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アクセンチュアが買収! AIベンチャー・ALBERT社員の平均給与はいくら? 気になる業績推移や平均勤続年数もチェック!

   上場企業の財務諸表から会社の内情をさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、大企業を顧客にAI実装やデータサイエンティスト育成などを支援する、AIベンチャーのALBERT(アルベルト)です。

   ALBERTは2005年に東京・渋谷区で設立し、2015年2月に東証マザーズ上場。2022年9月には、総合系コンサルティングファームのアクセンチュアがALBERTの完全子会社化に向けて、株式公開買付け(TOB)を発表したことで注目されています。

  • 今回は「ALBERT」に注目(写真はイメージ)
    今回は「ALBERT」に注目(写真はイメージ)
  • 今回は「ALBERT」に注目(写真はイメージ)

過去最高業績を大きく更新中

   それではまず、ALBERTの近年の業績の推移を見てみましょう。

   ALBERTの業績は上場直後に赤字転落し、創業者がインサイダー取引で有罪判決を受けるなど一時混乱がありました。

   しかし、2018年に戦略転換を行ってから右肩上がりで伸長。2021年12月期には売上高33億3800万円、営業利益4億3600万円、営業利益率13.1%といずれも過去最高となっています。

   2022年12月期の業績予想は、売上高が前期比22.8%増の41億円、営業利益が同50.6%増の6億5700万円、営業利益は同2.9pt増の16.0%、最終利益は同26.3%増の4億4600万円と、過去最高を大きく更新する見込みです。

主要事業は大企業向けのプロジェクト型「AI実装支援」

   ALBERTは「データソリューション事業」の単一セグメントですが、大きく「プロジェクト型ビジネスモデル」と「月額課金型ビジネスモデル」の2つの事業を行っています。

   前者の「プロジェクト型」では「AI実装支援事業」と「データサイエンティスト育成支援事業」を、後者の「月額課金型」では「AIプロダクト事業」を行っています。

   売上高比率が最も高いのは「AI実装支援事業」で、全体の約85%を占める主要事業です。主に、大手企業向けにAI利活用を目指すプロジェクト型支援サービスで、AI活用コンサルティングからビッグデータ分析、AIアルゴリズム開発、AIシステム実装まで、一気通貫の支援体制を備えています。

   ALBERTを買収したアクセンチュアは、おそらくこの部分を今後新たな自社サービスとして提供していくものと思われます。

   「データサイエンティスト育成支援事業」の売上高構成比は約10%。企業内のデータサイエンティスト育成を支援するサービスで、経産省「第四次産業革命スキル習得講座」(通称:Reスキル講座)の認定を取得しています。

   「AIプロダクト事業」の売上高構成比は約5%で、AI・高性能チャットボット「スグレス」や、AI・画像認識サービス「タクミノメ」といった、AIを搭載した汎用的なプロダクトの提供を行っています。なお、今後は売上高95%を占めるプロジェクト型事業に経営資源を集中するため、2022年7月1日をもって「スグレス」事業を株式会社ショーケースに売却しています。

   なお、プロジェクト型事業では、2018年のトヨタ自動車との資本業務提携を皮切りに、東京海上日動火災保険、KDDI、三井住友フィナンシャルグループ、マクニカ、日本ユニシス、マイナビ、SBIホールディングスといった重点産業の主要企業と業務提携または資本業務提携を締結。これが功を奏して、2018年以降の年平均成長率(CAGR)は39.9%と非常に順調です。

   また、2021年12月期の主要顧客は、KDDIとアクセンチュアのジョイントベンチャーであるARISE analytics(アライズ・アナリティクス)からの売上高が7億1829万円、ヤマト運輸が同4億5623億円で、この2社で全体の3分の1を占めています。

正社員の約7割は修士・博士課程を修了

   ALBERTの2021年12月期末の従業員数は174人(正社員および契約社員、自社への出向者)で、2017年12月期末の88人から約2倍に増えています。「2021年12月期通期決算説明資料」によると、データサイエンティストの数は、2021年末の段階で239人を擁していることになっていますが、正社員・契約社員以外の従業員も含んでいるのかもしれません。

   なお、現在は250人規模のデータサイエンティスト集団となっていると見られますが、正社員の約70%は修士・博士過程を修了しているとのこと。専門領域は数理情報学や統計力学、人工知能システム工学など多彩です。

   ALBERTの平均年間給与(単体)はここ数期で右肩上がりになっており、2021年12月期は681.5万円に。平均年齢は34.8歳、平均勤続年数3.3年です。平均年齢と平均勤続年数が伸びていないのは、30代前半から半ばの経験者採用が順調に進んでいるためと見られます。

   ALBERTの採用サイトを見ると、新卒採用とともに、「【機械学習/統計】データアナリスト」や「【AI/分析案件】プロジェクトリーダー(システム開発)」「【研究開発】AIリサーチャー」「【AI/教育】研修講師」といった職種での経験者募集が行われています。

   高学歴の多いALBERTですが、応募には年齢・学歴・資格は不問。大卒以上が希望ですが必須ではありません。「高度な数理知識」や「PythonもしくはRの実装経験」などが必須スキル。フレックスタイム制で、想定年収は500~800万円ということです。

アクセンチュアのTOBが異例の高値と話題に

   DX領域の企業支援サービスで急成長する総合系コンサルティングファームのアクセンチュア株式会社は、2022年9月29日にALBERTの株式公開買付け(TOB)を発表しました。買付価格は9180円で、TOB公表前日の終値4055円に120%を超えるプレミアムを加えた異例の高値であることが話題になっています。

   アクセンチュア株式会社は、アイルランドに拠点を置きNY証券取引所に株式上場するグローバル企業のアクセンチュア PLCの日本法人。グローバルでは2019年に世界的なクリエイティブエージェンシー「Droga5(ドロガ・ファイブ)」を傘下に収めるなど拡大路線を展開していますが、DX領域で成長する日本法人でも独自のM&Aで業容拡大を図っています。

(こたつ経営研究所)