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いくら教えても反応なし?! リアクションが薄い新入社員をどう育てる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE27(後編)】(前川孝雄)

   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE27」では、いくら教えても反応なし?! リアクションが薄い新入社員の教育に悩むケースを取り上げます。

傾聴は対顧客でも職場でも大切なスキル

   <いくら教えても反応なし?! リアクションが薄い新入社員をどう育てる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE27(前編)】(前川孝雄)>の続きです。

   傾聴力は、新入社員にはかなり高度なスキルですが、仕事を進める円滑なコミュニケーションのためには、やがて必須となるものです。また、上司・先輩の話をしっかり聴き、真意を理解し信頼関係を築くうえでも大切です。

   以下では、傾聴のプロセスを6つのステップに分け、ポイントを示していきましょう。まず上司自らが身につけ、新入社員にも伝授できるようそなええましょう。

■ステップ1...「姿勢」を整える(座り方、視線、動き)

   まず、話を聴く準備と心構えができていることを、相手に示します。椅子に腰かけての対話の場合には、椅子に姿勢を正しく保ちリラックスして座ります。椅子に浅めに腰かけた、やや前傾姿勢がよいでしょう。

   視線は相手の目のあたりを中心に向けますが、凝視しないように気をつけます。身振り手振りなど上半身の動きは自然に行います。自分と相手の座る位置は、正面から対峙せず、90度の角度か隣に座るのがよいでしょう。

   なお、リモートワークでのオンライン・ミーティングの場合には、リラックスした表情や笑顔を心がけ、身振り、手振りはやや大きく、また、はっきりとした聴き取りやすい声で、ゆっくりと話すように、態勢を整えましょう。

■ステップ2...「受容」する(うなずき、相づち)

   共感的な印象を与えるには、相手の話に合わせた適度なうなずきや相づちが効果的です。首を縦に振り、話の要所要所で「はい、はい」「そうですか」などと声を発すると、相手の「聴いてもらっている感、受け入れてもらっている感」が増します。相手の話のリズムや内容に応じて、うなずき方や相づちの速度や深さにも、変化をつけるとよいでしょう。

   リアルの対話では、うなずききや相づちが大げさすぎたり、頻度が多すぎたりすると、わざとらしく見えて逆効果です。ただし、リモートの場合には、ややオーバーアクション気味にして、相手にしっかりと伝わるようにすることが効果的です。

■ステップ3...「共感」する(気持ち、感情のくみ取り)

   「そのように思われたのですね」「それはとても嬉しい出来事でしたね(辛かったものですね)」など、相手の気持ち・感情をくみ取るのが共感です。相手に「気持ちをわかってもらえている感」を与えるのです。

   なお、共感は同調とは異なります。共感が「~と感じたんですね」と相手の気持ちや考えを理解し受け止めるのに対し、同調は「そうですね、私もそう思います」などと相手に同意することです。傾聴のプロセスでは、共感はしても必ずしも同意はせず、異なる意見を持っていても構わないのです。この2つを、はっきりと区別して理解しておくことが大切です。

残り3つのステップとは? 目指すはアクティブリスニングとしての「傾聴力」

■ステップ4...「確認」する(繰り返し、言いかえ)

   次に、相手の話の内容や、気持ち・感情を確認します。その方法として、相手の話のポイントを復唱する「繰り返し」と、相手の言葉を別の表現で確認する「言い換え」が有効です。

   「仕事の大事なポイントは〇〇だ」との言葉に、「〇〇がポイントなのですね」と復唱したり、「ただ、複数の仕事が重なってきた時には、どれから着手するか考えるのが大事だ」とのアドバイスに、「複数の仕事の優先順位づけが大切なのですね」などと言い換える方法です。

   話し相手には、あなたに自分の話や気持ちが伝わったことがわかり、安心と納得が得られます。

■ステップ5...「理解」を示す(要約)

   さらに、相手が伝えたい内容を正しく理解していることを示すために、話の要点を短く伝え返す「要約」を行います。「要点を整理すると、〇〇と○○が課題で、改善のためには○○が必要ということですね」といった具合です。

   要約にあたっては、自分の思い込みの押し付けにならないように気をつけましょう。相手の反応をよく見聴きして、とらええ方にズレがあるようなら、どこにズレがあるのかをきちんと訊き直し、再確認していくことが大切です。

■ステップ6...「訊く力」を発揮する(質問)

   傾聴の真価は、最後に相手に「質問」を投げかけ、内省を促し、より深い考えを聴くことが大切です。ただ一方的に聴くだけでなく、アクティブリスニングとしての傾聴力の発揮です。

   上記までのステップで相手の問題意識や気持ちを把握したら、それについて「なぜ〇〇と思うのですか?」「どのような手立てが考えられるでしょうか?」などと問いかけ、相手にさらに考えてもらい、より深い話や次のアドバイスなどを引き出すのです。

   「聞く力」―「質問力」と「傾聴力」は、コミュニケーション力をアップするために、身につけたい基本の力。新入社員にはぜひ向上をうながし、習得への支援をしていきましょう。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。