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マンションと戸建て、どちらがいい?...ダイヤモンド「不動産購入」、東洋経済「エネルギー危機」、エコノミスト「会計士・税理士」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

長期化するエネルギー危機

   2月13日発売の「週刊東洋経済」(2023年2月18日号)の特集は、「どうするエネルギー危機 どうなる脱炭素」。電気料金の上昇にあえぐ日本列島。エネルギー危機と脱炭素をともに解決する道はあるのだろうか。厳しい指摘が寄せられている。

   昨年12月22日、岸田文雄首相は脱炭素社会への転換を検討する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、官民150兆円投資の方針を示した。

   今後10年間で、20兆円規模の「GX経済移行債(仮称)」を発行する。この政府支援を呼び水に、民間企業から130兆円の投資を引き出し、再エネの大量導入や製造業の脱炭素化につなげていく構えだ。

   ひるがえって、エネルギー危機は長期化する見通しだ。業界の権威であるダニエル・ヤーギン米S&Pグローバル副会長は、「危機は始まったばかり。まだ終わらない」と見ている。日本の「GX基本方針」について、バランスが取れており現実性もあると評価している。

   原発なしで(脱炭素の)目標を達成するのは難しいからだ。ドイツでは今、あまりに早く脱原子力を進めたことが誤りだった、と理解され始めているという。ロシアのプーチン大統領が同国のエネルギー供給システムの弱点を突こうとしたからだ。日本は技術や開発といった強みを生かすことで、世界経済での地位を高められると見ている。

   一方で、原発の活用には拙速という見方もあるようだ。「原則40年、例外として60年」としてきた原発の運転期間を延長する方針を示したからだ。

   「GX基本方針」の「誤り」について、国際大学副学長の橘川武郎氏は、「脱炭素の主力は再エネであり、原子力の復権は難しい」と語っている。発電用燃料として、アンモニア、合成メタン、水素などを企業は検討しており、国がとやかく言う前に、主要企業は自らの選択によってカーボンニュートラルに向けて動き出しているというのだ。

   発電コスト研究の第一人者である龍谷大学教授の大島堅一氏も「原子力発電は衰退産業。1兆円投資は無駄金になる」と厳しい見方をしている。

   安倍政権の首相秘書官兼補佐官などを歴任した今井尚哉氏は、岸田政権が進めるGX政策について、「抽象論ばかりになってしまっている。産業ごとの脱炭素化について、具体的な工程が示されていない」と厳しい。

   この先、電気料金が下がることはないので、そのことを国民にきちんと説明し理解してもらったうえで、脱炭素化を進めていく必要がある、としている。

◆不祥事が相次ぐ電力業界

   日本全国で電気料金が高騰する中、大手電力各社のガバナンスが問われる不正が相次いで発覚している。

   そのひとつが、独占禁止法違反行為であるカルテル問題だ。関西電力が主導する形で、中部、中国、九州の4電力が西日本の電力販売で自社エリアを超えての販売をお互いに自粛するように合意を結んでいたことが認定された。

   また、大手電力の営業部門の社員が、新電力の顧客情報を不正に閲覧していたことが明らかになった。相次ぐ不祥事は、発送電分離の強化や厳罰導入も含めた抜本改革の好機だ、とも。

   GXについての厳しい課題をいくつかリポートしている。国内最大級の陸上風力発電に地元から「待った」がかかっているというのだ。豊田通商の完全子会社で風力発電の国内最大手、ユーラスエナジーホールディングスが、青森県の中央部で計画している「(仮称)みちのく風力発電事業」に地元から自然環境破壊になると「待った」がかかっている。

   高さ200メートル級の風車が最大150基(最大出力は60万キロワット)という大規模なもの。気候変動対策としての再エネ拡大により自然環境が脅かされれば、「見せかけの環境配慮」のそしりは免れない、と指摘している。

戸建てでも、好条件なら資産価値を保てる

   「週刊ダイヤモンド」(2023年2月18日号)の特集は、「バブルでも失敗しない! 不動産購入&節税術」。異常なまでに値上がりするマンションと戸建てだが、きちんと情報武装すれば、賢く買うことができるという。

