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脱エンジンは成功するか?...東洋経済「背水のホンダ」、ダイヤモンド「英語勉強法」、エコノミスト「日銀大検証」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

ホンダ、2040年「脱エンジン目標」の進捗は?

   2月6日発売の「週刊東洋経済」(2023年2月11日号)の特集は、「背水のホンダ」。2040年の「脱エンジン目標」をホンダが打ち出してから、間もなく2年。自ら退路を断った決断の先に何があるのか。密かな事業改革の全体像に迫った。

   グローバルで40超ある車種を2040年までに20程度までに半減させるというのが密かに練っている車種削減策だと指摘している。EV(電気自動車)シフトを見込んでのことだ。

   モーターや電池など電動部品の価格が高いEVは、生産コストがガソリン車やハイブリッド車よりも上昇する。このため、地域専用車種を減らし、グローバルで統一することで効率を引き上げる。

   「MFD-BEV」というのが投入されるEVの次世代グローバル商品群だ。「ホンダ」ブランドと高級ブランド「アキュラ」の計14車種で構成される。販売台数は年間200万台程度を見込む。販売価格も高価格帯にシフトし、4万ドル(約520万円)以上を想定している。

   一方でガソリン車とハイブリッド車は、大半の地域で30年代後半から40年までに新車種の投入を終え、従来モデルの売り切りに徹する。グループ全体では400万台規模と見られる。

   その起死回生策とは、こうだ。高価格帯と低価格帯でメリハリをつけた商品戦略である。高価格帯では、北米専用の高級ブランド「アキュラ」を28年に完全EVブランド化したうえでグローバル展開する。販売価格帯は、現行モデルより100万円以上上がりそうだ。

   かたや、低価格帯の目玉になるのが、軽自動車「N-BOX」ベースのEV。日本国内の22年新車販売台数で1位の人気車種であるため、インパクトは大きい。

   「脱エンジン」達成のために、欠かせないのが電池の開発だ。

   ホンダは現在、電池の調達を外部の車載電池メーカーに頼っている。中国ではCATLと連携を深め、日本ではエンビジョンAECSから供給を受けることで合意。北米ではGMが韓国・LGエナジーソリューションと共同開発した電池を採用し、さらにLGとは合弁で電池工場をオハイオ州に建設する。

   次世代電池の本命と見られる「全固体電池」を搭載したEVは、20年代後半に発売する計画を掲げている。だが、全固体電池の開発はトヨタ自動車ですら苦戦していると言われ、課題は大きいようだ。

◆ディーラーも生存競争を強いられる?

   一方、稼ぎ方が変わるEV時代において、ホンダが参考にするのは米テスラだという。40年に「ソフトウェア利益4000億円」という目標を掲げている。自動車の価値を決めるのは、ソフトウェアになると見られている。

   テスラは無線経由のソフトウェア更新などを通じて、運転機能をアップデートする。テスラはオンラインや直販店で直販しているため、ディーラーマージンの負担がない。さらに、テスラの車種は4車種と少ないため、ソフトウェアの統一化を図っている。

   対してホンダはディーラーマージンがあり、車種も多いので、コスト面で対抗できるか、難しいようだ。

   ホンダを支える部品メーカーは淘汰と再編が待ち受けると見られる。すでに会社を畳むことを選択する部品メーカーも出てきた。中小メーカーには、新たな取引先を紹介する取り組みも水面下で進める。

   ディーラーも生存競争を強いられそうだ。

   ホンダは店舗数2129に対して、運営するディーラーの法人数は603(2022年)。店舗数がホンダと同規模の日産のディーラー数は5分の1以下だから、ホンダには小規模なディーラーが多いことが分かる。ディーラーの統合再編をどれだけ加速させられるかが、ホンダのEV展開のカギになりそうだ、と結んでいる。

いまや英語に「逃げ切り世代」はない

   「週刊ダイヤモンド」(2023年2月11日号)の特集は、「一度覚えたら忘れない英語勉強法」。

   新型コロナウイルスの感染拡大によりオンライン会議が浸透し、それゆえ国内にいても英語力が求められるようになった人も少なくない。加えて、小中学校・高校の英語の難易度が大幅にアップ。いまや英語に「逃げ切り世代」はないという。最新科学に基づく英語学習法を伝授している。

