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「老衰危機」に対応できるか?...ダイヤモンド「銀行」、東洋経済「DX」、エコノミスト「相続&登記」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

金利上昇で債券の評価損に直面する金融機関

   2月27日発売の「週刊ダイヤモンド」(2023年3月4日号)の特集は、「地方銀行 メガバンク 信金・信組 老衰危機」。金融機関は、内部で進行する「老衰危機」に対応できるのか、検証している。

   低金利時代が終われば、金融機関の収益は改善すると思われるが、「金利上昇による日本国債の含み損拡大」が懸念されている。国債の価格は金利と逆相関関係にあるため、金利が上げれば国債の価格は下落し、保有債券の評価損を抱えるからだ。

   同誌が、22年3月期の決算資料をもとに地銀が直面する国債、地方債の金利上昇リスクを試算。影響度合いについてストレステストを行い、「地銀耐久力」ワーストランキングを作成した。

   「金利2%上昇、健全性を保つために必要な自己資本比率7%」のシナリオをベースに作成したが、マイナスに陥る地銀は31行に上った。ワーストランキングの上位には、福岡銀行、第四北越銀行(新潟県)、百十四銀行(香川県)、肥後銀行(熊本県)、佐賀銀行、十八親和銀行(長崎県)、宮﨑銀行など九州の地銀が目立つ。

◆「ゼロゼロ融資」の返済始まり、地銀の収益悪化に影響か

   今年、コロナ対策の実質無利子・無担保融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が本格化する。中小企業支援が名目だが、融資後3年間の利子を都道府県が金融機関に補給する決まりで、地銀にとって安定的な収益源でもあった。

   そのおいしい貸し出しが、23年7月以降、一気に剥がれ落ちるため、地銀の収益に大きな影響が出ると見られる。

   顧客向けサービス業務利益からゼロゼロ融資の返済本格化による金利収入減少分(推定値)を差し引いた「修正顧客向けサービス業務利益」が赤字に陥る地銀は、普通シナリオでも全体の3割、悲観シナリオでは約4割に上るというのだ。

   この「実質的」本業利益ワーストランキングを見ると、三十三銀行(三重県)、滋賀銀行、秋田銀行、福井銀行、岩手銀行などが並ぶ。

   インターネット金融大手SBIホールディングスが出資する地方銀行が、外国債券の含み損で窮地に追い込まれている、と指摘している。

   SBIは2019年以降、「地銀再生プロジェクト」と銘打ち、島根銀行、福島銀行、筑邦銀行(福岡県)、清水銀行(静岡県)、東和銀行(群馬県)、仙台銀行(宮城県)、筑波銀行(茨城県)、大光銀行(新潟県)の各行と資本業務提携を結び、「第4のメガバンク構想」とうたわれたが、瓦解寸前だという。

   地銀全体の含み損の推移とSBI系9行のそれをグラフで比較している。

   満期保有を目的としない外債など「その他」の有価証券評価損が、明らかにSBI系は多い。22年3月末時点で495億円だったのが、9月すえに1059億円と雪だるま四季に増えている。

   「ゼロゼロ融資」の返済が本格化し、その貸し出し収益が?がれ落ちる影響は、地方銀行より、零細な中小企業に融資する信用金庫や信用組合の方が大きいかもしれないという。

   信金・信組「格付け」ランキングを掲載している。収益力、財務の健全性、地域密着度などを指標としたものだ。上位には西武信用金庫(東京)、大阪商工信用金庫、東京信用金庫などが入っている。

   本当に頼れる信金・信組はどこか? 地域の金融機関がどのような位置づけにあるのか、参考までに見てみたらどうだろう。

システム開発の「地雷ポイント」とは?

