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関西在住・出身者は必見?...ダイヤモンド「京都・大阪・神戸&経済と教育」、東洋経済「学び直し全ガイド」、エコノミスト「メタバース&ウェブ3」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

京都にある、3つの2兆円企業

   2022年10月17日発売の「週刊ダイヤモンド」(2022年10月22日号)は、「世界を動かす大経済都市 京都・大阪・神戸」「凄いぞ! 関西教育 中高一貫校・高校・大学 最新序列」と題し、関西・三都の経済と教育について、2大特集を組んでいる。関西在住・出身者にとって必見の中身の濃い内容だ。

   特集1のパート1は「日本電産『社長解任』ドキュメント」、パート2は「京都企業の血脈」で構成。大阪ではなく、京都の経済事情から始まっているのは、京都企業の躍進ぶりと話題性のゆえだろう。

   世界企業となった村田製作所、日本電産、京セラの「御三家」は、売上高が2兆円に迫る勢い。そして、「創業者の代替わり」を象徴するような出来事が、この夏相次いだ。

   8月30日、京セラ創業者である稲盛和夫・名誉会長の死去が明らかになった。続く9月2日、日本電産の永守重信会長が自身の後継候補だった関潤社長(当時)を実質的に解任に追い込んだ。

   この社長解任劇の模様を「スクープ」として詳しく報じている。永守氏と関氏は1年に及び、少なくとも4回の衝突を繰り返していたというのだ。和解が成立するたびに、永守氏は関氏に対して、降格・減俸などの厳しい条件をのませた。最後通牒は、7月に「無報酬労働9カ月」を求めるものだったという。

   同誌は、永守氏の求心力の衰えを指摘するとともに、悲願の「売上高10兆円」に暗雲が立ち込めている、としている。

   「鬼門」は車載・家電の2つの事業だ。外部出身の責任者が次々と交代させられた。今度はこの2大事業を「社内幹部」に任せるとして新たな体制を探っている。もっとも、「果たして次の犠牲者は誰になるのか」とも...。

   なにかにつけて、閉鎖性が指摘される京都。三菱UFJ銀行が主催する「31社会」という経営者交流会の内実にも迫っている。毎年12月、祇園のお茶屋で開かれ、三菱UFJフィナンシャル・グループの幹部が勢ぞろいし、ゲストに京都企業の首脳を迎える。大企業のほか、規模は小さいものの財界での発言権の強い老舗企業も参加するという。

   旧三菱銀行の顧客に限定せず、旧三和・東海銀行の顧客という「新しい血」を入れることで、活性化を図っているらしい。実際に、主な京都企業の取引先金融機関では、三菱UFJ銀行の独り勝ちだという。メインバンクが三菱UFJ銀行以外の銀行であるのは、村田製作所と任天堂ぐらいだ。

◆どうなる?2025年大阪・関西万博...冷ややかな声も

   パート3「大阪財界 知られざる全内幕」では、関西財界の総本山・関西経済連合会の次期会長に、阪急阪神ホールディングス会長グループCEOの角和夫氏の名前が浮上していると報じている。

   地盤沈下が続く関西経済。2025年大阪・関西万博の準備の内幕も興味深い。会場建設費は2020年末、従来見込みの1.5倍の1850億円に上昇。民間の目標額も617億円に膨らんだ。在阪企業に集金ノルマが課せられるが、「見返りはない」と突き放す声もあるそうだ。

   パート5「財閥息づく 唯一無二の神戸経済」では、開かれたグローバル経済都市という「表」の顔のほかに、軍需産業都市という「裏」の顔があるとも指摘している。

   「特集2 凄いぞ! 関西教育 中高一貫校・高校・大学 最新序列」では、京都大学、大阪大学の旧帝国大学を擁する土地柄で、難関大学=国公立大学信仰が根強い一方、難関大学に至るルートは、大阪、兵庫、京都では異なるものの、最近、公立高校志向が高まっている、と分析している。首都圏とは違う教育環境が関西に根付いているようだ。

