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インボイス制度、企業の76%「内容を理解」も対応に苦慮 「田舎のお年寄りのお小遣い稼ぎ程度の商売ができなくなる」

   来年(2023年)10月1日にスタートするインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、企業の76.6%が、その「内容を理解している」と答えていることが帝国データバンクの調査でわかった。2022年11月21日の発表。

   また、2022年9月までに申請済みの企業は半数を超え、今年度中に申請が済む企業は7割に及ぶなど、多くの企業は来年10月からの制度開始に向けて準備を進めているようだ。

   ただ、その半面、取引先への対応に苦慮している企業が一定数みられたほか、国による周知が不足しているとの指摘も少なくなかった。

  • インボイス制度、企業の対応は?(写真はイメージ)
    インボイス制度、企業の対応は?(写真はイメージ)
  • インボイス制度、企業の対応は?(写真はイメージ)

企業の20%が「理解していない」0.3%は「言葉も知らない」

   消費税の複数税率に対応した仕入税額控除の要件となるインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、登録は必須ではないものの、「適格請求書」の交付を受けるためには、企業は適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要がある。

   制度は2023年10月1日にスタートする。

   企業がその直後から仕入税額控除を受けるためには、来年3月31日までに登録申請を行わなければならない。そのため、申請していない企業(事業者)は対応が急がれている。

   そうしたなか、帝国データバンクが実施した「インボイス制度に関する企業の意識調査」によると、自社のインボイス制度への理解について聞いたところ、企業の76.6%が『理解している』と認識していた。ただ、内訳をみると、「ある程度理解している」は61.5%だったが、「十分に理解している」は15.1%にとどまった。

   企業の20.0%で「理解していない」と答えたほか、0.3%とごく少数だが「言葉も知らない」という企業もあった。

   企業からは、

「登録申請は、担当会計事務所を通して申請済み。ワークブックなども随時目を通している」(栃木県、運輸付帯サービス)

といった声が聞かれた一方で、

「インボイス制度の内容が理解できない、説明してくれる人も近くにいない」(北海道、とび工事)

といった声もあった。

取引先への対応に困惑「一人親方との取引やめるわけにはいかない」

   また、企業にインボイス制度の登録状況を聞くと、52.9%が「2022年9月末時点で申請を済ませた」としていた。「2022年10月から23年3月までに申請予定」の22.6%と合わせると、今年度中に申請する企業は75.5%となる見込みだ。【図表1参照】

(図表1)インボイス制度の登録状況(帝国データバンク)
(図表1)インボイス制度の登録状況(帝国データバンク)

   企業からは、

「社内で十分に調査・把握し準備はできている」(東京都、電気計測器製造)

との声があがっている。その一方で、「申請しない」企業は2.6%だった。

   しかし、取引先のインボイス制度の登録状況を「確認済み」の企業は3.8%にとどまる。「現在、確認中」が25.4%、「制度開始までに確認予定」が45.8%だった。企業の7割超で取引先の状況を確認する意向があり、以下のような意見があがっている。【図表2】

(図表2)取引先の登録状況の確認(帝国データバンク)
(図表2)取引先の登録状況の確認(帝国データバンク)
「取引販売先のお客様の6割が個人事業主となるため、インボイス登録の確認は必須と考えている。今後の手続き(仕入れ)に関しても社内で研修を2023年度に実施する予定である」(茨城県、和洋紙卸売)
「免税事業者の多くは個人事業主が多く、対応を決めかねている方が多いため、自社として早くからの準備は不可能。現実的には、諸々の確認、調整作業は来年4月期以降になる」(北海道、各種商品小売)

   その半面、「特に確認しない」とする企業は14.5%だった。こちらからは、こんな声が――。

「田舎で少量の農作物を作って販売、漬物など加工販売していたお年寄りたちが、小遣い稼ぎ程度の商売ができなくなる」(石川県、乾物卸売)
「フリーランスとの取引が多いので、取引先への説明に労力を使っている。意外とまだ気にしていない方もいる」(東京炉、劇団)
「非常に困惑している。一人親方や、個人経営の協力会社は、重要な戦力であり、今後取引をやめるわけにもいかず、現在検討中である」(東京都、舗装工事)
「販売管理システムの大幅な変更で、大きな設備投資が必要となり、経営的にも大きな負担となる。政府の助成制度などを期待したい」(北海道、食料・飲料卸売)

免税事業者との取引、41.5%が現時点では「わからない」

   さらに調査では、来年10月のインボイス制度開始後における自社と免税事業者(※)との仕入れ取引について聞いたところ、「経過措置期間は取引する」と考えている企業は24.9%、「経過措置期間にかかわらず取引する」は26.2%だった。経過措置期間には、51.1%の企業が取引を続けると答えた。【図表3】

(図表3)免税事業者との取引(帝国データバンク)
(図表3)免税事業者との取引(帝国データバンク)

   (※)免税事業者=消費税の課税期間に係る基準期間に、課税売上高が1000万円に満たない事業者のこと。主に個人事業主や個人経営などの小規模事業者が該当し、インボイス制度が導入されることで大きな影響を受けるとされる。

   企業からは、

「中小企業としては、免税事業者と取引しないと業務に支障をきたすため、取引せざるを得ない」(静岡県、金属容器等製造)

といった声があがっている。その一方で、

「基本的に免税事業者との取引は行わない。他の事業者への切り替えを検討中」(山口県、冷暖房設備工事)

とあるように、「取引しない」と答えた企業も7.5%あった。

   また、制度開始後の免税事業者との取引について、「わからない」と答えた企業は41.5%。現時点で、多くの企業が対応を決めかねているようすがうかがえる。

   なお、調査は、全国2万6752社を対象に、2022年10月18日~31日に実施。有効回答企業数は1万1632社。回答率43.5%。