J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

地方公務員の「懲戒処分」が増加、行為別の最多は「一般服務違反等」...「分限処分」は6年連続増、理由のほとんどは「心身の故障」(鷲尾香一)

   地方公務員の懲戒処分が2021年度には増加に転じ、分限処分者は6年連続で増加し、3万人台となった。総務省が2022年12月26日に公表した「令和3年(2021年)度における地方公務員の懲戒処分等の状況」で明らかになった。

行為別では「一般服務違反等関係」1945人(49.6%)が最多

   さっそく、詳しく見ていく。まずは、懲戒処分について。令和3年度中に懲戒処分を受けた職員数は3923人で前年度比227人(6.1%)増加した。都道府県等では1455人(前年度比265人増)、市町村等では2468人(同38人減)だった。

   2012年度から5年連続で減少した後、2018年度、2019年度と増加したが、2020年度には前年度比548人(12.9%)減少したものの、2021年度には再び増加に転じた。(表1)

   地方公務員法第29条では、懲戒処分について、「職員の一定の義務違反に対して科せられる制裁としての処分」としており、(1)法律、条例、規則、規程に違反した場合(2)職務上の義務違反および職務怠慢の場合(3)全体の奉仕者に相応しくない非行があった場合に、免職、停職、減給、戒告の処分を行うことができる。

   処分の種類別では、免職439人(前年度比3人増)、停職751人(同21人増)、減給1296人(同86人増)、戒告1437人(同117人増)となっている。

   行為別では、「一般服務違反等関係」1945人(49.6%)が最も多い。次いで、「交通事故・交通法規違反」795人(20.3%)、「公務外非行関係」669人(17.1%)、「監督責任」337人(8.6%)、「給与・任用関係」93人(2.4%)、「収賄等関係」84人(2.1%)の順となっている。

事由別では「心身の故障の場合」3万1521人(99.0%)が最多

   一方、分限処分について。令和3年度中に分限処分を受けた職員数は3万1827人であり、前年度に比べて3020人(10.5%)増加している。

   都道府県等では1万2506人(対前年度比856人増)、市町村等では1万9321人(同2164人増)となっている。分限処分者数は2016年度から6年連続で増加を続けており、2021年度にはついに3万人台に増加した。(表2)

   地方公務員法第28条では、分限処分について、「職員が一定の事由により、その職責を十分に果たすことが期待しえない場合に、職員の意に反する不利益な身分上の変動をもたらす処分」としており、(1)免職(2)降任(3)休職(4)降給することができる。

   種類別にみると、免職80人(対前年度比168人減)、降任104人(同14人減)、休職3万1628人(同3195人増)、降給15人(同7人増)となっている。

   事由別では「心身の故障の場合」3万1521人(99.0%)が最も多い。次いで、「刑事事件に関し起訴された場合」101人(0.3%)、「条例に定める事由による場合」86人(0.3%)、「職に必要な適格性を欠く場合」60人(0.2%)、「勤務実績が良くない場合」41人(0.1%)、「職制等の改廃等により過員等を生じた場合」18人(0.1%)の順となっている。

   なお、懲戒処分は違反行為に対して行われるもので、制裁(懲らしめ)の意味合いが強い一方、分限処分は職責を果たせない場合に行われるものだ。公務の適切な運営、効率性を保つことを目的としている。

退職金の支給...「懲戒処分」の免職ではない、「分限処分」の免職ではある

   このため、両者の最も重い処分である免職(職員としての身分を失わせる処分)においても、多くの場合、懲戒処分の免職では退職金が支給されないのに対して、分限処分では退職金が支給される。

   近年の免職者数を見ると、懲戒処分での免職はほぼ横ばいで推移しているが、分限処分の免職は2012年度の939人から2021年度には80人まで大きく減少している。(表3)

   地方公務員といえども、国家公務員同様に公僕に違いなく、税金で生計を立てており、公衆に奉仕するのが仕事だ。あまりにも多くの懲戒処分者と分限処分者が発生していることは、許されるものではない。地方自治が衰退しているといわれる現在、まず地方公務員の姿勢を正すことから始める必要がありそうだ。