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おなじみ「PDCA」はもう古い? 流行りのフレームワーク「OODA」とは?【尾藤克之のオススメ】

「事業が計画通りに行かない」
「部下が思うように動かない」

   このような課題が、日本中の企業であふれている。企業は管理体制を強めていくが、それはあまり効果的とはいえない。では、どのような対処法が有効なのか。ビジネスではおなじみの「PDCAサイクル」ではなく、「OODAループ」と呼ばれるフレームワークが参考になりそうだ。

「OODA式リーダーシップ 世界が認めた最強ドクトリン」(アーロン・ズー著)秀和システム

もはやPDCAでは乗り切れない

   OODAループとは、観察(Observe)―情勢への適応(Orient)―意思決定(Decide)―行動(Act)というループ(Implicit Guidance & Control, Feedforward / Feedback Loop)によって、健全な意思決定を実現するというものである。アメリカやNATO加盟国をはじめとする西側各国の軍隊だけでなく、中国やロシアを含む世界中の軍隊で採用されているという。

   日本でもOODA理論は知られている。だが、未だに計画を強化してPDCA、つまり、計画(Plan)―実行(Do)―測定・評価(Check)―対策・改善(Action)のサイクルで乗り切ろうとする組織やリーダーが多い。なぜ、日本人はOODAを回せられないのか。主な理由は、「観察や判断の経験や、決定の権限がない」からだと著者は言う。

   とくに、リーダーシップの概念が十分に浸透していないことや、PDCAが当たり前になっていること。また、多くの民間企業の組織構造そのものが現代社会と逆行しているなどの問題が根深く残っているためだと指摘する。敗戦国の日本で、軍事戦略が民間に浸透しないのは当たり前のことなのかもしれない。

「製造業が全体の半数を占める日本で、PDCAサイクルはある意味、重要な概念だ。さらに、戦後間もなく目まぐるしい復活を遂げた日本が、その成功体験にすがってしまっていることも理解できる。しかし、現実問題として、この国のITは他国よりも何周も遅れ、経済力も減少していくばかりである」(著者)

   失われた30年という表現がある。バブル経済の崩壊から30年以上も経っているのに、国民の平均所得は一定だ。世界の国々の所得が高くなっている中、日本だけが一人負けしている。その根本的な原因は一人ひとりのリーダーシップ力だと著者は言う。

「世の中が変化していることはわかっていて、何かやらないといけないことも気づいているが、その方法がまったくわからない。さらに、年が離れている部下とのコミュニケーションがうまく取れずに悩んでいるリーダーが多いのである」(著者)

軍事戦略から生まれた「OODAループ」...政治、スポーツでも活用

   OODAループは、アメリカ空軍大佐のジョン・ボイド氏が提唱した、敵に勝利するための基本理論である。当初は、戦闘機パイロットとしての経験に基づいた、一瞬の戦闘に勝つためのものだった。これに、ボイドが諸科学の知見を取り入れて汎用性を持たせた結果、OODAループは政治、ビジネスやスポーツにまで広く活用されるようになった。

   とくに、欧米では「どんな状況下でも的確な判断・実行により、確実に目的を達成できる理論」として認められるようになっている。世界中の軍隊はもちろん、シリコンバレーを中心に、ビジネスエリートが好んで使う思考法としても知られるようになった。

   思考法の代表的なものに、ロジカルシンキングがある。複雑な問題を整理・分析して道筋を立てることができるが、全てがロジカルに説明できないこともある。コンセプトシンキングは、バラバラの断片的な情報から筋道を立てる手法だが、この手法もかなりレベルの高い仮説力が必要とされる。誰でも簡単に使えるというものではない。

   OODAループと、既存の思考法との明らかな違いは「汎用性」であると考える。誰もが使用できて、同じ回答が導き出されるものでなければ、思考法として意味をなさないからである。

   本書では軍事戦略をベースに、従来のリーダーシップについて話をしていくと同時に、多様化するビジネスでの活かし方について言及されている。組織力をどのように向上させていくのか、さらには事業開発の方法やビジネスでのクリエイティブ設計はどのように深化していくのか。関心のある方には、一読してもらいたい。(尾藤克之)