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「もう二度と、週休2日に戻れない」 海外の週休3日制「実験」、好意的な結果に...英国では賛同企業も増加中、世界的トレンドとなるか?(井津川倫子)

   2022年6月から英国で行われていた週休3日制の「実験」が終了となりました(参考:「給料満額で休みだけ増える!」 英国で「夢のような」週休3日の実験が始まった!)。

   2023年2月に予定されている結果発表を前に、新たに企業100社が参加する「週休3日キャンペーン」が始まるなど、なんと「賛同」の動きが広がっています。

   お給料はそのままで休日が1日増える、夢のような今回の「実験」。参加者からは「もう二度と、週休2日には戻れない」といった声が聞こえてきます。週休3日が現実になる日は近いのでしょうか...。

  • 海外の週休3日制「実験」、どうなった?(写真はイメージ)
    海外の週休3日制「実験」、どうなった?(写真はイメージ)
  • 海外の週休3日制「実験」、どうなった?(写真はイメージ)

「2030年までに、週休3日制は当たり前になる」は本当なのか?

   2022年6月から半年にわたって実施されていた「英国版週休3日制」の実験が終了しました。これまでも米国やアイルランドで小規模な実験は行われていましたが、約70企業3000人が参加した「世界最大規模」の実験結果に、世界中の注目が集まっています。

   英国の実験は、「お給料はそのまま」で「休日を増やし」、「生産性を維持する」ことをお題目にしていましたが、果たして結果はどうだったのでしょうか? 「週休3日制」導入の命運を握る公式発表を前に、新しい動きが報じられています。

A hundred UK companies sign up for four-day work week with no loss of pay
(英国企業100社が、給料を減らさずに週休3日を導入する動きに加わった:英ガーディアン紙)
four-day work week:週休3日制

   おさらいになりますが、英語で「週休3日制」「four-day work week」(週に4日働く)です。休みの日数をカウントする日本語と、働く日数をカウントする英語との違いが面白いですが、英語バージョンの方が「4日だけ働く(残りの日は働かない)」という強い意志が伝わってくる気がします。

   ガーディアン紙が報じているのは、合計で2600人の従業員を抱える英国企業100社が、新たに週休3日制を求めるキャンペーンに参加した、というニュース。「実験」効果を踏まえた上で、より強く「週休3日制」のメリットを発信して他企業に広げていこう、という狙いのようです。

   記事では、半年間の「実験」に参加した経営者や従業員の声を紹介していますが、週5日働く「週休2日制」は、前時代の「hangove」(遺物)だ、自分たちが「週休3日制」を広げる「vanguard」(先駆者)になろう、といった熱いコメントがあふれています。

   さらに、「週休3日制」をめぐる議論は、「19世紀に週休2日制が導入された時も同じような動きがあった」とする歴史家の指摘も紹介。「2030年までには、週休3日制は当たり前になるだろう」と大胆な予測すらしています。

   今回の「週休3日制」推進キャンペーンには、コンサルティング業やIT企業、マーケティング企業といった比較的「週休3日制」にトライアルしやすいとされるサービス業だけでなく、新たに製造業や建設業も加わっているとか。

   19世紀に週休2日制を「発明」したのは、英国人だとされています。世界に先駆けて「週休3日制」推進に意気込む姿から、「働き方の歴史を変える」といった英国人の気概とプライドが伝わってきました。

「週休2日に戻すなら、給料50%アップが必要!」

   「英国版週休3日制」の「実験」については、参加した従業員や経営者の反応だけでなく、生産性などを分析して、2023年2月に発表される予定ですが、先日、英国に先駆けて米国とアイルランドで実施された実験結果が公表されて、話題を呼んでいます。

They'll never return to 5 days-or only with a huge pay bump
(二度と週休2日には戻らない、もしくは大幅な報酬アップが必要)

   米国とアイルランドで実施した「実験」は、約30社、900人が参加する小規模なものでした。それでも公表されたアンケート結果からは、「週休3日制」に対する従業員の受け止め方がひしひしと伝わってきます。

   報道によると、参加者のうち97%が「そのまま週休3日制を続けたい」と回答し、週休2日に戻りたいという回答はゼロだったそうです!

   さらに、回答者の42%が、週休2日に戻すなら26%から50%の「pay bump」(給料増額)が必要、と回答するなど、週休3日制への強い思いが伝わってきます。

   同じく経営側も、「週休3日制」のプラス効果を享受できたようです。「実験」に参加したのは小規模企業が多かったこともあり、人材を引きつけるリクルート効果や、従業員の欠勤が減少するなどの「人材維持」効果があったと報告されています。

   経営側も従業員も、双方が満足する「win-win」に思える「週休3日制」ですが、あまりにも満足度が高いだけに、一度足を踏み入れたらもう元には戻れない危険を伴っているように思えます。

   「もう二度と週休2日に戻れない」社員が増えるとすると、軽い気持ちでは「実験」に参加できないと、二の足を踏む企業も増えそう。従業員の価値観が変化するなか、企業の覚悟が試されています。

   それでは、「今週のニュースな英語」「four-day work week」(週休3日制)を使った表現をご紹介します。旬なテーマですから、使えるようにしておきましょう。

The pros and cons of a four-day work week
(週休3日制の長所と短所)
※「pros and cons」(長所と短所)も重要ワードです。

Four-day work week may soon be a reality
(週休3日制は、まもなく現実になるかもしれない)

US, Ireland four-day work week pilot was huge success
(米国とアイルランドの週休3日制実験は、大きな成功を収めた)

   面白かったのは、インフレに悩む英国企業にとって、「four-day work week」(週休3日制)はインフレ手当や賃金増に代わる従業員対策になる、という見解です。臨時手当や追加賃金を負担するよりも、「週休3日制」を導入する方が双方にとってハッピーだとしたら、世界的インフレを背景に、一気に広がるかもしれません。(井津川倫子)