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東日本大震災から12年...いまだ続く震災関連倒産、昨年も21件 なぜ収まらない?

   2011年3月11日、未曽有の被害をもたらした東日本大震災から12年を迎える。

   被災地は最大震度マグニチュード9.0、10メートルを超す大津波に見舞われた。多くの人命を失っただけでなく、工場が水没したり、サプライチェーンが寸断されたりと経済活動がマヒしたことで、震災に関連する企業倒産も相次いだ。

   企業信用調査の東京商工リサーチによると、発生から2023年2月28日までの震災関連倒産は累計2019件にのぼった。3月7日の発表。

   年々減少して、下げ止まってきてはいるものの、昨年(22年の1年間)の倒産件数は21件。いまだに続いている。

  • 東日本大震災から12年(写真はイメージ)
    東日本大震災から12年(写真はイメージ)
  • 東日本大震災から12年(写真はイメージ)

島根県を除く全国の都道府県に分布

   東京商工リサーチによると、調査は、工場や施設、設備が地震や津波などによって直接被害を受けた企業を「直接型」、販売先や仕入れ先などの取引先が被災したことによって倒産した企業を「間接型」として集計した。

   震災関連倒産を年別にみると、震災発生の2011年の544件をピークに、2021年まで10年連続で減少している。ただ、22年は前年比で横バイの21件と、下げ止まったようにみえる。

   これを都道府県別でみると、最多は東京都の587件。次いで、宮城県213件、福島県92件、岩手県88件、北海道85件、神奈川県と茨城県がそれぞれ82件、千葉県77件、福岡県71件、栃木県63件、群馬県61件など、島根を除く全国の都道府県に広がる。【分布図を参照】

   その一方で、最も被害が大きかった東北の太平洋側を含む6県は合計で499件と、4分の1にとどまった。

   東京商工リサーチ情報部の谷澤暁課長は、

「西日本や九州では、販売先や仕入れ先が被災したことで(資金が)回収できずに倒産したケースが目立った」

   と話している。

震災関連倒産は島根県を除く、全国の都道府県に広がった(東京商工リサーチ調べ)
震災関連倒産は島根県を除く、全国の都道府県に広がった(東京商工リサーチ調べ)

   また、震災関連倒産を産業別でみると、最も多かったのは「サービス業他」の533件で、なかでも「宿泊業」(124件)や「飲食店」(96件)などが多い。

   次いで、「製造業」の469件、「卸売業」372件、建設業が233件、小売業189件、運輸業86件、情報通信業の66件と続いた。

   倒産の形態別では、最多が「破産」の1491件で、全体の73.8%を占めた。再建型の民事再生法と会社更生法は合わせて153件にとどまることから、多くの企業が再建をあきらめた実態が浮き彫りとなった。

倒産、再び増勢 被災にコロナ禍、なんとか凌いできたが...

   東日本大震災から12年。時間の経過とともに、被災地は復興しつつある。数字のうえでは、倒産件数も少しずつ減ってきている。

   ところが、2022年1月以降の東北の倒産は、コロナ禍の影響もあって増勢局面に入っている。

   20年のコロナ禍で資金繰り支援が広がり、震災の影響を受けた企業の倒産抑制にもつながる様子もうかがえたものの、倒産抑制に大きな効果を見せた「実質無利子・無担保融資」(ゼロゼロ融資)の返済は、この春以降にピークを迎える。

   そのため、震災の影響から抜け出し、抜本的な事業再建が進んでいない企業は、再び資金繰りに窮する事態に直面する可能性が出てきた。

   そうしたなか、被災地のインフラ整備や復興事業は、終了に向けて動き出している。前出の谷澤課長は、次のように指摘する。

「たとえば建設業などは、いわゆる復興需要がなくなってきています。加えて、人手不足や資材の高騰などで厳しい経営環境にあります」

   一方で、福島第一原子力発電所の事故では、まだ立入制限の続く地域もあることや、廃炉や汚染水の処分問題が立ちはだかり、震災前の生活や企業活動を取り戻すのは容易でない。

   これにコロナ禍や、昨今のエネルギー価格や資源高、インフレ、人手不足など、経営環境には次々と難題が押し寄せている。

   こうした背景が経営者の気力を奪い、心が折れて、「企業再建をあきらめる」ことにつながっているとみられる。谷澤課長は、

「それでも復興に向けて自立を目指す地元企業は、地域経済や雇用の担い手でもある。長期的な視点で、被災地の復興を目指す企業に寄り添った支援が求められる」

   としている。