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人材価値があるのはどういう人?...40歳からの「転職」に勇気与える一冊

   「40歳を越えると就職先はない」と思い込んでいる人はいないだろうか?

   たしかに、ITなどの技術革新についていけない、加齢とともに新しいことへの興味が薄れているなど、転職市場での価値が低いことには理由があるようだ。

   しかし、待ってほしい。本書「40歳からのキャリアチェンジ」(経団連出版)は、中高年層が実は企業から求められているとして、転職をサポートするノウハウを明かしたものだ。

「40歳からのキャリアチェンジ[第2版]」(楠山精彦・和田まり子著、NPO法人キャリアスイッチ編)経団連出版

   著者の楠山精彦さんは、アメリカン・エキスプレス日本法人副社長や大学講師などを歴任、関西キャリアデザイン研究所を設立し代表。NPO法人キャリアスイッチ顧問。

   もう1人の著者の和田まり子さんは、大手航空会社退職後、キャリアコンサルタントの資格を取得。兵庫県雇用開発協会の兵庫高齢期就業支援コーナーの初の女性室長に。現在、NPO法人キャリアスイッチ理事長。

自分の価値を高めるための「資料」とは?

   冒頭で、中高年がもっている能力を挙げている。

・仕事の基礎的知識、専門的実務知識が蓄積されていて、確実な判断力がある
・トラブル、事故などの不測事態の経験が豊富で、その対応力が非常に高い
・実現可能な企画立案力がある
......などだ。

   昨今の企業は、キャリアゴールが随所にある多角形型になっているため、さまざまな人材を必要としている。そのときに必要とされるのは、若年層が育つまでの間、そのゴールの仕事を任せることができる経験、知識、技術、ノウハウをもった中高年人材だという。

   本書は具体的に中高年に絞った求職・転職術を流れに沿って、書いている。

   まず、人材価値のある人とは、「過去に経験したこと、取得した知識、技術、ノウハウなどすべてを抽出できるようなバウチャーを持っている人」を意味するという。

   バウチャーとは、「証拠書類・資料・帳票」のことだ。

   人材の流動化が激しい欧米では、ほとんどのビジネスパーソンは学校を卒業してから現在に至るまでのそうしたバウチャーを所持しているという。また、常にそういったマインドをもって、自分の価値を高めるための「資料」を集めているのだ。

   日本もまさにそうした時代が到来した、と著者は見ている。入社以来、自分が経験してきた業務に関して書き出してみて、すぐ抽出できない項目についてはできるだけバウチャーを収集するように勧めている。

   具体的には、こうすればいいそうだ。

   出張したらその出張報告書のデータをとっておく。異動で引き継ぎ書類を作成したらそのデータをとっておく。そのほか、自分が従事した資料を集めておく習慣をつけておくべきだ、とアドバイスしている。

   だが、会社で複写禁止、社外持ち出し厳禁となっている書類などのコピーをとるという意味ではないから、注意が必要だ。主として、自分が従事した仕事の内容をすぐに引き出すことができるようにしておくことだ。

   こんな方法もあるという。一般的な知識、技術、ノウハウを「自分化」する作業だ。

   たいていの業務に関する解説書が発行されているので、たとえば人事労務の経験者であれば、書店で人事関係書を購入し、一般的として記載されている内容を自分が体験したことに照らし合わせ、自分が実施したこと、習得したこととしてまとめていくのだ。

   そのまとめが自分の「知的財産」となり、自分を売り出す際の貴重なサポート書類になる。

求職活動も商品販売と原理は同じ

   求職活動とは、自分という商品を買ってくれる受け入れ企業に、自分というセールスマンが、いかに早く的確にアプローチしていくかということだから、商品販売の基本原理と同じだ。

   そのため、戦略も戦術も必要。単に、履歴書をつくって送るというような簡単なやり方ではうまくいかない。望ましい流れは、次の5つのステップになるという。

1 自分という商品の特質分析 セールスポイントを証明するバウチャーを集め、その価値を文章化する。
2 商品を売り込むツールの作成 職務経歴書の記述は、従来の時系列的な過去の経歴と実績を中心としたまとめ方ではなく、未来志向でまとめた内容にする。
3 マーケティング戦略の策定 自己認知分析にもとづいて、やりがいのある仕事を認識する。
4 セールストークの訓練
5 内定先決定とクロージング

   職務経歴書の作成について、さらに詳しく解説している。

   時系列型の「編年体式」、逆時系列型の「逆編年体式」、職能別型の「キャリア式」の3つのタイプがある。なかでも本書は、キャリア式でまとめることを勧めている。

   従来の略歴、専門分野の記述に加えて、今後勤務する会社で何ができ、またするつもりか(貢献領域)を明示することが重要だという。

   A4版2枚以内にまとめた例では、氏名・住所・電話番号、eメールアドレスの次は、目標(確約)、目的と続いている。

   「自己の知識、経験、技術、技能、ノウハウがいかに求職先での価値の提供につながるか、また貢献できるかということを簡潔に訴求できる文章が必要」だからだ。この後、略歴、職歴、職務内容・達成実績、取得免許・資格、自己PRを書き、生年月日と最終学歴は最後に「その他」の項目に記載している。

   企業の採用条件が年齢と学歴がキーポイントであった時代から、個々人のオンリーワンが審査基準の時代へと変わったからだ、と説明している。

◆面接でのアピールの仕方

   面接対応法では、新卒と違い、中高年齢者は「即戦力」としてすぐ役立つかどうかをまず、見極められる。自分に任せてもらえるなら、必ずその会社にとって結果が出せる、業績の向上に結びつけられる理由とその自信をアピールすることが大切だ。

   次に、その会社になじむことができる「組織同化力」、第三に「健康と前向きのやる気」を示すことだ。

   著者とNPO法人キャリアスイッチは、キャリアチェンジの支援を続けてきただけに、内容は具体的で参考になる。いくつになっても転職はできる、と自信を与えてくれるだろう。

(渡辺淳悦)

「40歳からのキャリアチェンジ[第2版]」
楠山精彦・和田まり子著、NPO法人キャリアスイッチ編
経団連出版
1760円(税込)