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逆転勝利で「日本ショック」!...「死の組」はもはや「死語」! 大興奮のカタールW杯、日本はどう見られている?...海外報道を追ってみた(井津川倫子)

   サッカーのワールドカップ(W杯)がカタールで開幕し、グループリーグの試合が始まりました。

   初戦のドイツ戦で劇的な勝利を収めたグループEの日本は、決勝トーナメント進出を目指して、残り2国(コスタリカ、スペイン)と闘います。

   大会前、スペイン、ドイツという歴代の優勝国が混在するグループEは、一部で「死の組」と報じられていますが、果たして今大会の「Group of Death」(死の組)はどこなのか? 日本の注目選手は? 気になる海外メディアのリアル報道を追ってみました。

  • ドイツ戦勝利の日本、「ドーハの歓喜」と話題!(写真はイメージ)
    ドイツ戦勝利の日本、「ドーハの歓喜」と話題!(写真はイメージ)
  • ドイツ戦勝利の日本、「ドーハの歓喜」と話題!(写真はイメージ)

もはや「死の組」は死語! 「かませ犬」日本が「勝者」破った!

   いよいよサッカーW杯が始まりました。4年に1度の祭典とあって、各国メディアは大賑わい。にわかサッカーファンが世界中にあふれるほど、ふだんはサッカーに関心がない人もついつい引き込まれてしまいます。

   W杯で必ず盛り上がるのが「死の組」の事前予想。英語でもズバリ「Group of Death」(死の組)ですが、毎回、グループリーグの抽選結果が発表されるやいなや、強豪チームが同居してしのぎを削りあう、「Group of Death」の存在が話題になります。

   各グループ4カ国のうち決勝リーグに進出できるのは半分の2カ国のみ。強豪チームが同じグループに集中して、お互いを殺しあう「Group of Death」というワードは、1970年のメキシコW杯で初めて登場したそうです。

   当時、イングランド、ブラジル、チェコスロバキアの優勝経験国が一つのグループに集中して、激戦を繰り広げた様子を「Group of Death」とメディアが報じたことが発端とか。結局、「Group of Death」を勝ち抜いたブラジルが優勝したことからも、実力派ぞろいのグループだったことがよくわかります。

   ところが、近年、この「Group of Death」に異変が生じている、と複数の海外メディアが伝えています。なぜなら、参加国が増えてグループ数も増加した現在、強豪国が分散化する傾向が加速しているというのです。

Looking for this World Cup's 'Group of Death'? It doesn't exist anymore.
(W杯の「死の組」はどこか?もはや「死の組」は存在しない:サッカー専門メディア)

What's the 2022 World Cup's Group of Death? It's tough to pick just one.
(2022年W杯の「死の組」はどこか?一つだけ選ぶのは難しい:米メディア)

   もちろん、今回も海外メディアがこぞって「死の組」予想をしています。日本が入ったグループEを「死の組」だとする報道もよく目にしますが、メッシ率いるアルゼンチンや強豪国がひしめくグループCや、優勝候補筆頭のブラジルが所属するグループGを推す声も多く、「一つに決められない」というのが本音の様子。

   実際、参加国とグループ数は、「死の国」ワードが誕生した1970年大会の16カ国、4グループから今大会は32カ国8チームに増えていて、強豪国が同じグループに集まる確率は低くなっています。

   さらに、大会を運営するFIFA(国際サッカー連盟)が大陸連合ではなくランキング重視で抽選するようになったことからも、「死の国」が生まれにくくなっている、とされています。

   また、1970年以降のW杯の結果を見ると、「死の組」を勝ち抜いた国が優勝している確率が高いことから、「it's not a bad thing」(死の組に入ることは必ずしも悪いことではない)とする分析もありました。

   ちなみに、あるメディアは、グループEについて、スペインとドイツの「two champions」(二つの勝者)と、コスタリカと日本の「two brave underdogs」(二つの勇敢なかませ犬)だと指摘。「underdog」「勝ち目が薄い」「かませ犬」という意味だそうですが、初戦で日本がドイツを破ったように、「かませ犬」が強者を倒す番狂わせがW杯の醍醐味です。

   「死の組」が「死語」になりそうな昨今、「underdog」も「死語」と言えるのではないでしょうか?

