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40代以下世代が注目、様変わりする「地方移住」 テレワーク定着、通勤圏内に住む必要がなくなった...新たな課題も

   東京など都市部から地方への移住が加速している。新型コロナウイルス禍でテレワークが広がり、住む場所の制約が外れたことが大きな背景にあるようだ。ただ、移住と言っても、従来の移住とは少し様相が変わってきており、受け入れる側の対応も今まで通りでは不十分といえそうだ。

  • 注目集まる「地方移住」。40代以下の相談も多いという(写真はイメージ)
    注目集まる「地方移住」。40代以下の相談も多いという(写真はイメージ)
  • 注目集まる「地方移住」。40代以下の相談も多いという(写真はイメージ)

社員はどこに住んでもいい...居住制限を外した企業も

   移住の支援をしている「ふるさと回帰支援センター」(東京都千代田区)によれば、2021年の相談件数は前年比29%増の約4万9500件となり、過去最高だった。

   相談件数が増えただけでなく、中身も変わってきている。たとえば、08年には50代以上の人から寄せられる相談が約7割を占めていたのに対し、今は40代以下の人が7割超に上る。若い世代の相談が増え、20代が約22%を占めて、これも過去最高だった。

   従来の移住のイメージは、定年退職した人が第二の人生を求めて生まれ故郷に帰ったり、都会での仕事を終えて自然豊かな地に移り住んだりするというものだった。

   しかし、最近の移住者は20~30代をはじめ、現役世代が多い。「コロナ禍を機に、テレワークで働く人が増えて、会社に通える範囲内に住む必要がなくなったため」(移住支援関係者)とされる。

   テレワークを導入しただけでなく、NTTグループのように、社員はどこに住んでもいいとして、居住制限を外した企業も増えてきている。

   一方、働き方や住み方の自由度が広がるなか、平日は従来通り都心に住み、週末だけ地方で暮らすなどといった2拠点居住のスタイルも珍しくなくなった。

移住希望者のニーズが変化...インターネット環境整備と「生き方」の尊重

   こうした動きを受け、地方自治体などの間では移住者を取り込もうとPR合戦が激しい。

   ただ、「今まで通りの移住サポートでは人を呼ぶことはできない」(同)という見方は多い。自治体などの支援策は従来、空き家の手配など住居に関わるサポートや、農業を始めたい人に技術支援をするなど、地域での働く場のサポートが中心だった。

   しかし、いまや「仕事を持ったまま移住する」人が増え、ニーズに変化が出てきている。もちろん、住居の支援は引き続き求められるが、働く場に関しては、仕事を紹介するより、テレワークがスムーズにできるよう、インターネット環境を整備することの方が重要になってきた。また、出勤する際の交通費の補助なども魅力の一つになっている。

   地域のコミュニティーとの関係性も、従来以上に考えなければいけない。たとえば、週末だけ地域に住むといった人に消防団に入るよう迫るのは難しいだろう。

   「人によっては、それだけで移住をやめてしまう。新しいタイプの移住者の生き方を地域ぐるみで尊重することがいっそう必要になっている」と支援者の多くは話す。

   テレワークはコロナ禍が終息しても引き続き広がっていくとの見方が強い。移住者を地域に取り込んで活性化につなげたいなら、前例にとらわれない対応が求められる。(ジャーナリスト 済田経夫)