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職場の「叱責」問題、部下たちは成長のために叱られたい?...だが、8割が嫌がる「叱られ方」シチュエーションとは

   「獅子は我が子を千尋(せんじん)の谷に突き落とす」。ニッポン企業の社員教育の伝統は今や昔、パワハラと言われることを恐れて、部下をしっかり叱れない上司が増えているらしい。

   そんななか、マーケティングリサーチのアスマーク(東京都渋谷区)が2022年7月14日、「部下に聞いた『叱責』に関する実態調査」を発表した。

   上司のあなた、あるいは部下のあなた、それぞれ上手な「叱り方」「叱られ方」の参考にしてはいかが。

  • 上司は叱り方のスキルを身に着けよう(写真はイメージ)
    上司は叱り方のスキルを身に着けよう(写真はイメージ)
  • 上司は叱り方のスキルを身に着けよう(写真はイメージ)

「叱られた経験がある」20代女性は3人に1人

   調査は、20代の一般社員男女200人、30代の中間管理職男女150人を対象に行われたものだ。

   まず、20代一般社員に「あなたは上司に叱られた経験はあるか」と聞くと、「よくある」「時々ある」を合わせて、20代男性の45%が「叱られた経験がある」と答えた。20代女性は男性より少なく、「叱られた経験がある」と答えた人は35%しかいなかった。3人に1人しかいないことになる=図表1参照

(図表1)あなたは上司に叱られた経験がありますか(アスマークの作成)
(図表1)あなたは上司に叱られた経験がありますか(アスマークの作成)

   しかし、30代の中間管理職に聞くと、「叱られた経験がある」と答えた人は男性で62%、女性で58%と、ぐっと増えてくる=図表1参照。20代は叱られた経験があまりないほうが多数派ですが、30代では経験ありが多数派だ。

   これは、パワハラが最近厳しくなったという時代背景の違いによるものなのか、あるいは叱られて成長した人が30代で管理職になっているためなのか。いずれにしろ、中間管理職になったことで責任が重くなり、より上の管理職に叱られる機会が増えるようになったことも考えられそうだ。

   次に、「上司に叱られたら落ち込むほうか」と聞くと、「落ち込む」と答えた人(「落ち込み、引きずるほうだ」「落ち込むが、あまり引きずらないほうだ」の合計)が20代男性で65%、20代女性で77%もいた。女性のほうが特に落ち込む傾向が強いことがうかがえる=図表2参照

(図表2)上司に叱られると落ち込むほうですか(アスマークの作成)
(図表2)上司に叱られると落ち込むほうですか(アスマークの作成)

   これは30代も同様だ。男性で75%、女性で82%が「落ち込む」と答えている=図表2参照。上司に叱られると男女を問わず、6割以上が落ち込むという結果になった。

「自分の成長のために叱られたい」人は6割いる!

   ところで、上司も怒りに任せて叱るわけではない。そこには「成長してほしい」という親心があるはずだが、その気持ちは伝わっているのだろうか。

   「自分の成長のためには、叱られることも必要だと思うか」と聞くと、「そう思う」「ややそう思う」を合わせて、20代男性で57%が、20代女性で60%が「そう思う」と答えた。30代ではその割合はもっと高くなり、男性で64%、女性で68%が「そう思う」と答えている=図表3参照

(図表3)自分の成長のためには、叱られることも必要だと思いますか(アスマークの作成)
(図表3)自分の成長のためには、叱られることも必要だと思いますか(アスマークの作成)

   「叱られる」ことに関して肯定的な人が女性に多く、また、20代の一般社員よりも30代の中間管理職に多いという結果となった。

   最近は、ハラスメントを気にして叱れない上司が増えているといわれるが、叱ってくれる人の存在が自身の成長につながると感じる人がこれほど多いとすれば、上司側の適切な叱り方のスキルを身につけることが重要になりそうだ。

   しかし、たまには理不尽な叱り方もあるかもしれない。そこで、「上司に叱られたとき、理由については納得できることが多いか」と聞くと、「納得できることが多い」「どちらかというと納得できることが多い」を合わせて20代男性の57%、20代女性の60%が「納得できることが多い」と答えている=図表4参照

(図表4)上司に叱られた時、理由について納得できることが多いですか(アスマークの作成)
(図表4)上司に叱られた時、理由について納得できることが多いですか(アスマークの作成)

   これが30代になると、男性の64%、女性の68%が「納得できることが多い」と答えている=図表4参照。「納得できることが多い」が多数派だが、「納得できないことが多い」という人も3割以上いる微妙な結果となった。

男性は「過去のことを」、女性は「人前で」叱られるのがイヤ

過去のことを何度も言われたくない(写真はイメージ)
過去のことを何度も言われたくない(写真はイメージ)

   これをどう理解したらよいのか――。

   そこで、「上司に叱られるシチュエーションで、嫌だと思うシチュエーションを上位3つまで選ぶとどれか」(複数回答)と聞いた。すると、特に20代男女では「理不尽な理由で叱られる」(80.9%)、「なぜ叱られたか、理由が明確ではない」(67.1%)、「周囲に人がいる状態で叱られる」(36.6%)、「他人と比較して叱られる」(30.9%)などが上位に並んだ=図表5参照

(図表5)上司に叱られるシチュエーションで、嫌だと思うシチュエーションを選ぶと(20代男女の違い)(アスマークの作成)
(図表5)上司に叱られるシチュエーションで、嫌だと思うシチュエーションを選ぶと(20代男女の違い)(アスマークの作成)

   ここで興味深いのは、叱られ方で嫌だと思うシチュエーションに、明確に男女差があることだ。図の中の青(男性)と赤(女性)の折れ線グラフが、それぞれ男性と女性の割合を示している。これを見ると、男性は「過去の事案をぶり返して何度も叱られる」ことを特に嫌がる傾向があり、女性は「周囲に人がいる状態で叱られる」ことに耐えられない傾向があるようだ=図表5参照

   管理職の上司は、部下に叱る内容がしっかり伝わる関係性を築くためにも、内容だけでなく嫌がられるシチュエーションではないかどうかも考える必要がありそうだ。

人前で叱られるのは嫌だ(写真はイメージ)
人前で叱られるのは嫌だ(写真はイメージ)

   調査を行ったアスマークの担当者もこうコメントしている。

「叱られることも必要と考える人や納得できている人は多いようですが、納得できない人も一定数存在していました。これは上司の人間性や叱るスキルの低さの問題なのでしょうか? 上司が思わず理不尽に怒ってしまうような、忙しい、ギスギスした職場風土が問題なのかもしれません」

   調査は2022年6月21日~6月28日、20代の一般社員男女200人、30代の中間管理職男女150人を対象にインターネットで聞いた。

(福田和郎)