J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

東京都への人口流入回復&人流の「都心回帰」本格化! これからの住宅需要、賃料どうなるか?...専門家がいち早く解説【1】(中山登志朗)

   言うまでもなく、日本国内でコロナ禍による一番大きな経済的損失を被ったのは東京都です。

   コロナの感染者数は、累計でも、1日の最大感染者数でも、全国で最も多い東京都。飲食店の数も、「食い倒れの街」大阪の2倍以上ですから、休業補償の費用も莫大な金額に上ります。

   しかも、開催が1年延期された東京オリパラは無観客となって入場料収入はゼロ。企業収益が落ちたことによって、税収も2021年度には5兆円を割り込む寸前まで低下しました。

   また、テレワークの実施率が日本一高いことも手伝って、約1400万人の総人口からすればごく僅かと言えるものの、一部の都民が東京を離れ、首都圏の準近郊・郊外エリアへと転居した事実もありました。

◆大きな変革を遂げた東京都

   一方で、コロナ禍によって最も大きな変革を遂げたのもまた東京都だと言えるでしょう。

   テレワークの実施率を高水準に維持し、毎日出社しなくても効率よく業務を遂行できる次世代型の働き方にいち早く対応したのは都内に本社を置く各企業です。

   そして、DX:デジタル・トランスフォーメーションを推進して、コロナ後を見据えた事業のあり方を変革することを厭わない企業も数多くありました。

   このような「コロナ仕様」が奏功したのか、東京都の2022年度当初予算案では、都税収入は3年ぶりのプラス、約5兆6300億円程度を見込めるまでに回復しつつあります。

  • 今後の住宅需要、賃料はどうなるのか?(写真はイメージ)
    今後の住宅需要、賃料はどうなるのか?(写真はイメージ)
  • 今後の住宅需要、賃料はどうなるのか?(写真はイメージ)

2022年に入り、東京都&東京23区の移動人口が転入超過傾向

   このような状況で、コロナ禍で大きく減少(転出超過)していた東京都への流入人口が、2022年に入ってようやく回復し始めています。

   東京都は、コロナ前の2019年の移動人口が約8.3万人もの転入超過でした。しかし、翌2020年は3.1万人の転入超過に留まり(前年比-62.5%)、2021年はさらに大きく減少して5,433人(同-82.5%)と1万人を下回りました。

   東京23区に至っては、2021年に14,828人もの「転出超過」を記録しており、これは全国に21ある政令指定都市および特別区では最低の数字です(1位は、さいたま市の+10,527人)。

   この間の首都圏(1都3県)の移動人口は、2019年に約15万人、2020年約10万人、2021年も約8.2万人と漸減しているものの、安定した転入超過を記録しています。したがって、単純なイメージでは、東京都内から周辺3県に転居するという動きが顕在化したことがわかります。

   ところが、です。2022年に入ると、5月までの累計は東京都で約3.9万人、東京23区でも約2.7万人の転入超過を記録しています。コロナ禍の影響で都内に住むことを避けていた人々が、明らかに都内に回帰し始めました。

コロナ禍「第7波」で、人流の「都心回帰」はどうなるか?

   もっとも、ようやくコロナの影響を脱し、また、折り合いをつけて経済活動を「コロナ対応」で本格化させる状況となった東京都ですが、7月に入ってコロナ禍は「第7波」に突入したと言われるほど、新規感染者が急増しています。

   現状では病床の逼迫率が低いことから、社会経済活動は緊急事態宣言の発出などによって、止める状況ではないようです。それだけに、人流の「都心回帰」は今後も継続するのかが注目されるところです。

   社会経済活動がコロナ禍でも継続することになれば、毎日、都心方面に通勤・通学する人流も回復し続ける可能性が高く、それにともなって、東京都および東京23区の人口も回復していくことが考えられます。

   さらに、インバウンドの動きはまだまだ制限されていますから、コロナの状況次第とは言うものの、今後の再流入にも期待が高まります。

   こうした状況下で、東京都内の賃貸物件の平均賃料はどうなっているのでしょうか。引き続き、<東京都への人口流入回復&人流の「都心回帰」本格化! これからの住宅需要、賃料どうなるか?...専門家がいち早く解説【2】(中山登志朗)>で解説していきましょう。

(中山登志朗)