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2022年に上昇した株...トップは大阪チタニウム、上位に非鉄金属や卸売 一番下がったのは日医工

   2022年12月30日、東京証券取引所の大納会で日経平均株価は、2万6094円50銭で引けた。終値は前日比83銭高で、3営業日ぶりに小反発して終えた。小幅な動きを繰り返す、今年を表すような落ち着かない値動きだった。

   1月4日に終値2万9301円79銭ではじまった寅年の日経平均株価は、翌5日に年初来高値の2万9338円16銭をつけると、3月9日には2万4681円74銭の安値を記録。1年で10.9%の下落だった。

   そうしたなか、マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザーの益嶋裕氏が東証プライム市場の2022年の上昇銘柄トップ30をまとめた。

  • 2022年に上昇した株は?
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波乱の寅年「千里を走った」

   2022年の株価は、まさに波乱の1年といっていいだろう。「寅が千里を走る」年だった。

   今年の株式相場を振り返ると、日経平均株価は大発会からの高値圏を突き抜けることなく、おおむね2万6000~2万8500円の狭いボックス圏での推移で終始。3万円を目前に迫ったものの、あと一歩とどかず、もどかしい相場となった。

   株価が乱高下した原因は、ロシアによるウクライナ侵攻や日米の金融政策の違いで生じた急激な円安と、世界的なインフレにある。海外事情にひどく影響されたといえそうだ。

   そうしたなか、マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザーの益嶋裕氏がまとめた「2022年上がった株・下がった株 日本株銘柄フォーカス」(2022年12月5日発表)によると、今年に上昇した銘柄の第3位は、卸売業のKPPグループホールディングスで、その上昇率は198%だった(2021年12月30日終値と22年11月29日終値の比較)。1月4日の大発会で329円だった株価は、大納会の12月30日には791円となった。

   第2位には、「エヴァ」シリーズなどで知られ、遊技機の企画開発、販売を手掛ける円谷フィールズホールディングス。1月4日に532円だった株価は、なんと2727円まで上昇した。

   これを上回る上昇率を記録したのが、非鉄金属の大阪チタニウムテクノロジーズで、422%の上昇と驚異的な伸びをみせた。1月4日に795円だった株価は、11月9日に年初来高値の4850円まで上昇。大納会のこの日は3880円で引けた。

   同社は、高品質の金属チタンで世界首位。「チタンへの需要が急回復したことにより、業績がV字回復したことが好感され、大幅に上昇しました」(益嶋裕氏)。航空機向け多いことから、コロナ禍の行動制限が緩和されたことも後押ししたとみられる。

   非鉄金属では、東邦チタニウム(188%上昇)が第4位に、12位には99%上昇したフジクラが入った。

   卸売業や小売りのトレジャーファクトリー(第5位、150%上昇)などが上位に顔を出した。また、三菱重工業や三菱自動車工業といった円安進行が業績にプラスになった銘柄もランクイン。

   さらに、コシダカホールディングス、日本駐車場開発といった観光需要の回復が業績の追い風になりそうな銘柄もあるようだ。【図表:上がった銘柄ベスト30 東証プライム編を参照】

【図表】上がった銘柄ベスト30 東証プライム編(出所:QUICKデータよりマネックス証券が作成)※上昇率は2021年12月30日終値と2022年11月29日終値の比較
【図表】上がった銘柄ベスト30 東証プライム編(出所:QUICKデータよりマネックス証券が作成)※上昇率は2021年12月30日終値と2022年11月29日終値の比較

成長期待の高かったグロース小型株で、下落幅大きく

   一方、最も大きく下落したのは後発医薬品の日医工。78%下落した(2021年12月30日終値と22年11月29日終値の比較)。1月4日に725円だった株価は、大引けの12月30日には84円だった。

   2021年に不適正製造の発覚を受けて、業務停止処分となったことで業績が悪化。今年9月末には、356億円の債務超過に陥った。12月28日には、私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)の手続きが成立した。

   今後は企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と医薬品卸のメディパルホールディングスの支援を受け、経営再建を進める。

   ワースト2位は、企業のIR・SR(株主関連)活動を総合的に支援するコンサルティング・サービスのアイ・アールジャパンホールディングス。1月4日に6690円だった株価は、12月30日に1807円まで下落した。

   ワースト3位は、後払い決済のネットプロテクションズホールディングス。1月4日に1400円だった株価は大納会のこの日、479円だった。【図表:下がった銘柄ワースト30 東証プライム編を参照】

   マネックス証券の益嶋裕氏は、下落幅の大きい銘柄の多くが「成長期待の高かったグロース小型株で、成長期待の剥落から大幅な株価下落につながっている」と指摘。「期待先行で株価が上がっている場合、期待に業績が追いつかないと、このように大きく下落することになることはよくあります。成長株に投資をされる人は注意してほしいと思います」としている。

【図表】下がった銘柄ワースト30 東証プライム編(出所:QUICKデータよりマネックス証券が作成)※下落率は2021年12月30日終値と2022年11月29日終値の比較
【図表】下がった銘柄ワースト30 東証プライム編(出所:QUICKデータよりマネックス証券が作成)※下落率は2021年12月30日終値と2022年11月29日終値の比較

   さて、2023年の株式相場はどうなるのだろう――。益嶋氏は、「最大のテーマは、米国と世界経済の成長の鈍化がどの程度起こるかということでしょう」としている。

   米国のさまざまな経済指標が徐々に悪化しており、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が12月の連邦公開市場委員会(FOMC)から利上げペースを落とすことを示唆している。

「おそらく景気悪化は起こるでしょうが、FRBの金融緩和の期待が強まって相場を下支えするのではと考えています」

   コロナ禍の影響は不透明だが、国内では外国人観光客の来日が本格化。すでにかなり株価が上がった関連銘柄も多いが、「業績に本格的にプラス寄与するのは2023年になってからと考えており、来年、株価の上昇が期待できる銘柄もおおいにある」とみている。

   卯年の相場格言は「跳ねる」。

   第二次大戦以降、過去6回の卯年相場をみると、日経平均株価のベースで4勝2敗と良い戦績を残している。来たる2023年は、停滞の1年を経て大きく飛躍してほしいところだ。