50代からでも遅くない「学び直し」

   「週刊東洋経済」(2022年10月22日号)の特集は、「学び直し全ガイド 50代からの稼ぎが変わる」。岸田政権が掲げる「新しい資本主義」における目玉の1つが学び直しで、最近、リスキリング(企業内で知識やスキルに関する職業能力の再開発を行うこと)とリカレント(個人を主体とした生涯学習)という言葉をよく聞くようになった。目的別にそのガイドをまとめている。

   たとえば、「将来は経営に参加したい」という人であれば、MBA取得で道が開けるという。将来の仕事に役立つ人脈が得られるのも、国内MBAの大きなメリットだ。国内MBAは大きく分けて、全日制と、夜間・土日などのパートタイムの2種類があり、さらに国公立と私立がある。

   学校によって、論文を重視する「研究」系と、ケーススタディを中心とする「実務」系、その中間に分かれるという。人気の高い一橋、早稲田などでは倍率は表向き4~5倍程度。だが、さらに企業推薦枠を設けている学校もあるため、実際は10倍近くになることもあるそうだ。

   最近注目されているデジタル人材を目指す人は、データ分析、そのためには統計学の勉強が必要になる。もう1つ、Webマーケティングを実践する方法もある。それにはブログを運営し、集客の実績を残すことが役立つ。本やブログのほか、動画コンテンツ、オンライン形式のセミナーもある。このほかに、情報セキュリティも花形になりつつある。2016年にスタートした「情報セキュリティマネジメント試験」という国家試験を勧めている。

   副業で稼ぎたい人は中小企業診断士の受験が近道になるというアドバイスや、「仕事の英語は上達する」として、目的に応じて試験を選び、オンライン英会話を活用するというノウハウも参考になるだろう。

   また、「教養力」で生き残るには、歴史や宗教学、文化人類学など人文系のほか、数学、物理学が役に立つという。

   最後に、リスキリング、リカレントに最適な「場所」にも触れている。所属企業・団体内か、大学院、大学など教育機関か、資格スクールか、オンライン講座か――目的に応じて選ぶのがコツだ。教育訓練給付金など、使える制度についてもまとめている。

メタバースが今熱い!

   「週刊エコノミスト」(2022年10月25日号)の特集は、「メタバース&ウェブ3のすごい世界」。18日(2022年10月)から千葉市・幕張メッセで始まった、先端技術の見本市「シーテック」でも目玉はネット上の仮想空間「メタバース」。同誌では、基礎知識のQ&Aをまとめている。

   冒頭、紹介しているのが、2年間で約100万人を集めたメタバース空間「バーチャル渋谷」だ。東京・渋谷の街をネット上に再現した仮想空間で、パソコンやスマホ、あるいはゴーグルのようなVR(仮想現実)端末を装着して参加する。

   自分の代わりになるアバター(分身)が動く。定期的にイベントが開かれ、2020年の「ハロウィーンフェス」には約40万人が参加したという。

   「バーチャルマーケット」というメタバースには、60~80社の企業が参加、客と店員のアバター同士がやりとりし、買った商品は後日、自宅に届く仕組みだ。ネットとリアルが融合したものだ。

   順天堂大学付属順天堂病院にそっくりなメタバース空間も11月に開業する。メンタルヘルスなどの患者がアバターで「来院」し、症状の改善に役立てるという。日本でも経済活動や医療分野でメタバースの利用が始まった。

   一方では、懐疑論もあるようだ。京都大学特任准教授の山本康正氏は「メタバースは、掛け声倒れに終わる可能性があり、先行きは厳しい」と見ている。メタバースが注目されて1年になるが、現在までスマッシュヒットになるような商品は出ていない、と指摘。米国ではすでに鎮静化しているというのだ。

   GAFAという巨大IT企業の情報独占に対抗するかたちで、非中央集権的な仕組みでつくられた「ウェブ3」も「過度な期待のピーク期」にある、と指摘するのは、IT情報会社のガートナー。

   プラットフォーマーが不在なフラットな組織でビジネスや慈善活動を行うなどの理念は高いものの、現実にそれが可能なのか、本当に求められているのか、「答えは出ていない」と説明している。

   メタバースに似たようなものとして、07年に話題となった仮想空間セカンドライフがあった。尻すぼみになったが、メタバースはどうなのか? 既存の事業会社との連携に将来がかかっているようだ。

(渡辺淳悦)