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「相場は明日もある」 武田薬品株はゆっくり、じっくりが勝利の近道!?【格言で買う株式投資】(石井治彦)

   「相場は明日もある」という相場格言がある。

   日本証券業協会の相場格言集は、

「材料が出たら、できるだけよく調べてから買っても決して遅くない。それが翌日だろうと何日後であろうともだ。材料が本物であって、実際に株価が上がるなら、1日ぐらいの遅れは大勢に影響ないではないか。『相場は明日もある』とは、焦りを戒め、機会をじっくり待つことを教えた格言である」

と説明している。

   ゆっくり、じっくり......。武田薬品工業は、そんな投資格言にぴったりな銘柄だと思っている。

  • 武田製薬株はゆっくり、じっくり……(写真はイメージ)
    武田製薬株はゆっくり、じっくり……(写真はイメージ)
  • 武田製薬株はゆっくり、じっくり……(写真はイメージ)

思うように上がらない株価......

   武田薬品工業の株式を初めて買ったのは2018年10月11日。1株あたり4440円で100株を取得してから、間もなく4年になる。この時は同年1月の高値、6693円から34%下落しており、それ以降のナンピン買いを前提に考え、「この価格なら」と取得した。

   その後、同年12月25日に3650円で100株。翌19年7月2日に3850円で100株。20年3月13日に3075円で100株を取得と、予定どおりナンピン買いを進めた結果、この8月31日現在、400株を保有。平均取得単価は3786円50銭まで下げることができた。

   ところが、2019年1月にシャイアー社(アイルランドの製薬・バイオテクノロジー会社)の6兆円にもおよぶ巨額買収は、武田薬品工業の財務状況を悪化させ、株価は低迷することとなった。ナンピン買いはうまくいったと思っているが、株価がなかなか上がる兆しを見せないことに、ちょっとばかり弱気の虫が騒ぎはじめていた。

すべては予定どおり

   そんな武田薬品株だったが、2021年12月1日の安値2993円を底に、上昇に転じている。武田薬品株は今年7月20日に4063円の年初来高値を記録。その要因は、売上高3兆円超のメガファーマ(巨大製薬企業)の仲間入りを果たしことや、総花的だった開発薬をオンコロジー(がん)や希少遺伝性・血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患という4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤(PDT)やワクチンに集約したこと。新薬(グローバルブランド14製品)の販売も好調に推移している。さらに、新薬の研究開発も現在40の臨床段階の開発プログラムが進行中。6兆円の有利子負債も順調に減少するなど、当初の目標どおりに進んでいるとみられる。

   武田薬品工業は8月23日、デング熱ワクチンが、特に感染者が多いインドネシアで承認されたと発表。これは同社のグローバルワクチンで、最大で年間16億ドル(約2200億円)の売り上げを狙っている。蚊を媒介としたジカウイルス感染症(ジカ熱)のワクチン開発も研究中。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大第7波で、副反応の確率が他社のワクチンに比べて低い「ノババックスワクチン」の接種も順調だ。

   残された問題は、(1)シャイアーやナイコメット(スイスの製薬会社)の巨額買収の成果を株主に示すこと(2)巨額有利子負債が、いつまでにシャイアー買収以前の2兆890億5400万円(18年3月末)まで削減されるのか――の2点と見ている。

   現在の株価は、こうした要因が形づくっているのだろう。武田薬品工業の株価は現在、3800円~3850円で売り買いが交錯している。3850円での底値固めが進むようであれば、7月20日に付けた年初来高値の4063円も視野に入って来る、とみている。ここは、じっくり構えて、売却のタイミングを見定めたい。

   まずは10月末に発表予定の、2022年9月末(中間)決算が注目される。

【武田薬品工業】(4502)
年初来高値2022/7/20 4063円
年初来安値2022/1/6 3173円
直近 終値2022/8/31 3850円


プロフィール
石井治彦(いしい・はるひこ)
投資歴25年。「現物株式取引」と「長期投資」が基本姿勢。情報源はもっぱら会社四季報や日本経済新聞、経済誌など。また、株主総会やIR説明会には、できるだけ顔を出すようにしている。東京都出身。