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AI×宇宙開発銘柄が登場! Ridge-i(リッジアイ)社員の平均年収はいくら? 気になる業績や将来性もチェック【よくわかる新規上場株】

   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、人工知能(ディープラーニング・機械学習)専門のベンチャー企業Ridge-i(リッジアイ)です。

   2016年、機械学習の一手法である「ディープラーニング技術」を活用したビジネス課題解決を目的に設立。2017年に「AIを活用したモノクロ映像のカラー化」技術をNHKアートと共同開発、2019年に「ごみ識別AIを搭載した自動クレーンシステム」を荏原環境プラントと共同開発しました。

   宇宙関連事業にも積極的です。2018年、AIを活用した衛星データの解析サービスを開始。内閣府主催「宇宙開発利用大賞」の第4回で経済産業大臣賞を、第5回で環境大臣賞を受賞しています。

   2021年1月にオリックスと資本業務提携を開始し、2023年4月26日に東証グロース市場に上場。上場初日は値がつかず、公開価格の2.3倍となる4025円買い気配で取引を終えました。

   なお、リッジアイのリッジ(Ridge)とは「山の稜線(頂上から頂上を結ぶ尾根)」のこと。稜線に立つことで次に登るべき山々が見えてくるように、ビジネスニーズや課題と先端技術がぶつかりながら高みに登ることで、そこから新しい未来の展望へとつながっていくイメージを社名に込めたそうです。

2022年7月期に売上高が急増、前期比2倍超に

   それではまず、リッジアイの近年の業績の推移を見てみましょう。

   リッジアイの売上高は右肩上がりに伸びています。2019年7月期に前期比減となりましたが、その後は回復して2021年7月期までの2年間で1.9倍に。2021年7月期から翌2022年7月期までの1年間で2.3倍に急増しています。

   売上総利益は、2021年7月期の1億9148万円から2022年7月期の6億1257万円へと、一挙に3倍超に。粗利率(売上総利益率)は45.7%から63.2%と大きく改善されています。

   2020年7月期から2年間は1億円を超える当期赤字に陥りましたが、2022年7月期には1.5億円の当期黒字を達成しています。ただし、この期の営業利益は5640万円で、助成金収入5260万円を含む営業外収益が5309万円となっています。

   助成金収入とは、東京都の助成事業「2018年度 次世代イノベーション創出プロジェクト2020」として行っていた「AIによる異常検知簡易検証サービス」の開発完了により発生したものとのことで、一時的なものと見られます。

   直近の業績は、2023年7月期の第2四半期(1月末)の売上高は4億3997万円。四半期純利益は5786万円でした。

AIコンサル事業のフロー収益を、ストック収益につなげる

   リッジアイは、AI/DXソリューションを提供する「カスタムAIソリューション事業」の単一セグメントですが、ソリューションの形態は以下の3つのサービスとなっています。

   「AI活用コンサルティング・AI開発」は、AI/DX戦略を策定し、データ・AIアセスメントや要件定義を経てPoC(実証実験)やAI開発、システム連携までを行うサービスです。さまざまな種類の情報を利用して高度な判断を行う「マルチモーダルAI」をコア技術とする点が特徴とのことです。

   「AIライセンス提供」は、上記コンサル/開発を終えたシステムや機械学習基盤を運用・保守し、事業拡大に向けて活用する際のライセンスを提供するサービスです。フロー収益である「AI活用コンサルティング・AI開発」に対し、「AIライセンス提供」はストック収益となります。

   「人工衛星AI解析」は、衛星解析AIを強みに、データの取り扱いに専門的なノウハウが必要な人工衛星データのAI解析サービスとのことです。

   2022年7月期のセグメント別販売高は、「AI活用コンサルティング・AI開発」が8億9500万円で全体の92.4%を占めており、「人工衛星AI解析」が4441万円、「AIライセンス提供」が2907万円でした。

   2023年7月期第2四半期末時点では、「AI活用コンサルティング・AI開発」は3億7463万円と順調で、加えて「人工衛星AI解析」が5123万円とすでに前期末実績を超えています。「AIライセンス提供」は1110万円でした。

   リッジアイの顧客企業は、現状では大手製造業が多いとのこと。外部販売の主な取引相手は、2022年7月期は三菱商事が4億8545万円で全体の約半分を占め、次いで荏原環境プラントが1億7265万円で13.2%、バルカーが4600万円で4.7%でした。

   なお、荏原環境プラントは、荏原製作所(東証プライム)の子会社として環境プラント事業を担っている会社。前述の通り、「ごみ識別AIを搭載した自動クレーンシステム」を共同開発しています。バルカー(同)は、工業用シール製品などを製造販売する産業用素材製品メーカー。2021年に新規事業開発において資本業務提携を締結しています。

従業員数32人の少数精鋭、平均年収819万円

   設立翌年の2017年12月期にはわずか6人だったリッジアイの従業員数は、1年半後の2019年7月期から15人、28人、31人と増え、2022年7月には37人となっています。

   前述の通り、売上総利益は2021年7月期から2022年7月期へと3倍超、4億2000万円あまり増加していますが、従業員数は6人しか増えていません。

   2022年7月期の従業員一人あたりの売上高は2600万円あまりで、売上総利益は1600万円あまり。従業員数は順調に増えているものの、売上や粗利増加のスピードと比べると「少数精鋭」といえるかもしれません。

   リッジアイの最新の従業員数(2023年1月末現在)は32人で、平均年齢は34.4歳、平均勤続年数は2.5年。平均年間給与は819.6万円です。

   リッジアイの採用サイトを見ると、新卒採用、インターンのほか、エンジニアとビジネスの職種で中途採用が行われています。

   エンジニア職では「開発プロジェクトマネージャー」「ディープラーニング・機械学習エンジニア」「衛星データ活用エンジニア」など、ビジネス職では「若手/シニアDXコンサルタント」「プロジェクトマネージャー」が募集されていました。

   ある転職サイトによると、AIエンジニアの想定年収は年俸制で500~800万円プラス年2回の賞与。月45時間分のみなし残業代を含んでいるようです。

市場は成長するが競争環境も確実に激化

   OpenAIが公開した人工知能チャットボット「ChatGPT」の公開後、人工知能および機械学習に対する注目度合いは一気に高まりました。

   従来は基幹システムの刷新中心だった大企業のDX(デジタル技術を用いた変革)も、AIを使った業務生産性の飛躍的向上のみならず、新たな商品・サービスの開発によるトップライン(売上)の伸長が求められる段階に進むと見られます。

   今後のDXコンサルティングには必ずといっていいほどAIがテーマとなることを考えると、リッジアイがターゲットとする市場が成長することは確実といえるでしょう。

   その一方で、従来DXコンサルティングを行ってきた外資コンサル会社や国内SIerも、AIをテーマとしたDXプロジェクト体制を作って追い上げてくることは確実です。厳しさを増す競争環境の中で、少数精鋭のリッジアイがどれだけ差別化できるかが注目されます。(こたつ経営研究所)