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GDPマイナス成長の衝撃「経済減速」で追い詰められる岸田政権...反転攻勢のきっかけさえつかめず

   支持率低下が止まらない岸田文雄政権を、予想外の経済の減速が追い詰めている。

   内閣府が2022年11月15日発表した22年7~9月期国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%減、年率換算では102%減となり、21年7~9月期以来4四半期ぶりのマイナス成長となった。

   事前の市場予想はプラス成長だっただけに、政府内に強い衝撃が走った。

   岸田首相は物価高対策を柱にした経済対応を反転攻勢につなげる思惑があったからだ。「厳しい状況になった」。政権幹部はこうつぶやいた。

  • 焦りの色を強める岸田政権
    焦りの色を強める岸田政権
  • 焦りの色を強める岸田政権

インフレが日本経済の重い足かせ...10月の消費者物価指数3.6%上昇、40年ぶり高水準

   GDP減速の最大の要因は、日本経済のけん引役である、個人消費の伸び率が前期比0.3%増と勢いを欠いたことだ。

   新型コロナウイルス禍に伴う行動制限は解除されたものの、世界的な資源高を受けインフレの加速が消費者心理を冷やしたかたちだ。

   政府は「減速は一時的」とし、松野博一官房長官は今後の見通しについて「総合経済対策を含めた各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される」と強調したが、先行きも楽観できない状況だ。

   総務省が11月18日公表した10月の全国消費者物価指数(CPI)の伸び率は、価格変動の大きい生鮮食品を除いたコア指数で前年同月比3.6%上昇となり、1982年2月以来、実に40年8か月ぶりの高い水準となった。

   消費税導入時と過去3回の税率引き上げ時の伸び率をも上回り、インフレが日本経済の重い足かせとなっている現実を改めて突きつけた。

岸田政権の生命線は「経済回復の維持」...だが、思惑どおりにはいかず

   政府は焦りの色を強めている。岸田政権にとって「経済回復の維持」が最後の生命線となっている。

   準備も重ねてきた。岸田政権は10月末、ガソリン高や、電気代・ガス料金の高騰対策などを盛り込んだ総合経済対策を決定。11月21日にはその裏付けとなる2022年度第2次補正予算案を臨時国会に提出した。

   2次補正は一般会計の歳出総額28兆9222億円という大型編成。霞が関も驚く大盤振る舞いで物価高の悪影響を緩和し、日本経済を成長軌道に乗せる狙いだ。

   岸田政権は現在、八方塞がりの状況にある。3閣僚を相次いで更迭する「辞任ドミノ」が現実となったうえ、「政治と金」の問題を抱える秋葉賢也復興相の新たな疑惑も次々と明らかになっている。

   起死回生をかけた20か国・地域(G20)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議も米国と、中国、ロシアの対立に翻弄され、首相が得意分野と自負してきた外交でも目立った成果は上げられなかった。

「賃上げの実現を含め、経済面で地道に得点を重ねていくしかない」

   首相周辺ではこんな空気が強まっていただけに、頼みの経済まで減速感を強めれば、もはや為す術なしという状況に追い込まれかねない。

   水際対策の緩和によって10月の訪日外国人観光客数は前月比15倍に急増するなどインバウンド消費は回復しつつあるが、新型コロナの「第8波」の懸念拡大など、経済の下押し圧力は依然として強い。

   インフレ対策に伴う米欧の大幅値上げの影響で世界経済の減速基調も強まっており、経済面で実績稼ぎを狙った岸田政権のシナリオは急速にしぼむ。首相に打つ手は残っているのか。(ジャーナリスト 白井俊郎)