすれば、次のステージ。つまり、別の組織に移って、活躍することも可能だ。同じ組織にしがみつくだけがサバイバルではない、ということも著者の経歴を見れば、うなずける。

(渡辺淳悦)

「官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術」
久保田崇著
朝日新書
825円(税込)