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苦悩する経営者...必要な資質は「本質を見抜く力」!...それなのに、経営者となるための「トレーニング受けてない」が6割超

   これからの経営者に求められる資質とは、なんだろう――。そんな疑問を解決するヒントになればと、日本能率協会(JMA、東京都港区)が「トップマネジメント意識調査2022」を実施した。2022年12月7日の発表。

   社会や経営環境の変化が激しい時代に、組織の先頭に立って変革をけん引していく経営者として認識すべき経営課題や、これからの経営者に求められる要件、経営者・役員のためのトレーニングのあり方などを明らかにする目的がある。

  • 経営者に求められる資質とは?(写真はイメージ)
    経営者に求められる資質とは?(写真はイメージ)
  • 経営者に求められる資質とは?(写真はイメージ)

変化の激しい時代は「柔軟性」がある人が強い!

   調査は、JMAが開いている役員・経営幹部向けの研修プログラムの受講者を対象(2022年7月14日~10月26日に実施。有効回答者数は278人)に聞いた。

   これからの経営者に求められる資質として、JMAが28項目を提示。「特に重要であると思われるもの」「自身の強みであると思われるもの」を、それぞれ3つを選択してもらった。

   その結果、【図1】のようになった。

   特に重要であると思われる資質の第1位は「本質を見抜く力」の41.4%。第2位は「変化への柔軟性」で37.4%、第3位は「イノベーションの気概」で24.8%となった。

   いわゆる、VUCA(※)の時代にあって、これからの経営者には本質を見抜いて、変化に柔軟に適応し、イノベーションを実行していく気概が重要である、と考えられているようだ。

(※)Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性の4つを表す。変化が激しく想定外の事象が発生する、将来予測が困難な状態を指す。

【図1】これからの経営者に求められる資質として「特に重要であると思うもの」と「自身の強みであると思うもの」(28項目。3つまで選択)
【図1】これからの経営者に求められる資質として「特に重要であると思うもの」と「自身の強みであると思うもの」(28項目。3つまで選択)

   その一方で、「特に重要であると思うもの」と「自身の強みであるもの」を比べた結果をみると、経営者の苦悩がうかがえる。

   「本質を見抜く力」(「特に重要であると思うもの」41.1%、「自身の強みであるもの」18.7%)や、「イノベーションの気概」(前者が24.8%、後者は9.4%)と、両者の乖離が大きかったのだ。

   また、「特に重要であると思うもの」で第5位(20.5%)となった「ビジョンを掲げる力」は、「自身の強みであるもの」で6.1%となり、やはり大きなギャップが見られる。

   さらには、「論理的思考」を自身の強みに思っている人が20.9%だったのに対して、経営者の資質として重要と思っている人は7.2%と少ない。「人への興味・愛情」や「楽観性」も同様の結果となった。

   JMAは、「これからの経営者を育成していくにあたって、こうした資質をより一層強化していくことが必要であると捉えることができます」としている。

職務遂行に必要なスキルやマインド「準備ができていた」のは40.6%

   調査では、経営者となるためのトレーニングについて聞いている。

   現在の役職への就任を打診された時点で、その職務の遂行に必要な知識やスキル、マインドなどの「準備ができていたか」を聞いたところ、「準備ができていた」と答えた人は40.6%にとどまった。「準備ができていなかった」は34.5%だった。

   また、経営者として必要と思われる知識やスキルについて、「すでに身につけているもの」と「就任前にもっと身につけておけば良かったもの」を聞いたところ、「もっと身につけておけば良かった知識やスキル」の第1位は、「会社法・税法などに関する法律知識」の71.6%。次いで、第2位は「財務・会計に関する知識」で69.1%、第3位は「外国語によるコミュニケーション能力」の62.2%だった。

   一方、「すでに身につけている知識・スキル」の第1位は「リーダーシップに関するスキル」の59.7%、「プレゼンテーションスキル」の52.2%、「コーチングスキル」の45.0が続いた【図2参照】。

【図2】経営者に必要な知識やスキルとして「すでに身につけている知識・スキル」と「就任前にもっと身につけておけば良かった知識・スキル」
【図2】経営者に必要な知識やスキルとして「すでに身につけている知識・スキル」と「就任前にもっと身につけておけば良かった知識・スキル」

   ほかに、「これまでに経営者となるためのトレーニングを受けたことがあるか」も聞いた。それによると、「受けてきた」と答得た人は37.8%と4割を下回っているのに対し、「受けていない」が6割超の61.5%にのぼる結果となった。

   また、「まったく受けていない」(14.7%)と「無回答」(0.7%)を除く84,6%の人に、「これまでに受けたことのあるトレーニング機会」(複数回答)を聞くと、第1位は「社外の経営幹部育成研修の受講」で52.3%。次いで、第2位は「戦略・ビジョン策定プロジェクトへの参加」で50.6%、第3位は「社内の経営幹部育成研修の受講」で49.4%となった。

   調査からは、経営幹部候補を計画的に育成し、役員・経営幹部として必須の経営知識を習得する機会を、会社が用意することが重要であることがうかがえる。

   日本能率協会 経営研究主幹で「新任執行役員セミナー」コーディネーターの曽根原幹人氏は、

「経営者となるためのトレーニングを受けていない方が多数となっていること、特に法務や財務・会計など、経営に必須の知識の習得が不足していると、役員・経営幹部自身が感じていることが浮き彫りとなりました。
とりわけ上場企業はコーポレートガバナンス・コードにおいて、各取締役の知識、経験、能力などを一覧化した、いわゆるスキル・マトリックスを開示することや役員を対象としたトレーニング機会を提供することが要請されていますが、企業の競争力や価値創造力の向上に向けて、こうした取り組みを一層強化していくことが急務となっていることが確認できたと思います」

とコメントしている。