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自動車メーカー×大手損保...知られざる?お得な「保険商品」続々! 「走行データ」活用して割引サービスも

   自動車メーカーが大手損害保険会社と組み、自社の乗用車を利用するユーザーに独自の保険商品を提供する動きが相次いでいる。

   ホンダは2022年8月1日、テレマックス(ITを使った自動車向け通信サービス)で取得した走行データに基づき、大手損保が翌年の自動車保険料を割り引く、「ホンダコネクト保険」を10月から全国の販売店「ホンダカーズ」で発売すると発表した。

   ダイハツ工業は8月5日、損保が新型「ムーヴキャンバス」を衝突実験でテストした結果、「壊れにくく、修理がしやすい」と判断したことから、車両保険料を5%割り引くサービスを始めると発表した。

  • 自動車メーカーと大手損害保険会社による保険商品が話題に(写真はイメージ)
    自動車メーカーと大手損害保険会社による保険商品が話題に(写真はイメージ)
  • 自動車メーカーと大手損害保険会社による保険商品が話題に(写真はイメージ)

ホンダ&保険大手3社...「安全運転」認められると、翌年の保険料割引

   ホンダの場合は、「ホンダコネクト」と呼ぶ自社の車載通信機を通じ、ドライバーの走行距離、運転速度、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドルなどのデータを取得し、大手損保に提供。これに対して、損保はその結果を分析・評価した「運転スコア」を毎月ドライバーに配信し、安全運転に向けたアドバイスを行う。

   この運転スコアの年間の成績に応じて、契約先の損保が翌年の自動車保険の保険料を割り引くという。

   ホンダと提携し、保険料を割り引くのは損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上保険の大手3社で、各損保の保険商品の特約となる。特約の保険料は年間600円程度かかるが、安全運転と認められれば、年間の自動車保険料が6%程度割引となる。

   対象になるホンダ車は2020年2月発売のフィット以降のホンダコネクト搭載車で、ホンダ純正のカーナビを装着したクルマだ。

   テレマックスを利用した自動車保険は、これまでも大手損保が展開しているが、カーナビのアプリを利用したり、通信機能付きのドライブレコーダーを設置したりすることで、走行データを取得してきた。

   損保としては、ドライバーの走行データに基づき保険料を増減できる「テレマックス自動車保険」はメリットが大きい。一方の自動車メーカーにとっても、インターネットに常時接続した「つながるクルマ(コネクティッドカー)」は今後のサービス拡大が期待できる。

   今回のホンダの試みは、自動車メーカーが大手損保と新サービスを共同開発し、ユーザーを囲い込む動きとして注目される。

   ただし、走り好きの一部のホンダユーザーは、自分の運転速度やアクセル開度などが常時監視され、データとして残ることに違和感をもつかもしれない。もちろん、その場合は言うまでもなく、この保険には入らないことだ。

ダイハツ&あいおい損保...「衝突実験」に基づき、保険料割引

   一方、ダイハツはあいおいニッセイ同和損害保険と組み、7月13日に発売した新型ムーヴキャンバスの車両保険料を5%割り引くと発表した。

   あいおいニッセイ同和損保は国内の損保で唯一、自動車の衝突実験施設を持っている。ここで新型ムーヴキャンバスの衝突実験を行ったところ、「万一の事故でも壊れにくく、修理しやすい自動車」として認められたという。ダイハツでは2019年12月にもタントが10%の割り引きを受けている。

   あいおいニッセイ同和損保は自社の衝突実験施設で新型車の衝突実験を行い、「壊れにくさと修理のしやすさ」が自社の基準に適合すれば、車両保険料を割り引くサービスを2000年に日本で初めて始めた。開始当時はあいおい損保だった。

   「ドーン!とおまかせ」と呼ばれるこのサービスの適用第1号は、トヨタ自動車が2000年に発売した「アルテッツァジータ」で、10%の割引だった。これまでに初代トヨタ86、2代目GR86のほか、トヨタが22年5月に発売した電気自動車「bZ4X」などに割引が適用された。bZ4Xの車両保険の割引は5%、GR86は10%だ。

   あいおいニッセイ同和損保は、トヨタ自動車系だった千代田火災海上保険の流れをくむ。このためか、対象となるメーカーはトヨタやダイハツが目立つほか、車種も限られている。どんな基準で対象となるメーカーや車種が決まるのか、自社の衝突実験の結果と割引の関係も判然としない。この点は、さらなる情報公開が求められるだろう。

   クルマの衝突実験に基づき、保険料を割り引くサービスの存在はあまり知られていない。

   今後もこの衝突実験による割引サービスが他メーカーを含め、増えるのかどうか。大手メディアがあまり報じない問題だけに、自動車ユーザーは関心を持って、今後も注目してほしい。(ジャーナリスト 岩城諒)