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合格率5%...難関の司法書士試験に合格すると、こんな仕事がある!

   司法書士試験には、学歴・年齢などの制限がないため幅広い層が受験するが、合格率は約5%という難関である。

   本書「司法書士の仕事と働き方がイチからわかる本」(すばる舎)は、資格取得から仕事の内容まで、10人の声を集めた本だ。独立開業系の資格として人気の高い司法書士の実態がよく分かる。

「司法書士の仕事と働き方がイチからわかる本」(戸谷満監修、クレアール司法書士口座事務局編)すばる舎

   クレアール司法書士講座事務局・専任講師の戸谷満さんが監修し、現役の司法書士10人が執筆した。

代表的な仕事は「登記業務」

   そもそも司法書士とは何をする職業なのか。司法書士は、「市民に最も身近な法律家」と言われる。裁判所・検察局・法務局などに提出する書類の作成や、登記・供託の手続き、審査請求をするのが主な仕事だ。

   4つの代表的な仕事のうち、メインは「登記業務」である。

   土地や家屋などの不動産について、権利関係を公示するために登記記録に登記する不動産登記と、商号や代表取締役など、商取引を行う上で重要な事項を公示するため登記する商業登記がある。

   このほかに、140万円以下の事件について、本人を代理して訴訟を起こす「訴訟業務」、認知症など意思決定が困難な人に代わって対応・判断する「成年後見業務は」、企業に法律との付き合い方をアドバイスする「相談業務」がある。

   勤務司法書士の平均年収は約250万~400万円で、独立・開業した人の平均年収は500万円程度だそうだ。

   以下、10人の司法書士が自分の体験や仕事の魅力、1日の勤務実態について書いている。何人かの声を紹介しよう。

士業の中では女性比率が高い

   フリーアナウンサーから司法書士に転身した藤井美穂さんの体験が参考になるだろう。音大を出てフリーアナウンサーだった藤井さんは、30歳を目前に、所属事務所から、得意分野を持つか、資格を取ることを求められた。

   気象予報士の講座を申し込み、教材が届いたが、まったく興味が沸かずに断念。次に、行政書士に目を付けた。独学で行政書士の試験はクリアしたが、司法書士試験は難関だ。

   予備校に入り、勉強した。知識がない分、予備校講師の講義が素直に耳に入ってきて、司法書士に特化した対策ができたという。

   合格して、予備校のチューターとして1年間勤務した後、パートタイムで週3日、司法書士法人に7年間勤務。自宅の引っ越しにあわせて独立開業した。

「司法書士は、子どもの成長に合わせて働き方を選べる資格です。そしてこの資格は一生ものです。少しお休みしても、復帰することは難しくありません」

   このほかに、アパレルや証券会社で派遣社員として働きながら勉強を続けて、5年後に合格。たまたま入所した事務所を引き継ぐことになり、10カ月後に独立した女性らの体験も寄せられている。

   本書に登場する10人のうち5人が女性で、女性の割合が多いと感じた。全国の司法書士は2万2632人いて、女性は3972人で17.6%を占める(2020年)。司法書士の女性率は、弁護士や税理士といった他の士業の中でも高いそうだ。

放射線技師から転身、独立4年目に3000万円超え

   大学の法学部出身者の体験談が多い中で、放射線技師から転身した、小菅和彦さんの体験がユニークだ。

   独立志向があり、直接顧客に感謝される仕事をしたいと司法書士を志し、3年後に合格。勤務司法書士として3年半働いた後に独立。4年目に事業所得は3000万円を超えた。法人所得を年間1億円にするのが目標だという。

   かつてバブルと言われた債務整理・過払金返還請求業務は、「衰退の道」しかない、とあった。もっとも、司法書士の先行きは不安に思われるかもしれないが、「終活」にまつわる業務が、これからどんどん増えていく、と見ている。

   高齢化に伴い、成年後見業務は増える一方だ。また、相続登記が法律で義務化される。これらの「終活」にまつわる業務が、登記業務以外の仕事として重要になる、と説明している。

   このほかにもシステムエンジニアから転職した男性、ホテル勤務を経て合格した女性らの体験も興味深い。

   最後に、司法書士試験に合格するための勉強法を解説している。ざっと紹介しておこう。憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法、民事執行法など10以上の法律から出題される。

   択一式70問(210点)、記述式2問(70点)の280点満点で行われる。7割5分程度の得点率が必要な上に、「一定の科目での高得点も必要で、その上乗せとして24点程度が要求される」としている。不動産登記と商業登記がポイントだという。

   先に紹介した小菅さんは、「司法書士試験は、とにかく覚えることが多い試験。しかも細かいところまで正確に覚えないといけない」として、10時間くらい集中できるタフさが求められるという。

   通して読むと、司法書士の仕事の幅は広く、仕事のスタイルもさまざまであることが分かった。比較的自由度も高く、報酬も安定しているようだ。働きながら、司法書士を目指す人が多い理由が分かった。(渡辺淳悦)

「司法書士の仕事と働き方がイチからわかる本」
戸谷満監修、クレアール司法書士講座事務局編
すばる舎
1430円(税込)