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千代田化工建設、平均給与は926万円!? 加速する「脱炭素社会への移行」に貢献 気になる業績や株価もチェック【よくわかる企業分析】

   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、日揮、東洋エンジニアリングとあわせて「エンジニアリング御三家」と言われる千代田化工建設です。

   1948年、三菱石油の工事部門が独立する形で設立。2019年8月には債務超過で東証2部に降格、日経平均株価の構成銘柄からも外され、三菱商事の連結子会社となりました。現在は東証一部・二部等の再編に伴い、東証スタンダード市場上場となっています。

2019年3月期に債務超過...三菱商事が救済

   それではまず、千代田化工建設の近年の業績の推移を見てみましょう。

   千代田化工建設は公共性の高いインフラを建設する会社なので、事業規模は非常に大きいものの、利益率は高くありません。海外におけるリスクの高い事業を行うことが多く、大きな赤字に陥ることもあります。

   2016年3月期と2017年3月期の売上高は6000億円を超えましたが、2017年3月期は411億円の最終赤字となっています。これは前年に資本参加した海中・海底事業の持分法適用会社(シンガポール拠点の海洋工事会社)の経営悪化により、営業外費用、特別損失を計上したためです。

   2018年3月期には、売上高が5000億円台に減少し、営業損益が123億円の赤字に転落。米国のLNG(液化天然ガス)案件における建設工事費用の大幅増加によるものでした。

   さらに2019年3月期には売上高が3000億円台に落ち込み、営業赤字も2000億円近くに膨れ上がり債務超過に陥りました。前年から続く米LNG案件に加え、インドネシアのLNG案件の進捗遅れの影響を最小限にするためのコスト増によるものです。

   そこで会社は、2019年5月に新しい中期経営計画を立て、7月に三菱商事を割当先とする700億円の第三者割当増資により財務基盤を強化しています。

   2020年3月期以降は売上高が減少しているものの、営業黒字を回復。ただし、史上初の日本企業による大型LNGプロジェクト「豪州イクシスLNGプロジェクト」(操業主体は国際石油開発帝石〔INPEX〕)関連の特別損失により、最終赤字となっています。

   2023年2月期の決算発表時の2023年3月期の業績予想は、売上高が5000億円、営業利益が200億円、最終利益が115億円でした。その後、2023年1月31日に、売上高4500億円、営業利益が200億円、最終利益が150億円となる見込みと上方修正しています。

主要顧客はカタールやインドネシアの企業

   千代田化工建設の「エンジニアリング事業」の単一セグメントですが、2022年3月期の本決算概要(決算説明会資料)には、いくつかの切り口での内訳が示されています。

   まず、千代田化工建設は事業分野別の業績を大きく「エネルギー」と「地球環境」に分け、エネルギーには主力の「LNG・その他ガス関係」と「石油・石油化学」を、地球環境には「医薬・生化学・一般化学関係」と「環境・新エネルギー・インフラ・その他」を含んでいます。

   2022年3月期の「完成工事高内訳」(本業の売上)では、LNG・その他ガス関係が全体の51%を占めています。一方で、「受注高内訳」(将来の売上)では、環境・新エネルギー・インフラ・その他が78%と大半を占めており、地球環境分野が存在感を見せています。

   「受注残高内訳」(受注高から売上高を引いた額)は、LNG・その他ガス関係が強く69%を占め、環境・新エネルギー・インフラ・その他の25%と合わせると94%を占めます。

   地域別の「完成工事高内訳」は、日本国内が38%と最大です。次いで、中近東・アフリカの26%、アジア・オセアニアの18%、北中南米の10%が続き、日本に拠点を置きつつグローバル市場でビジネスを展開している会社といえます。

   有価証券報告書によると、主要な顧客ごとの売上高が最も大きいのは、カタールエナジー(中等カタールの国営石油会社)の754億円、次いでビーピー・ベラウ・エルティーディー(インドネシア)の315億円です。

平均年齢41.5歳、平均年収900万円台に返り咲き

   千代田化工建設の連結従業員数は、2018年3月期の4989人から2019年3月期の5243人へと大きく増加しました。これは、人材領域のグループ会社3社が合併したことによるもの。その後は債務超過もありリストラがあったのか、4662人、4018人と人員削減が進んでいます。

   単体従業員数は、2018年3月期の1495人から1554人→1591人→1603人と右肩上がりに進んでいます。これにより平均勤続年数は12年台に抑えられてきましたが、2022年3月期には平均年齢41.5歳、平均勤続年数14.2年となっています。

   千代田化工建設は平均年間給与900万円超の高給企業というイメージがありますが、業績悪化もあって、800万円台に落ち込んでいました。それが2021年3月期には920万円と、久々の900万円台を回復。2022年3月期の平均年間給与は926万円となっています。

   千代田化工建設の採用サイトを見ると、新卒採用の他に、幅広い職種でのキャリア採用募集が行われています。例えば営業職(エネルギー事業分野)では、海外プラント建設工事案件(オイルメジャー系顧客、海外国営エネルギー企業系顧客、日系エネルギー企業系顧客等向け)における受注活動から契約取りまとめまでを担当します。

   応募要件は、TOEIC800点以上など英語でのビジネス折衝ができる人。他の職種でも英語での基本的なビジネスコミュニケーションが取れる必要があるようです。処遇は「当社規定による(経験年数等を考慮)」で、勤務地はグローバル本社(横浜市西区)です。

   このほか、「地球環境問題に関心があり、2050年ネットゼロ社会実現に向け自らが貢献したいという意欲のある方」を歓迎する、グリーントランスフォーメーション(脱炭素)分野 営業・企画職の求人などもありました。

2050年カーボンニュートラル達成に貢献

   三菱商事による経営支援を受けて、千代田化工建設は新中期経営計画を推進中です。

   「2030年のありたい姿」として、2030年度までに連結純利益300億円以上(2023年3月期の予測は150億円)を掲げるほか、「事業ポートフォリオの革新」として2020年度には10%程度だった「新規事業」の利益貢献度を50%に引き上げる、という目標を掲げています。

   そして、「水素社会をはじめとする脱炭素社会への移行を高い技術で加速し、2050年カーボンニュートラル達成に貢献する」としています。

   なお、新規事業とは「水素・炭素循環、再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、ライフサイエンス」のことで、既存事業「LNG・ガス、石油・石化、金属、産業設備」に対するものです。

   さらに、「低炭素・カーボンリサイクルの取り組み」「水素事業」「エネルギーマネジメント事業」「ライフサイエンス事業」の4つの領域において、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を行い、ビジネスと業務を変革するとしています。

   なお、2023年3月28日に東証グロース市場への上場を予定しているアレントは、プラントの配管設計ソフトを千代田化工建設と共同で開発し、SaaS形式で石油化学会社などに提供しています。本来の意味でのDXを本気で推進しようとしている点は評価できるのではないでしょうか。

   千代田化工建設の株価は2014年には1500円を超えていましたが、2018年12月には250円に急落し、2020年3月には192円の安値をつけています。現在は400円台前半に回復しています。

   2019年3月期からは配当を停止しており、業績回復に伴い配当を復活することになれば、株価も上昇する可能性があるでしょう。(こたつ経営研究所)