   東京大学大学院の酒井邦嘉教授が脳科学に基づく「忘れない英語」の学び方について、解説している。まずは、簡単な会話文から覚える。次に、覚えた文を応用して自分で文を作る。その際、動詞から考え、時制に注意する。

   英語が身に付く映画鑑賞法には4つのステップがあるという。

1 日本語音声で字幕なし ストーリーの流れをつかむ
2 英語音声で日本語字幕 字幕を見なくても内容が分かるまで見続ける
3 英語音声で英語字幕 聞き取れない部分を中心に、英語の字幕で確認する
4 英語音声で字幕なし 1つの作品でいいから、セリフを丸ごと覚える

   ビジネス英語を武器に、「成り上がる」方法を取り上げている。中級英語でスピーキングを磨き、40代で外国人幹部から評価された男性の実例を紹介している。

   TOEIC535点からの学び直しを決意。NHKのラジオ英語講座は中学生向けの基礎英語から始めた。1年で50~100点を上げるペースでこつこつ学習を続け、2021年に800点台に。このとき、外国人幹部の説明役を買って出て、認められた。新たな部署への転属が決まり、ワークライフバランスが劇的に向上したという。

   企業の採用や昇進に欠かせないTOEIC。2カ月で200点アップの秘策を明かしている。

   たとえば、300点から500点台へのアップを目指すには、中学レベルの文法や単語を復習する。文法のテキストは、市販の中学生向けの文法ドリルでいい。単語は「夢をかなえる英単語新ユメタン0 中学修了~高校基礎レベル」(アルク)、リスニングとリーディングは「TOEIC Bridge Listening & Reading公式ワークブック」(国際ビジネスコミュニケーション協会)がいいそうだ。

   子どもが受験に勝つための英語についても言及している。「大学入学共通テスト」のリーディングに対応するには、英語の多読本「ラダーシリーズ」などを日頃からたくさん読む習慣を付けること。リスニングは、受験英語の出題形式に即したリスニング問題を解く訓練をすることだ、とアドバイスしている。

   第2特集は「楽天解体の序章」というおどろおどろしいタイトルだ。

   携帯電話事業を展開する楽天モバイルの巨額赤字が雪だるまのように膨らんだことで、楽天グループは「解体の危機」にひんしているというのだ。

   年内に楽天銀行と楽天証券ホールディングスの上場を予定し、金融事業の切り離しを進めるが、その先には楽天モバイルの切り離しか、楽天本体の救済が待ち受けるという。

日銀新総裁に求められるインフレ対策

   「週刊エコノミスト」(2023年2月14日号)の特集は、「日銀大検証」。日銀の総裁が10年ぶりに交代する。黒田東彦総裁による異例の金融政策は、日本経済に何をもたらしたのか、そしてこの先何が起きるのか、レポートしている。

   次期日銀総裁には、雨宮正佳副総裁や前副総裁の中曽宏氏、元副総裁の山口広秀氏ら日銀出身者のほか、元財務官の浅川雅嗣氏らが候補に挙がっている。すでに人選を終えているはずの岸田首相の念頭にあるのは「インフレ」対策だという。

   日銀が、異次元緩和の出口を目指すと同時に、市場や金融機関の経営に悪影響が及ばないようにするには、国債の買い入れ額をいったんは増やしつつ、減らすタイミングを模索する運営を粘り強く継続する必要がある、と見ている。

   元日銀理事の山本謙三氏は、「約10年間、正常ではない政策を続けてきたのだから、(出口までに)同様に10年近くかかるのではないか。相当の長期にわたることは間違いない」と語っている。

   日銀は現在、約36兆円の株式を保有している。中央銀行が民間企業の株式を購入する事例は他の主要国では皆無だと、infinityチーフエコノミストの田代秀敏氏は指摘する。

   「ガラパゴス化」した日銀が、国債や株式を大量購入した結果、競争的な市場の「価格発見機能」はほとんど麻痺してしまい、日銀は「通貨の番人」ではなく「市場の看守」になってしまった、と批判する。

   日銀が弥縫策を重ねても、金利はもはや制御不能であり、「地獄への扉」が日銀に向かって開こうとしている、との断言も。

   日本総合研究所調査部主席研究員の河村小百合氏も「資産膨張で利上げ不能になり、インフレ、財政破綻が待つ」とインタビューに答えている。

   まもなく発表される日銀新総裁人事。新総裁を容易ならざるハードルが待ち構えているようだ。(渡辺淳悦)