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タイム誌が予言...「2023年は週休3日の年になる」!? 欧米で広がるこのムーブメント、いよいよ日本にもやってくる?(井津川倫子)

   コロナ禍ですっかり定着した「work from home」(在宅勤務)。感染状況が変化するにつれて、オフィスへの出社と在宅勤務を組み合わせた「ハイブリッド型」が広がっていますが、ここにきて、がぜん注目が高まっているのが「four day work week」こと「週休3日制」をめぐる動きです。

   これまで欧米諸国を中心に、給料や生産性は現状維持で(100%)、勤務時間のみ80%に削減する「100-80-100」の実験が行われてきました。過去最大規模で実施された英国版の報告がまもなく公表されますが、一足早く、高級誌「タイム」が「2023年は週休3日の年になる」と予言(!)するなど、ムーブメントの兆しが見えてきました。私たちも「週休3日」の恩恵にあずかる日は近いのでしょうか?

  • 「週休3日」の働き方は定着するか?(写真はイメージ)
    「週休3日」の働き方は定着するか?(写真はイメージ)
  • 「週休3日」の働き方は定着するか?(写真はイメージ)

企業側も「こんなにメリットがあるなんて」とびっくり! 売り上げアップも!

   近年、新しい働き方として注目を集めている「four day work week」(週休3日)。文字通り「週に4日しか働かない」、つまり「3日は休む」という勤務形態ですが、コロナ禍で広がった在宅勤務の後継モデルとしての導入が広がっています。

   これまでは、限られた地域や企業に限定された「実験」の色合いが強かったのですが、2022年末に米国とアイルランドでの「実験結果」が公表されたころから、本格導入の動きが見られるようになりました。

   このところ、「four day work week」(週休3日)に関する報道も確実に増えていて、新しいフェーズに入ったことは間違いなさそうです。タイム誌は、「2023年はついに週休3日の年になる」と報じています。

Why 2023 could finally be the year of the 4-day work week
(2023年がついに週休3日の年になる理由:TIME)

   記事では、2023年に「実験」の域を超えて「本格導入」が広がる理由がいくつか挙げられています。なかでも、一番説得力があったのは「It's good for business」(企業にとってメリットがある)というものでした。

   給料がそのままで休日だけ増える「週休3日」を体験した従業員がハッピーなことは想像に難くありません。家族と過ごす時間が増えたり、趣味やボランティアに勤しんだりしたことで「満足度が高まった」「生活にゆとりが生まれた」という声がたくさん紹介されています。

   「どんなに賃金をはずまれても、もう元の週休2日には戻れない」といった生々しい本音も理解できますが、「週休3日」を推奨する団体でさえ「驚いた!」とコメントしているのは、企業側の好意的な反応でした。

   報告によると、「週休3日」を導入することで、企業はあらゆる面において「競争上優位」になったそうです。まず、優秀な人材を獲得できるといった採用面での優位性が頭に浮かびますが、タイム誌は「メリットはそれだけじゃない」と強調しています。

   実験に参加した企業は平均して8.14%も売り上げが伸びていて、なんと、前年同時期と比べて37.55%増だった、という結果が出ています。実際、「週休3日」を導入したあるPR会社は、生産性が「gone through the roof」(天井知らずに上がった!)とのこと。すべての従業員がそれぞれのKPIを達成できただけでなく、「Productivity has increased 25 or 30%」(会社全体の生産性が25~30%も上がった)というのは驚きです。

   ちなみに、同社の生産性が飛躍的に向上した一番の理由は、「ムダな会議をなくしたこと」だそうです。以前はクライアントとのZoom会議にたくさんのスタッフが参加。ただ座って何時間も話を聞くだけ、の会議も多かったとのこと。会議の代わりに「この課題に対する解決策を示して」とメールを送る方法に変えたところ、効率が上がったそうです。

   こうした具体的な成果や取り組みが報じられることで、他企業への影響は広がっていくことでしょう。じわじわと、それでいて確実に、世界的なムーブメントに育っていくことを願います。

法案で「週休3日」を推奨しよう、という行政の動きも!

   「週休3日」を導入する動きは、ビジネス界の外にも広がっています。

   学校を「週休3日」にする「four day school week」の事例もいくつか目にするようになりました。まだ実験の粋を出ないようですが、教師不足の解決策になると期待する声や、子どもと一緒に過ごす時間が増えたと、好意的に受け止める保護者の声が紹介されています。

   一方、学習時間が短くなることで、子どもの学力への影響を懸念する声もあります。ビジネスのように効果や利益がすぐに数字に表れないので、慎重な検証が求められそうです。

   そんななか、なんと、法案で「週休3日」を推奨しよう、という行政の動きが出てきました。

The state of Maryland is pushing for a 4-day work week
(メリーランド州は、週休3日を積極的にプッシュしている)

   米国のメリーランド州が、「週休3日」を導入する企業や組織に対して、税額控除などの優遇策を提供するというニュースが話題になっています。従業員が30人以上在籍する民間企業や公的機関はすべて対象で、「住民のクオリティオブライフ」を向上することを目的にしているとか。

   同州の担当者は、「2022年に行われた『実験結果』に触発された」とコメントしていますから、報道が活発になるにつれて、こうした動きはどんどん広がっていくことでしょう。タイム誌が「There's no going back」(もう戻れない)と報じているように、「週休3日導入」への道のりは着々と近づいているのかもしれません。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「productivity」(生産性)を使った表現です。ビジネスの頻出単語ですから、使い方を覚えておきましょう。

Microsoft's OpenAI could boost work productivity
(マイクロソフト社のOpenAIは仕事の生産性を一気に高める可能性がある)

5 ways to improve your productivity
(あなたの生産性を上げる5つの方法)

We have to find a new tool to increase productivity
(生産性を上げる新しいツールを見つけなければいけない)

   先日、職場の先輩と話をしていたら、「僕が入社したころは、週休1日だったんだよね」と言われて驚きました。たしかに、私が社会人になったバブル時代も、まだ隔週週休2日の企業が多かったものです。

   企業側にとってのメリットが実証されたら、案外「週休3日」は一気に広がるかもしれません。私が現役のうちに「現実」になってほしい、と思うこの頃です。(井津川倫子)