   マンションと戸建てのどちらかを選ぶかという、マイホーム選びの「永遠のテーマ」について検証している。修繕費は戸建てがマンションの約2倍だが、40年間住み続けると仮定した場合、生涯コストは戸建てが1200万円ほど安くなるという試算を紹介している。

   両者の違いを生んだのは、マンションの管理費と修繕積立金だ。そのトータルコストは戸建てのリフォーム費用をはるかに凌駕する。

   出口にあたる資産価値はどうか。

   戸建ての最大のデメリットは、建物の減価償却が早いことだ。木造戸建てなら、資産価値がほぼゼロになるまで22年と、マンションの半分以下の年数でその資産価値は土地代のみになる。

   しかし、戸建てでも好条件の物件を選べば、長期的に見てマンションと遜色のない資産価値を保てるという。首都圏の中古戸建てと中古マンションの成約価格と成約率のグラフを示し、築6年以上で成約率、築26年以上で成約価格において、戸建てがマンションを上回っている。実際に売れた物件同士で比べれば、好条件の戸建てならば資産価値を保てるというわけだ。駅別の将来推定価格シミュレーションを示し、その条件を探っている。

   不動産業界関係者の覆面座談会も興味深い。

   実需住宅の相場は下がる気配がないという。東京都内の城北エリアではコロナ禍が最盛期のときは5000~7000万円が売れやすかったが、今はその予算だと、希望のエリアで買えなくなったという。特に新築戸建ては材料費高騰で値段が上がっている。

   ひと昔前だと狭小戸建てでも土地は70平方メートルあったが、今は55平方メートルで駐車場がない3階建て、土地の入口からすぐ玄関という物件も多いそうだ。

   今は「これしか出せないからこれで買える家を広域で探す」という検討の仕方をする人が出てきているという。

   中古マンションの流通量も減っている。相場が高くなっているのに、今持っている人が物件を売ろうとしないのだ。「住み替え先がなくて売れないんでしょうね」という声も。

公認会計士資格の誤表記問題

   「週刊エコノミスト」(2023年2月21日号)の特集は、「大淘汰時代の幕開け 選ばれる税理士・会計士」。企業の決算書類の正確さを保証する会計士と税務のプロの税理士が、大きな曲がり角に立たされているという。

   日本公認会計士協会が昨年12月26日、「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」と題した会長声明を出したことを取り上げている。

   4大監査法人の1つ、有限責任監査法人トーマツが、監査先向けに提出している書類に、公認会計士登録をしていない職員を公認会計士として記載していた事実が明らかになっていたからだ。監査先は有価証券報告書の訂正報告書提出を余儀なくされた。

   これを受け、協会は上場会社の監査を担当する全135の監査法人および会計事務所に対し、点検を要請。その結果、誤表記があった事務所は18。誤表記は氷山の一角、ミスで済むレベルではない事例もあり、会計士資格への敬意が失われているのではないかと指摘している。

   ほかに、負担が激増し混乱必至のインボイス制度、クライアントの選別が進む4大監査法人などの記事が目を引いた。税理士・会計士の間違いない選び方も紹介している。

◆日銀総裁人事めぐる報道

   特集ではないが、日銀総裁人事を巡る記事について、触れておこう。2月6日、日本経済新聞が「政府が雨宮正佳・日銀副総裁に総裁就任を打診した」と報じたことに触れ、「週刊エコノミスト」では雨宮氏が「フリードマンの教えをどう生かすのだろうか」と結んでいた。

   「週刊ダイヤモンド」もこの次期総裁就任打診報道を取り上げ、「異次元緩和修正の舵取り」役として、雨宮氏が適任だ、と書いていた。

   ところが、日銀人事で動きが出たのは10日。ここで、植田氏の名前が挙がった。

   その後、政府は14日、共立女子大教授の植田和男氏を総裁候補として国会に提示した。両誌とも記事の差し替えが間に合わなかったのだろうが、「人事は怖い」というメディア業界の「格言」の重みを久しぶりに味わった。(渡辺淳悦)