   「週刊東洋経済」(2023年3月日号)の特集は、「文系管理職のための失敗しないDX」。すべての事業活動がデジタル化に向かう今、非IT人材の管理職にも相応の知識とスキルが必要だという。

   開発の失敗例として、NIPPON EXPRESSホールディングスの基幹システムの開発中止とそれに伴う特別損失の計上を挙げている。子会社・日本通運は「新・国際航空貨物基幹システム」の開発を進めていたが、開発コストの増加、期間の延長が見込まれることから断念。154億円の減損損失を2022年12月期決算に計上した。

   こうした失敗は、今後中小企業でも顕在化すると見られる。システム開発の手順に沿い、いくつかの地雷ポイントについて解説している。

   解決したい問題は何か? 何をつくりたいか? システム開発の起点となる「企画」が最初にある。

   次に、企画を実現するための要件=必要な条件を整理する「要件定義」をする。地雷ポイント1だ。これには2種類あり、「業務要件定義」と「システム要件定義」だ。もともとの企画が実現できるか、IT投資額は妥当か、今後のスケジュールの余裕度などがポイントになるという。丸投げは絶対にNGだ。

   地雷ポイント2は「パートナー選定」。開発規模に合わせて発注先を選ぶ。開発費用は、基本的に人月(開発工数)×単価で計算される。報酬単価の相場を示している。優秀な上級システムエンジニアになると月200万円程度になることもあるという。

   地雷ポイント3は「契約」だ。「請負契約」か「準委任契約」があり、後者には作業した時間に対して報酬を支払う「履行割合型」と、得られた成果物に対して支払う「成果完成型」がある。請負契約か準委任契約かを明確にしていなかったことで、裁判になったケースもあるという。工程ごとに最適な契約形態を選ぶことを勧めている。

   この先の地雷ポイントとして、4「テスト」、5「運用」、6「UI(使い勝手)・UX(魅力的な体験価値)設計」、7「デザイン発注」について分かりやすく説明している。文系の管理職にとって、心強いアドバイスになるだろう。

   データをそろえて、サイトにアクセスするだけという、はやりの「ノーコード」についての記事も参考になるだろう。グーグルが提供するアップシートだ。アプリ開発の作業がほとんど必要ないというものだ。10人以下の比較的小規模な部署なら無料枠で使える。データの閲覧と更新のみに割り切れば、職場でも導入しやすいだろう。

   500以上あるノーコードツールの中から、目的別のおすすめツール12選を紹介している。非IT人材でもIT導入の一連の流れを理解し、最適化に向けて実際に手を動かせるメリットを強調している。

「所有者不明」土地問題の解決に向けて

   「週刊エコノミスト」(2023年3月日号)の特集は、「4月施行目前! 相続&登記 法改正」。土地にまつわるトラブルを防ぐため、法改正の要点をまとめている。

   長期間、相続登記されておらず、登記簿を見ても所有者が分からなかったり、登記されていても所在不明だったりする土地は「所有者不明」土地と呼ばれる。

   この問題に対し、政府はさまざまな法改正で対処してきたが、その総仕上げとなるのが、今年4月施行の民法と不動産登記法の改正だ。

   土地の登記名義を変更せずに放置していると、登記簿の記載と異なり、実際に数十人もの相続人が、その土地の権利を持つという「共有」という事態が起きる。

   共有状態を解消するのに「共有物分割」と「遺産分割」の2つの手続きが必要だったが、円滑化を図るため、改正民法では相続開始から10年が経過した遺産の分割は、1回の手続きで、遺産共有持ち分を含む共有物の分割ができることとし、原則として法定相続分で分割することとした。

   このほかに、共有者が所在不明の場合にどうしたらいいのか、隣家がゴミ屋敷の場合の対処法、不動産登記の抹消法など、「所有者不明」土地問題を解決するための方法を示している。

   さらに、不要な土地・空地対策として、「負動産」を国に引き渡せる「土地国庫帰属制度」や所得税の「空き家譲渡特例」の4年延長、固定資産税の「管理不全」空き家を対象にした軽減特例改正などのエポックについて解説している。相続の基礎知識をまとめたQ&Aも参考になるだろう。

   「所有者不明」土地問題が解決して、各地の災害復旧や道路拡張など公共事業がスムーズに進むことを期待したい。(渡辺淳悦)