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英語を使って仕事をしたい人へ...「実用英語」身に着けるには?

   英語の参考書、テキストは書店に行けば、山のようにあふれている。どれを選べばいいのか、わからないほどだ。

   本書「英語で仕事をしたい人の必修14講」(慶応義塾大学出版会)は、実用的な英語を習得するためのノウハウを学ぶ本だ。年も明けて、心機一転。英語をマスターし、英語を生かした仕事に就きたいという人にお勧めしたい。

「英語で仕事をしたい人の必修14講」(松崎久純著)慶応義塾大学出版会

   著者の松崎久純さんは、1967年生まれ。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科非常勤講師。南カリフォルニア大学東アジア地域研究学部卒。名古屋大学大学院経済学研究科修了。日本メーカーで、欧米市場、アジア市場を担当。その後、コンサルティング団体で、企業のグローバル化に関連した業務や国際機関を通じた海外人材の教育に携わってきた。

   現在は独立したグローバル人材育成の専門家・経営コンサルタントで、25カ国100都市での業務経験がある。著書に「英文ビジネスレター&Eメールの正しい書き方」「ものづくり現場の英会話ハンドブック」などがある。

   本書は、英語を身に付けて、国際的なビジネスパーソンになりたい学生や社会人、英語を使う仕事を自分のキャリアに取り入れたい学生や社会人のために書かれたものだ。

効果的な習得方法は、映像を見て会話を聞く

   第1講「イントロダクション」は、国際的なビジネスパーソンとして活躍したい人が、前提として知っておくべきことについて教えている。

   まず、英語には「ネイティブスピーカーの英語」と、「世界の共通語としてのSimple English(シンプル・イングリッシュ)」があり、私たちが学ぶのはシンプル・イングリッシュの方であるということだ。

   シンプル・イングリッシュとは、英語を母国語としない人たちが使う、イギリス語やアメリカ語と比べると、シンプルでやさしい英語になる。また、「簡単かどうか」の判断は、読んで理解できるかではなく、見なくても言えるか、あるいは書けるかを基準に考えるべきだ、と説明している。

   松崎さんが実際に見聞きしたエピソードには、耳を疑うようなものが少なくない。インドで工場を立ち上げる業務を担当する赴任者から「英語については覚えない方針」と聞かされ、驚いたという。

   すべて通訳任せが会社の方針で、そのために結構な金額を、電力会社に「賄賂」として支払い、平然だったというのだ。

   このように海外展開している企業でも、英語力が十分に備わっていない職場は多く、そうした企業では、従業員の取り組み姿勢にも問題があるようだ。

   効果的な習得方法を挙げている。それは、映像を見て会話を聞くこと。好きなシチュエーション・コメディ(シットコム)を選んで毎日1、2話見ることを勧める。

「ラムネ式」と「インテンシブ学習」のススメ

   読み書きについては、興味のある短い記事から始めて、継続することが大切だという。

   書くときは例文を写すのが基本だ。書く力、文章を仕上げる力は、日本と比較して英米ではスキル、あるいは能力として評価される傾向があるので、意識した方がいいそうだ。

   英文のビジネスレターやEメールの例文集があるので、机の上に置き、いつでも参照できるようにするのがコツだという。

   松崎さんは企業からグローバル人材の研修を請け負い、指導を依頼されたときには、はじめに受講者に英作文のテストを行うそうだ。

   「自己紹介」「休日の過ごし方」「趣味」などについて、30分か1時間ほど自由に書いてもらう。なぜ、こうしたテストをするかと言うと、英文の筆記テストをすると、受講者の英語力が一目瞭然にわかるからだ。

   さて、英語力の上達の方法として、「ラムネ式」というユニークな方法を提唱している。

   これは、ラムネの栓を開けるように、一気に英語を学ぶきっかけをつくり、学習するための勘所を身につけることだ。具体的には、フィリピンやシンガポールといった比較的近場で、英語を上手に話す人が多い国へ行き、何かをしてみることだという。欧米へ行くよりも時間もかからず、実行しやすい。

   何かをするとは、数日間、料理教室に通うとか、靴を探す旅をすることなど、何でもいい。必ず1人で行き、日本の誰かと連絡を取らず、SNSを見ずに、すべて英語でこなし切ったときに、それなりの達成感を感じるはずだという。

   もう1つのお勧めは、「インテンシブ学習」だ。こちらは、期間を決め、教材を集中的に学び、完全マスターすることで、実力の向上をねらうものだ。

   松崎さんは、「英語を使う仕事を望んでいれば、それが叶うことは多い」と書いている。2003年頃から、さまざまな製造企業でコンサルティングや研修業務を請け負ってきたが、英語がわかり、海外業務を志望する人材は不足しているという。

ビジネスの現場では、「丁寧な言葉遣い」も大切

   英語のさまざまなことを説いているが、心構えも大切なようだ。

   最終の第14講は「丁寧な言葉遣いを身につける」。まずは、返事の仕方に注意している。ビジネスの現場では、学生気分で「Yeah」と返事をするのは厳禁だ。ビジネスパーソンとしては、「Yes」と述べるのが常識だ、と戒める。

   ビジネスパーソンには、丁寧できちんとした話し方が必要であり、どんな言葉遣いをする人かを周囲は見ている、と注意する。

   このほか、英語表現についてのコラムや演習問題、電子辞書やインターネットの活用など実用的なテーマについても収めている。

   英語についての本は多いが、英語学習法についての本は珍しいので、紹介した次第である。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、2008年から継続して本書を授業で扱ってきたというから、実績は十分だろう。(渡辺淳悦)

「英語で仕事をしたい人の必修14講」
松崎久純著
慶応義塾大学出版会
2640円(税込)