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逆に、「週休3日はツラい」?!...「休みが増えたら、ストレスも増えた!」 英国での実証実験で判明、「夢の職場」のデメリットとは(井津川倫子)

   2022年6月にイギリスで過去最大規模とされる「週休3日制」の試験的プログラムが始まって約3か月がたちました。

   以前も話題(「『給料満額で休みだけ増える!』 英国で『夢のような』週休3日の実験が始まった!」)にさせていただきましたが、この実験には70社、3300人以上の従業員が参加。11月まで6か月にわたり、「働く時間は減る」けれど「お給料はそのまま」という、うらやましい条件で勤務を続けています。

   地元メディアが「ラッキーな3300人」と表現したほどの「好待遇」ですが、時間が経つにつれて、なんと「週休3日はツラい」という嘆きが聞こえてきました。

   プログラムに参加している英サラリーマンの本音をさぐってみると、「夢の職場」の意外な現実が浮き彫りになってきました。

  • イギリスで実施中の「週休3日制」試験的プログラムの評判とは?(写真はイメージ)
    イギリスで実施中の「週休3日制」試験的プログラムの評判とは?(写真はイメージ)
  • イギリスで実施中の「週休3日制」試験的プログラムの評判とは?(写真はイメージ)

「毎週3連休」で、従業員の「病欠が62%減った!」

   街のフィッシュアンドチップス店から大手金融機関まで、多くの企業が参加している「英国週休3日制」の試験プログラム。とくに注目を集めているのが、「100-80-100」という基本モデルです。

   プログラムを主催している非営利団体「4デーウィークグローバル」が提唱しているもので、「100%の生産性を維持する代わりに、労働時間を従来の80%に減らし、100%の賃金を支払う」という内容。つまり、「労働時間を短縮する」だけで「賃金と生産性は従来通りを維持する」ことが前提となっているのです。

   プログラム開始当初から、「dream come true」(夢のような現実)と羨望を集めていましたが、それを裏付けるように、実際に参加した従業員から喜びの声が早々と発信されています。

Having an extra day off on Friday is a dream come true.
(金曜日に追加の休日、夢が現実になったようだ!)

How motivating it is knowing you have a three-day weekend!
(毎週3連休だなんて、モチベーションが上がる!)

   じつは、「週休3日制」は企業側にもメリットがあるようです。ある調査によると、プログラムに参加した企業の51%が「Cost savings」(経費削減)の効果があったと回答しています。確かにオフィスを1日閉鎖すると、光熱費やコピー代などの諸経費が削減できるのでしょう。

   面白いことに、「sick days」(病欠)が62%減った、という付帯効果も報告されていました。「週休3日制」で平日に休みが増えると、わざわざ「病欠」にしなくても病院に行きやすくなったり、体調が悪くてもゆっくり休めたりする、といったメリットを享受できそうです。

   もしかしたら、おおらかな英国人のことですから、これまでは「病欠」という理由で3連休にしていた「ズル休み組」もいたかもしれません。

   いずれにしても、「週休3日プログラム」を導入したオフィスで笑顔が広がっていることは間違いない様子。「夢の職場」の実現に向けて、一歩進んでいるようです。

「取引先からの電話に出られない!」自分だけ休んでいる罪悪感

   ところが、お給料はそのままで勤務時間だけ短くなる「夢の週休3日制」ですが、時間が経つにつれて、マイナス面も浮き彫りになってきたようです。次のようなタイトルの記事が増えてきました。

The Pros and Cons of a 4-Day Workweek」
(週4日勤務の長所と短所)
pros and cons:長所と短所、賛否両論

   「週休3日制」には、「pros」(長所)だけではなく「cons」(短所)がある、という指摘ですが、具体的にどんな「cons」(短所)があるのでしょうか?

   まず指摘されているのが、取引先や顧客とのコミュニケーション面での「cons」(短所)です。

   平日に休みを増やすと、取引先からの電話に出られず、「何やっているんだ!」と怒られることが増えた、「(候補日が減るので)打ち合わせ日程がなかなか決められない」といったことが起きているそうです。

   とくに、取引先は稼働しているのに「自分だけ休んでいる」状況は、あのおおらかな英国人でさえ「feel guilty」(罪悪感を覚える)というのですから、よほどのことなのでしょう。取引先からのネガティブ反応を恐れて、「週休3日」を内緒にしている「隠れ週休3日組」が多い、とも報じられていました。

   また、サービス業の場合、顧客からの注文や問い合わせへの対応が遅れて相手をイライラさせたり、ライバル企業にスイッチされてしまったりする「実害」も生じている様子。

   さらに、稼働日の4日間に業務が集中して残業が増えてしまい、保育園や幼稚園など「子どものお迎えの時間に間に合わない!」ケースも増えているそうです。

   なかには、「4日間で1週間分の仕事を片付けるのはプレッシャー」「ストレスが増えた」といった、精神面でのマイナスを訴える人もいるようですから、なかなか計算通りにはいかないようです。

   それでは、「今週のニュースな英語」「pros and cons」(長所と短所)を使った表現を学びます。ビジネスの場面でもよく使われる英語表現です。

The pros and cons of being a freelancer
(フリーランスで働く長所と短所)

The pros and cons of new program
(新しく導入したプログラムの長所と短所)

The pros and cons of public vs private school
(公立学校と私立学校、長所と短所)

   日本国内では、先日LINE社が実施した「今後したい働き方」の調査で、第1位に輝いたのは「週休3日制」だったと発表されました。

   「在宅勤務」や「副業」といった「新しい働き方」を押さえて堂々の1位。英国「試験プログラム」を見る限り、「みんなでいっせいに始める」ことが要諦ではないかと感じています。

(井津川倫子)