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「仮想通貨」取引でよく目にする「AMM」って何だ?...今、注目の仕組みを解説【仮想通貨通信vol.1(前編)】

   こんにちは。学生トレーダーのブロックスタです。投資対象として仮想通貨に興味を持った私は、その技術の持つポテンシャルに惹かれ、いまではスマートコントラクトを利用した分散型アプリケーション(Dapp)の開発にも取り組んでいます。

   そんな私が、仮想通貨の話題をピックアップして、わかりやすく解説していきたいと思います。よろしくお願いします。今回は、仮想通貨の取引をしているとよく出会う言葉、AMM――自動マーケットメーカーについて取り上げます。

賢く運用するためにも、AMMを知っておこう

   仮想通貨の取引をしていると、「AMM」という言葉がひんぱんに出てきます。

   検索してみると、AMM(AutomatedMarketMaker)は「自動取引システム」とも訳され、トークンの需給を元に算出された現在の価格取引で簡単に取引ができるシステム――などとありますね。でも、なるほど、よく分からん...。そんなふうに諦めてしまっていませんか?

   2020年、このAMMを利用した取引所「Uniswap(ユニスワップ)」が注目を集めました。当時は、「DeFi(ディーファイ)元年」とも呼ばれ、投資家に莫大な利益をもたらしました。

   DeFi(ディーファイ=分散型金融)というのは、従来の金融サービスのように中央管理者が存在せず、自動で取引できる取引所のこと。そして今では、DeFiではAMMがスタンダードになっています。

   相場が活況なころは20%を上回る金利でドルのステーブルコイン(=価格の安定性を実現するように設計された仮想通貨)を安全に運用できるなど、今後も仮想通貨を賢く運用するうえで、AMMについて知っておくことは必須でしょう。

   せっかくの機会、なかなかちゃんと調べるのも億劫だったAMM。今後も大注目なので、AMMについて初心者にもわかりやすく解説していきます!

そもそもAMMとは?...「簡単、そして、効率的な市場の仕組み」

   ざっくりAMMを表現すると、「簡単、そして、効率的な市場の仕組み」と言えるでしょう。それでは、既存のものと一体どこがどう違うのでしょうか。

   現在主流の取引方法は、主に以下の2つ。

・市場を通じて投資家の売買注文をマッチングさせる方法
・AMMを利用し取引価格を決定する方法

   まず1つめの「市場を通じて投資家の売買注文をマッチングさせる方法」について、おさらいしてみましょう(ここでは便宜的に、「板取引」とよびます)。

   この方法は、株式や債券など、あらゆる金融商品の取引で用いられている方法です。

   価格や数量を指定し、「指値」注文を取引所に出す。すると、取引所内において、売り手と買い手をマッチングさせることで取引が成立します。binance(バイナンス)やbitFlyer(ビットフライヤー)などの「仮想通貨取引所」ではこの形式を利用しています。

   東京証券取引所やニューヨーク証券取引所(NYSE)で行われている株式取引の手法と同じで、こちらの方がイメージとしてわきやすいかもしれません!

   そしてもう一つが今回ご紹介するAMMを利用した方法。こちらは、売り手対買い手の取引ではなく、「流動性プール」内の仮想通貨の需給によって、決まった価格で取引する方法。

   需要が高まれば価格が上昇、供給が多くなれば価格が下落する。いわば、実際の経済のシステムと同じですね。

   AMMを利用した取引所では、細かな設定をすることなく、初心者でも簡単に取引できるという点で人気を集めています。

   なんだか仮想通貨の売買って難しそう...と感じている方にも、実は簡単にお使いいただくことができます。

   以上が2つの取引方法の違いになりますが、ちょっとイメージしづらかったかもしれません。そこで図解してみたものが以下のものです。大きな違いとしては、取引相手の違い、という点がありますね!

AMMのメリットは?

   それでは、AMMについて、なんとなくイメージできたところで、AMMにはどのようなメリット・デメリットがあるのかチェックしていきましょう(デメリットは【後編】で)。

   AMMを利用するメリットには以下の3つのメリットがあります。

(1)取引が簡単
(2)流動性が高く、大きな額の取引が行いやすい
(3)保有するコインで手数料が稼げる

具体的にはどのようなメリットなのか。1つ1つみていきましょう。

(1)取引が簡単

   やはり何と言っても、「簡単」という特徴は見逃せません。AMMを活用した取引所では、売買したい仮想通貨を選択肢と数量を入力するだけ。

   あとは、自動で取引価格が決まり、ボタンを押せば交換は完了です。

   どうしても仮想通貨や株式の取引はさまざまな設定をしなければならず、面倒なイメージがあります。ところが、AMMを活用した市場では、その必要はありません。

(2)流動性が高く、大きな額の取引がしやすい

   既存の「板取引」では、市場に発注されている買い注文と売り注文をつけ合わせることで、取引を成立させていました。

   USDCやイーサリアムなど著名な仮想通貨の取引では、多くの投資家が注文をしています。そのため、既存の「板取引」を採用する市場でも、問題はあまり起きません。

   しかし、無名の「草コイン」なんて呼ばれている、取引量の少ない仮想通貨は、事情が異なります。「板取引」で取引すると、市場に出ている注文が少なく、10万円分購入しただけでも価格を大きく動かしてしまうことも。

   実際、株式においてもグロース市場に上場している時価総額が極端に小さい銘柄などは、少額の取引を実行しただけで、市場を大きく動かしてしまうこともあり、取引のたびに大きく価格が変動しているのではとても面倒ですよね。

   一方、AMMを利用した取引所では、「流動性プール」と呼ばれる仮想通貨が大量に入ったプールを用意し、プール内の仮想通貨需給から仮想通貨の価格を自動計算します。

   大きな額の取引であっても、「板取引」と比べてAMMを活用した場合は、市場への影響は比較的軽微で、価格への影響を抑えることが可能です。

   仮想通貨の場合、時価総額の小さな銘柄がたくさんありますから、AMMを活用した取引所はとても相性が良いのです。

(3)保有している仮想通貨で手数料が稼げる

   実はAMMは取引を簡単に行えるというだけでなく、投資家に新たな収益チャンスをもたらしたという点でも注目されています。

   先ほど「AMMでは仮想通貨が大量に入った流動性プールに対して売買を行う」という言葉が出てきました。

   「じゃあ、流動性プールには誰が何のために仮想通貨を入れているの?」...そんな疑問が出てきそうですね。

   実はAMM搭載の取引所では、取引の際に徴収した取引手数料が流動性プールに仮想通貨を入れた投資家に分配されます。

   つまり、流動性プールに手持ちの仮想通貨を入れておくことで、収益を得ることが可能です。

   実際、うまく流動性を提供することができれば、1年間で資金を何倍にも増やすことが可能とあって、投資家から大きな注目を集めています。

   10万円分の仮想通貨を流動性プールに入れるだけで、1年で20万円、50万円と増えているかもしれない...そう考えるとワクワクしますよね!

   さて、ここまでAMM、そしてAMMを活用した取引所メリットについてお伝えしてきました。しかし、うまい話には裏がありデメリットも存在します。デメリットも知って、賢く運用をしたいですよね。

   つづいて、デメリットについては、<「仮想通貨」取引でよく目にする「AMM」って何だ?...今、注目の仕組みを解説【仮想通貨通信vol.1(後編)】>で取り上げたいと思います。(ブロックスタ)