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バブル期超えの過去最高を記録...東洋経済「熱狂のマンション」、ダイヤモンド「相続 生前贈与」、エコノミスト「投資のタネ」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

従来の価格水準を1段階引き上げた「新相場」に突入?

   「週刊東洋経済」(2023年1月7・14日号)の特集は、「熱狂のマンション 崖っぷちの戸建て」。目下、首都圏の新築マンション価格は、バブル期の最高値を上回る。マンション価格が下がらないのはなぜか? その背景に迫った。

   不動産経済研究所によれば、2021年の首都圏の新築マンションの平均価格は6260万円(前年比2.9%増)と、バブル期の水準を超えて過去最高を記録した。

   価格の高い駅近物件が増えているほか、東京23区の物件の割合が増えているからだ。勢いは衰えることなく、22年1~6月期の平均価格は6510万円にまで上昇。それでも消費者の購買意欲は衰えず、新築マンションの売れ行きは好調なままだ。

   新築マンションの価格上昇が続くのは、原価高騰だけが理由ではなく、大手デベロッパーを中心とする供給側が、「売り渋り」をしているからだという。

   首都圏の新築マンションの供給戸数は、00年の9.5万戸をピークに、21年には3.3万戸と3割強にまで縮小している。大手は利益を大幅に減らしてまで新築マンションを売り急ぐ必要はなく、需給バランスを調整しながら、小分けに販売するようになっている、と指摘する。

   そのため、新築マンションは消費者の手が届かない価格水準に達しつつある。21年の価格(70平方メートル換算)は、平均年収の11倍を超えた。金融機関による個人への住宅ローンの貸出金額は通常、年収の7倍以内が目安というから、これは夫婦がダブルローンを組まないと手が届かない水準になっている。

   それどころか、従来の価格水準を1段階引き上げた「新相場」に突入しようとしているというのだ。その兆候は、用地の仕入れ現場に現れているという。相場よりも2~3割ほど高い価格で、デベロッパー各社は競争入札の土地を落札している。したがって今後、供給される新築マンションは首都圏の郊外でも坪単価300万円を超えるだろう、と関係者は予想する。

   高くても売れるのは、「低金利かつ価格の先高感があるから、今、背伸びをして買っているのではないか」と東京建物取締役常務執行役員の神保健氏は語っている。さらに、「コロナ禍をきっかけに快適な住まいで過ごしたいというニーズが増し、住宅への関心が高まったことも、販売を押し上げる要因になっている」とも。

◆戸建ては一足早く「バブル」崩壊

   一方の戸建ての需要は冷え込み、一足早く「バブル」が崩壊したという。

   住宅業界は20年以降、コロナ禍でバブルのような在宅需要に沸いた。初めて住宅を購入する1次取得層を中心に、「狭小なマンションより広い戸建て」を求める特需が生まれた。

   しかし、世界的な資材価格高騰を受け、21年ごろから住宅販売価格が高騰。その影響か、注文住宅の受注は5期連続でマイナスが続いている。

   大和ハウスは23年3月期通期で見込んでいた国内戸建ての販売棟数7400棟を6100棟に下方修正。国内戸建ての売り上げ予想も、3420億円から3200億円に減額した。

   分譲戸建て最大手の飯田グループホールディングスは、全国の販売棟数が上期(22年4~9月)の当初計画2万2000棟に対して、実績が1万9346棟にとどまった。

   特集では、一躍脚光を浴びている中古住宅の再生ビジネスや中古マンションを購入する際の注意点などをまとめている。

   新築が「夢のマイホーム」になりつつある今、中古物件が熱い視線を集めているわけだが、さまざまな「盲点」があるようだ。購入を計画している人にとって、貴重なアドバイスになりそうだ。

23年は、相続「駆け込み節税」のラストイヤー

   「週刊ダイヤモンド」(2023年1月7・14日号)の特集は、「相続 生前贈与」。65年ぶりに改正されるルールへの備えを指南している。

   ルール改正で、生前贈与を使った節税術は今後大幅に封じられることになった。だが、新ルールの開始は2024年1月1日に決まった。したがって、移行期間の23年は、「駆け込み節税」のラストイヤーとなる。ポイントをいくつか指摘している。

〇相続財産への加算期間を相続3年前から7年前へと延長
〇暦年贈与の基礎控除「110万円」は改正の対象外で制度は存続
〇孫、子供の配偶者など、相続人以外への生前贈与は改正の対象外
〇教育資金の一括贈与は特例を3年間延長して26年3月まで存続
〇結婚・子育て資金の一括贈与は特例を2年間延長して25年3月まで存続
〇タワマン節税は「適正化を検討」と明記し、増税を予告

   今回の改正で特に影響が出るのは、資産3億円超の富裕層だと見ている。

   相続税と贈与税の負担率を比べると、資産が3億円以下の場合は贈与税の負担率の方が高いものの、3億円を超えると贈与税の負担率の方が逆転して低くなり、生前贈与をして贈与税を支払った方が有利になるからだ。

   数にすると7%と限られた資産3億円超の富裕層が、改正のターゲットと見られる。

   もう1つの特集も目が離せない。「日本電産 永守帝国の自戒」という特集だ。日本電産の内部で、永守重信会長兼CEO(最高経営責任者)に対し、社員が対応する作法を説いた手引書を入手し、内容を詳しく紹介している。

   「お疲れ様です」や「さん付け」は厳禁、といった内容で、カリスマ経営者への過度の忖度が、組織に異様なひずみをもたらしている、と指摘している。

   さらに、「大株主50社リスト」を公開し、親密株主の存在が「なれ合いガバナンス」を助長している、と批判。社長解任事件で注目された同社に鋭く切り込む内容だ。

日本株は「宇宙」、「インバウンド」に注目

   「週刊エコノミスト」(2023年1月10日号)の特集は、「2023 投資のタネ」。2023年注目の投資テーマと企業を展望している。

   2023年の株式市場は、比較的明るい展開になる、と予想している。

   その先陣を切るのが、宇宙ベンチャー企業のispace(アイ・スペース)だ。同社は、自社開発した無人月面着陸船を米スペースX社のロケットに搭載。22年12月11日に米フロリダの発射場から打ち上げられた。計画では23年4月に月面着陸に挑戦する予定だ。成功すれば、民間では世界初となる。

   22年度内にも東京証券取引所に上場する可能性があるとして、日本の宇宙産業が株式市場でもテーマとして急浮上しそうだ、としている。

   このほかのテーマとして、インバウンド(訪日外国人)とリオープン(経済再開)、挽回と回復、日本の技術力の再評価を挙げている。

   テーマごとの主な注目企業を列挙すると、こうなる。

〇宇宙産業 日本特殊陶業(全固体電池)、スズキ(アイ・スペースに出資)
〇インバウンド JR東海、ANAホールディングス、西武ホールディングス
〇生産回復 トヨタ自動車、日産自動車、SUBARU、ファナック、安川電機
〇新興企業 イーディーピー(人工ダイヤ)、ビジョナル(ビズリーチを運営)

   緩やかなインフレと金利上昇が予想される日本。芳賀沼千里氏(三菱UFJ信託銀行受託運用部チーフストラテジスト)は、長期的に日本が標準的な普通の経済に向かう過程で、取るべき投資スタイルについて書いている。

   銘柄選択では「無視された銘柄」に注目している。伝統的な産業や小型株には無視された銘柄が少なくないとし、訪日旅行客関連の内需関連銘柄が対象になる。

   「良いインフレ」経済になり、日本株は相対的に魅力があるという。(渡辺淳悦)