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コメ農家を泣かせる「米価の値下がり、肥料の値上がり」の現状

   「米価が下がり、肥料が値上がりする」というコメ農家泣かせの現状が、中古農機具の買取販売専門店を全国で展開する株式会社リンク(滋賀県近江八幡市)の調べでわかった。

   10代~70代の農作物の生産者155人を対象に、「農業をするうえで困っていること」を聞いた。2023年1月31日の発表。

   ここ数年、コメの価格はコロナ禍前から2割程度の安値が続いていた。

  • コメの価格が上がらない(写真はイメージ)
    コメの価格が上がらない(写真はイメージ)
  • コメの価格が上がらない(写真はイメージ)

「コメ離れ」やコロナ禍...コメ需要の減少で在庫膨らむ

   コメの価格が上がらない背景には、複合的な要因がある。人口減に加え、食卓の「コメ離れ」の進行、コロナ禍での外食向け需要の減少、ブランド米をはじめとした価格競争の激化...こうした影響から、古米の在庫が積み上がっている状況がある。

   さらに、相次ぐ食料品の値上げが、家庭の食卓に深刻な影響を広げるなか、安値圏で推移するコメの需要回復に遅れが生じていることも、コメの価格が振るわない要因の一つとされる。

   東京商工リサーチのレポート(2022年7月19日発表)では、

「(22年)6月の玄米60キログラムの平均価格は1万2618円で、前月から84円値下がりした。米価が暴落した2014年産(1万2068円)以来、7年ぶりの低さ。コロナ禍で落ち込んだ外食需要はようやく回復してきたが、古米を含む在庫は積み上がり、当面は安い『お米』が食卓を助けそうだ」

と、コメ価格の状況をみていた。そのうえで、

「米価は低水準で推移している。2021年産米は、業者の前倒し取引や農水省の米価対策も実施されたが、価格競争で値下がりする負のスパイラルから抜け出せていない。日本の食料自給率に貢献する『お米』の低価格相場は、米の生産現場から食卓、外食産業まで幅広い食分野に影響を及ぼす可能性がある」

と指摘していた。

   農林水産省によると、2022年産米の11月分の相対取引価格(出荷業者と卸売業者が売買取引する際の契約価格)は、新潟産「コシヒカリ」や青森産「まっしぐら」などが上向き、60キログラムあたりの全銘柄平均で1万3899円。これは、前年同月(21年産)に比べて7%上昇するなど、ようやく持ち直しの兆しが見えてきた(農林水産省調べ)。ただ、その動きは鈍い。

3割超の農家が「必要経費の高騰」に困っている

   そうしたなか、株式会社リンクが「農業をするうえで困っていること」(有効回答155人)を聞いたところ、最も多い32.7%の人が「必要経費の高騰」と答えた。次いで、「人手不足」の13.6%、「機械の不足」が10.5%と続いた。

   「市場価格(米価)の下落」には6.8%の人が「困っている」と回答。「資金不足」が6.2%、地球温暖化の影響とみられる「天候不良」にも4.9%が「困っている」と答えた。【下のグラフ参照】

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「必要経費の高騰」に32.7%の農家が困っている(リンクが作成) 

   「必要経費の高騰」は、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻によって、肥料や農薬、燃料などが相次いで高騰したことが影響。ますます深刻化、かつ長期化しそうな状況にある。コスト高で赤字経営となり、「離農」する人も増えている。

   4番目に多い「悩み」にあげられた「市場価格(米価)の下落」と相まって、よりコメ農家を苦しめる状況にあるといえる。

   調査したリンクは、

「米価の下落が続きそうな一方で、肥料などが値上がりする、「コメ農家泣かせの現状をなんとかしたいという人も少なくなかった」

とコメントしている。

   さらに「人手不足」や、進展する農業就労者の高齢化によって、高齢者が一人で農作業する機会が増えたり、後継者がおらず、泣く泣く離農したり、引退するタイミングを見つけられない人がいたりするという。

   こうした事態も、まずは赤字経営が改善しないことには解決に向かわない。次世代の担い手が現れにくい状況が続きそうだ。

   なお調査は、10代~70代の農作物の生産者を対象に、2022年12月8日~18日に実施。LINEのアンケート機能を使ったインターネット調査で、有効回答は155人。