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卓越した経営者とはどんな人?...調査結果1位は「経営の本質についての考え遺した」あの人物

   「卓越した経営者」であると思われる人物は――。

   日本能率協会(JMA)が実施しているトップマネジメント研修プログラムの受講者を対象に実施した意識調査の結果が出た(有効回答者数は278人。2022年7月14日~10月26日に実施)。

   それによると、第5位に渋沢栄一氏、第4位はスティーブ・ジョブズ氏、第3位は本田宗一郎氏、第2位に松下幸之助だった。

   納得の顔ぶれだが、その第1位には今夏に90歳で他界した、京セラやKDDIの創業者、稲盛和夫氏だった。そのワケは......。

  • 卓越した経営者とはどんな人?(写真はイメージ)
    卓越した経営者とはどんな人?(写真はイメージ)
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経験の中で体得した経営の要諦「経営12か条」

   調査では、もっとも卓越した経営者であると思う人物を、一人をあげてもらった。その結果、第5位は渋沢栄一氏(11票)、第4位はスティーブ・ジョブズ氏(13票)、第3位は本田宗一郎氏(14票)、第2位に松下幸之助氏(44票)。そして、第1位は稲盛和夫氏(50票)だった。

   稲盛和夫氏は、1959年に京都セラミツク(現、京セラ)を設立し、ファインセラミックスの技術で成長した。社長、会長を経て、1997年から名誉会長を務めた。

   また、電気通信事業の自由化に即応して2000年にDDI(第二電電)を設立。その後の合併でKDDIとなり、取締役名誉会長に就任、01年6月には最高顧問となる。さらには10年2月、政府の要請を受けて、経営破たんした日本航空(JAL)の再建を託された。13年に名誉会長、15年に名誉顧問となった。

   その独特な経営管理手法は「アメーバ経営」と呼ばれ、また倹約家としても知られる。その一方で1983年からは、1万5000人もの経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として、経営者の育成に心血を注いだ(2019年末まで)。遺した名言も数多い。

「人生とはその『きょう一日』の積み重ね、『いま』の連続にほかなりません」
「世の中、チャレンジしているうちは失敗はない。あきらめた時が失敗である」
「現在の能力でできる、できないを判断してしまっては、新しいことや困難なことはいつまで経ってもやりとげられません」
「平凡なことを完璧にやり続けることで胆力がつく」
「集団、それはリーダーを映す鏡なのです」

   今回の調査では、これからの経営者に求められる「資質」についても聞いており、その結果は「本質を見抜く力」(41.4%)が第1位となった。JMAは、J-CASTニュース 会社ウォッチの取材に、次のように解説する。

「稲盛氏は、経験の中で体得された経営の要諦を『経営12か条』としてまとめられていますが、社会への責務、人や組織に対する洞察、リーダーとしての在り方など、まさに経営の本質についての考えを遺されていることが、今回の評価につながっているものと考えます」

経営者に求められる「3つの資質」を有するスティーブ・ジョブズ

卓越した経営者であると思われる人物(上位10人。日本能率協会調べ)
卓越した経営者であると思われる人物(上位10人。日本能率協会調べ)

   続いて、第2位には、パナソニックの創業者の松下幸之助氏。第3位が本田技研工業の創業者、本田宗一郎氏と、こうした経営者ランキングのいわば「常連」が名を連ねる。

   第4位には、米アップルの共同創業者の一人で同社のCEO(経営最高責任者)を務めたスティーブ・ジョブズ氏が入った。JMAは、こう話す。

「ジョブズ氏は、顧客が求めている本質的な価値とは何かを見抜き、変化を自らつくり出し、イノベーションを実現されたという、『これからの経営者に求められる資質』の調査結果のトップ3の資質を有していました。それらが評価されたものと思います」

   第5位には、2024年からの新一万円札の顔となる渋沢栄一氏。「道徳経済合一説」を説き続け、第一国立銀行(現、みずほ銀行)をはじめ、現在の清水建設や東京製綱、帝国ホテルなど、生涯に約500もの企業に関わったとされる。

   また、約600の教育機関、社会公共事業の支援や民間外交にも尽力した。2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で注目を集めた。

「現役」が第6位以下に集まったワケとは?

   第6位以下には「現役」の名も並ぶ。

   6位は、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長執行役員の孫正義氏。第7位には1973年に28歳で日本電産を創業した同社の代表取締役会長兼CEOの永森重信氏が入った。

   同じ7位の盛田昭雄氏は、井深大氏とともに電機大手のソニーの創業者の一人で、独創性の高い、革新的な商品を世に送り出すことでソニーブランドの人気を確立した。

   富山県出身で、YKKの創業者の吉田忠雄氏も7位。「ファスナーは壊れなければよし、壊れたらダメ」の言葉を遺し、ファスナーの生産でYKKを世界的な企業に育て上げた。

   第10位には、2人。トヨタ自動車の代表取締役執行役員社長兼CEOで、自身もハンドルを握るレーシングドライバーである豊田章夫氏。それから、伊藤忠商事会長・社長の丹羽宇一郎氏となった。丹羽氏は2010年6月から12年12月まで、中国駐箚特命全権大使を務めてもいた。

   JMAは、松下幸之助氏や本田宗一郎氏ら「常連」が、「現役」の孫正義氏や豊田章夫氏などを抑えて上位を占めることについて、

「現役の経営者は、まだ歴史的な評価が定まっていないことが背景にあるのではないでしょうか。松下幸之助氏や本田宗一郎氏には、戦後の混乱期のなかで事業を興し、大きく発展させ、次の世代に遺したという歴史的な裏付けがあります」

と、評価した。

ランク外には意外なあの人の名が!

   トップ10からは漏れたものの、「誰もが聞いたことのある、知っている名前が多く並んでいました」と、JMAは言う。

   なかでも印象的だったのが、江戸幕府を開いた歴史上の人物「徳川家康」だ。「戦国時代を勝ち抜き、泰平の社会をつくり出した功績が、ある意味で経営にもつながるものと評価されたようです」(JMA)。

   こうした結果から、JMAは

「本質を見抜き、変化に柔軟に適応し、イノベーションを生み出す経営者。情熱をもって、ビジョンを掲げ、その実行に向けて腹を括って取り組むことができる経営者が挙がっています。今回、ご回答いただいた役員・経営幹部のみなさんは、VUCAともいわれる時代にあって、新たな成長をつくり出す経営者になりたいと考えているように思います」

と話した。

   なお、この調査はJMAのトップマネジメント研修の受講者を対象に、2022年7月14日~10月26日に実施した「これからの経営者に求められる資質」などを聞いた「トップマネジメント意識調査 2022」の中の質問項目の一つ。有効回答者数は278人。