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話題の「チャットGPT」利用者に聞いた デジタル人材の働き方はAIに代替えされてしまうのか?

   チャットGPTなどのAI(人工知能)の登場で、デジタル人材の業務がチャットGPTに「代替される」と答えた人が半数を超える52.8%だったことが、わかった。

   「Offersデジタル人材総研」を運営するoverflow(東京都港区)が、ITエンジニアやデザイナーでチャットGPTを利用したことがある305人を対象に実施した「デジタル人材の意識調査レポート チャットGPTが与える業務への影響」と題した調査結果を、2023年4月17日に発表した。

   チャットGPTは、開発業務への影響も大きく、ソースコード(プログラムに「どんな動作をさせるか」という処理内容を書いたテキストファイルのこと)の出力や自身が書いたソースコードの添削、定型的な要件定義まで実現できるようになったため、「自身の仕事がAIに代替されるのではないか」と危惧する声が高まっている。

半数近くは、昨年11月の「テスト版」から利用している

図1 半数近くの人がチャットGPTの「テスト版」から利用している(Offersデジタル人材総研調べ)
図1 半数近くの人がチャットGPTの「テスト版」から利用している(Offersデジタル人材総研調べ)

   調査によると、米国企業のOpenAI社が開発したチャットGPTについて「いつから使っていますか?」の問いに、半数近い43.0%の人が、「2022年11月~23年1月(テスト版リリース、ユーザー100万人超)」のタイミングから利用を始めた」と答えた。

   「(チャットGPT Plusが日本で申込可能になった)2023年2月」から利用を始めた人が30.5%。「2023年3月(GPT‐4)」は23.6%と続いた。【図1参照】

図2 「業務上の調べ物」で利用した人は62.3%と最多(Offersデジタル人材総研調べ)
図2 「業務上の調べ物」で利用した人は62.3%と最多(Offersデジタル人材総研調べ)

   具体的に「チャットGPTを何に利用したか?」(複数回答可)との問いには、62.3%の人が「業務上の調べ物」と答え、最も多かった。次いで、「プライベートの調べ物」が55.1%。「試しに使ってみた」という人も39.3%いた。

   また、調べ物だけでなく、36.4%の人が「プライベートのプログラムの作成」と答えたほか、「業務上のメッセージ作成」(29.2%)や「業務上のプログラム作成(27.9%)、「業務上のドキュメント作成」(23.0%)と、業務での利用を模索している動きも確認された。【図2参照】

   「チャットGPTを使ってみて、他の人にオススメしたい使い方は何ですか?」(自由回答)と聞いたところ、調査での利用では、「エンジニア以外への技術解説」や「Google検索に先立って、先にチャットGPTに聞く」といった声や、ドキュメントの利用では「要約、翻訳(極めて精度が高いので)」や「文章の推敲」などの利用があったようだ。

   また、プログラミングやその補助の利用では、「サンプルコードの作成」や「SQLの作成」「コードレビュー」。さらに、「AIコーチング」や「アイデアブレスト」、「壁打ちブレストやUXの疑似インタビュー(下地)」などに利用した様子がうかがえる。

チャットGPTのイメージ「ポジティブ」と答えた人は90%! 理由は?

   「チャットGPTに対するイメージ」について聞くと、「ポジティブ」(「ややポジティブ」38.7%と「非常にポジティブ」51.5%の合算)と答えた人は、じつに90.2%にのぼった。「非常にネガティブ」と答えた人は0.3%、「ややネガティブ」は1.3%。「どちらとも言えない」は8.2%だった。

   さらに、ポジティブとお答えした人に、チャットGPTの「どのような点に期待しますか」(複数回答可)と聞いたところ、「効率化、自動化がすすむ」と答えた人が84.7%にのぼった。次いで、「自身の仕事が楽になる」との回答が58.5%。「生活が便利になる」が52.0%となり、半数を超えた。

   「人手不足の問題が解消される」と答えた人は37.8%。「人間よりも賢い判断が瞬時にできるようになる」と答えた人も22.9%いた。【図3参照】

図3 チャットGPT「効率化、自動化」の進展に期待(Offersデジタル人材総研調べ)
図3 チャットGPT「効率化、自動化」の進展に期待(Offersデジタル人材総研調べ)

   チャットGPTや対話型AIの登場で、「あなたの働き方は変わりましたか?」(複数回答可)と聞いたところ、「業務で新しいとアプローチができた」という回答が40.7%にのぼった。「既存の業務が改善された」と答えた人は36.1%。「既存の業務が置き換わった」は13.4%だった。一方、「変わっていない」と答えた人は37.4%いた。【図4参照】

図4 チャットGPTや対話型AIの登場で「業務で新しいとアプローチができた」人は40.7%(Offersデジタル人材総研調べ)
図4 チャットGPTや対話型AIの登場で「業務で新しいとアプローチができた」人は40.7%(Offersデジタル人材総研調べ)

求められる「ハイレベル」のエンジニア チャットGPTの影響は...

   こうしてチャットGPTの発展によって、「デジタル人材の働き方はAIに代替されると思いますか?」と聞くと、「影響がある」と答えた人が52.8%(「やや影響がある」28.5%と「大きく影響がある」24.3%の合算)と、半数を超える結果となった。

   「あまり思わない」は21.3%。「どちらとも言えない」と答えた人は21.0%だった。「まったく思わない」という人も4.9%いた。

   また、「影響がある」と答えた人に、「どのような点で影響があると考えていますか」(自由回答)と聞いたところ、調査の場面では、以下のような声があがっている。

「単純な資料・データ整理はAIが行い、それを元に価値を見出す仕事が増える」
「チャットGPTの答えの検証が難しいため、エビデンスを求められるような場合は逆に工数が増える可能性がある」

   プログラミングの場面では、

「エンジニアが少なく済む」
「サンプルコードのあり方、仕様書の書き方がチャットGPT前提になる」

だった。さらに他の業務でも、

「『調べずに(チャットGPTに)聞いてしまう』ことに対応していた人や業務が削減される」
「メールの作成や顧客対応の手間が減る」

などの声が寄せられた。

   また、全体的にエンジニアに求められるレベル感も高くなるかもしれない。それに対して、

「少数精鋭でできることが著しく増える」
「簡易なタスクがAIに代替されるため、入社3~5年程度の経験を積んだ人の採用が難しくなるのではないか」

という声も。そのため、チャットGPTの利用には「エンジニア育成の観点からも勘案していく必要があるでしょう」(Offersデジタル人材総研)。

   加えて、カスタマーサポートやヘルプデスクといったユーザーサポート業務も、AIの導入が進むことで、業務量や人員削減が発生するのではないか、という意見があったという。

   なお、調査は「Offers」の登録者で、チャットGPTの利用経験がある人(305人)を対象に、2023年4月上旬に実施。回答者を現在の本業の職業別にみると、「ソフトウェアエンジニア」が51.4%、「デザイナー職」17.0%、「ディレクター職」6.3%、「マネジメント職」5.9%、「機械学習・データサイエンス」5.5%、「インフラエンジニア・SRE」3.2%、「QAエンジニア」1.6%、「コーポレートエンジニア、情シス」1.5%、「その他」7.5%だった。