ドイツを破って「日本ショック」! 海外メディアが注目する日本ベストプレーヤーは?

   サウジアラビアが優勝候補アルゼンチンを破る「大番狂わせ」の興奮が覚めやまぬなか、「かませ犬」とされた日本が「勝者」ドイツを逆転で破るなど、カタールW杯は早くも想定外のドラマが繰り広げられています。

   なかでも、日本の逆転劇が「shock」を与えたと、各国メディアが速報で報じています。

Germany shell-shocked!
(ドイツ、大激震!)

Japan shock Germany 2-1 in Group E opener
(日本、グループE第1戦でドイツに衝撃を与える)

   個人的に、サッカーW杯で思い出すのは1998年のフランス大会です。当時、海外駐在員としてロンドンオフィスに勤務していた私は、試合観戦のために突然「急病」になって会社を休んだり、オフィスから姿を消してパブで盛り上がったりする人たちの「尻ぬぐい」に追われていましたっけ...。

   開催期間中にパリ出張が重なった時は、スコットランドの応援団と飛行機が一緒に。機内でバグパイプのような楽器を奏で、ビールを飲みながら楽しそうに盛り上がっている一団に驚きつつ、サッカーを愛する欧州人のマインドに触れた気がしました。

   日本が初めてW杯に出場した同大会。プレミアリーグで目が肥えたイギリス人の同僚が「NAKATAはいい選手だ。欧州でも通用するよ」と、中田英寿選手(当時)をほめていたことを思い出します。

   それでは今大会、海外メディアは日本選手をどう評価しているのでしょうか? いくつかのメディア評を追ってみると、やはり海外チームで活躍する「海外組」の評価が高いようです。

   複数のメディアが「日本のベストプレーヤー」だと推していたのは、ドイツフランクフルトで活躍している鎌田大地選手です。「Europe's top performers this season」(今シーズンの欧州リーグでトップ選手の一人だ)と称しているメディアもありました。

   鎌田選手同様、欧州で活躍する久保建英選手の評価も高く、「わずか21才ながらすでに世界中でプレーしている」ことから、「Japanese Messi」(日本のメッシ)と紹介されていました。

   1998年当時は予想できなかったほど、海外で活躍する選手が増えた日本。英BBC放送は「J-League evolves Japan's best are heading for Europe」(Jリーグは優秀な選手たちを欧州に向かわせた)という特集を組み、2002年の日韓共同開催時はたった4人に過ぎなかった「海外組」が、カタール大会では「代表選手26人中19人が海外組」だと伝えています。

   とはいえ、強豪国ひしめくW杯で、優勝への道のりは相当厳しい様子。専門家による日本チームの予想は「Group stage exit」(グループステージ敗退)が目につきました。

   勇敢な「かませ犬」の番狂わせの次なる「ショック」に期待しましょう。

   それでは、「今週のニュースな英語」「shock」(衝撃を与える)を使った表現を紹介します。

Japan shock Germany with comeback win
(日本は逆転劇でドイツに衝撃を与えた)

We were shocked at the news of Twitter
(ツイッター社に関するニュースにショックを受けた)

Your behavior shocks me
(あなたの行動にショックを受けている)

   思い起こせば、1998年のフランス大会も「shock」の連続でした。中山雅史選手(当時)の日本W杯初ゴールや、英国ベッカム選手(当時)の退場劇。ジダン選手(当時)ら「移民組」が大活躍したフランスチームの躍進も世界中に「shock」を与えました。

   想定外の「shock」ほど、記憶に残るようです。今大会も数々の「shock」が生まれることを期待しましょう。(井津川倫子)