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売上1兆円企業! 山崎製パン社員の平均給与はいくら? 気になる業績や株価の推移もチェック【よくわかる企業分析】

   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、国内製パン業界売上高首位の山崎製パンです。

   山崎製パンは1948年に飯島藤十郎氏が創業し、1966年に東証一部に上場。現代表取締役社長の飯島延浩氏は藤十郎氏の長男で、現在81歳です。子会社51社・関連会社3社でグループを構成しており、傘下には不二家や東ハト、ヴィ・ド・フランスやB-Rサーティワンアイスクリームといった有名企業があります。

製パン業界首位も...コロナ禍で営業利益率1%台に

   それではまず、山崎製パンの近年の業績の推移を見てみましょう。

   山崎製パンの売上高は、年1兆円を超えています。業界2位のフジパングループ本社(非上場)の2689億円(2022年6月期)、敷島製パン(非上場)の1484億円(2022年8月期)と比べると、業界内でダントツ首位にあることが分かります。

   そんな山崎製パンですが、ここ数期は売上高が伸び悩んでいます。特に2020年12月期は、コロナ禍の影響を大きく受けて減少。ところが、2022年12月期でようやく回復の兆しが見えてきました。

   コロナ禍では、量販店やドラッグストアを中心に食パンや食卓ロールの需要が急増し、安定供給が求められました。その一方で、コンビニへの来客数減少による菓子パン、サンドイッチ、おにぎり等の需要減や、フレッシュベーカリー等小売業における休業や営業時間短縮が売上減に影響しています。

   2020年12月期と2021年12月期は、営業利益率も1%台に落ち込みました。ただし、最終利益も含めて黒字経営を維持し続けています。

   2023年12月期の業績予想は、売上高が前期比2.9%増の1兆1080億円、営業利益が同22.5%増の270億円(営業利益率2.4%)、最終利益は同21.3%増の150億円と、コロナ禍前を超える水準となる見込みです。

菓子パンが売上高の3分の1。食パンは1割弱

   山崎製パンの事業セグメントは「食品事業」と「流通事業」の2つですが、売上高の9割超を食品事業が占めています。なお、流通事業は「デイリーヤマザキ」などのコンビニエンスストア事業に加え、2021年12月期より「スーパーヤマザキ」を連結化しています。

   有価証券報告書は、「食品事業」をさらに6つに区分しています。

・食パン:ロイヤルブレッド、超芳醇、ダブルソフト、モーニングスターなど
・菓子パン:ランチパック、ミニパン(薄皮)、主力菓子パン(あんぱん等)など
・和菓子:和生菓子、蒸しパン(北海道チーズ等)、焼菓子(月餅等)、中華まん
・洋菓子:チルドケーキ、シュークリーム、スイスロール、スナックケーキ
・調理パン・米飯類:サンドイッチ、弁当、おにぎり、麺類など
・製菓・米菓・その他商品類:ビスケット、スナック、煎餅

   2022年12月期の売上高構成比(収益認識基準適用前)は、菓子パンが34.2%で最も大きく、次いで製菓・米菓・その他が16.9%。調理パン・米飯類の13.8%、洋菓子の13.1%、食パンの9.0%、和菓子の6.4%、流通事業の5.4%、その他事業の1.2%と続きます。

   これらの事業を担うのは、山崎製パンと子会社51社および関連会社3社。グループ子会社には、不二家(東証プライム市場)やヤマザキビスケット、東ハト、ヴィ・ド・フランス、関連会社には、B-Rサーティワンアイスクリーム(東証スタンダード市場)といった有名企業も含まれています。

   なお、山崎製パンは今年3月末に、神戸屋の主力事業である「包装パン」事業と「デリカ食品」事業の買収を完了しています。

平均給与559万円、「高校生新卒」を含む

   山崎グループの連結従業員数は、2018年12月期の28363人から28724人、29243人と微増傾向にありましたが、2021年12月期に32527人と急増。2022年12月期は32210人となっています。

   2021年12月期の急増理由は、主として海外で食品事業を担うフォーリーブズPTE.Ltd.、PT.ヤマザキ インドネシア他4社を連結の範囲に含めたことによるものです。

   単体従業員数は2018年12月期の19478人から19490人→19832人→19985人と推移し、2022年12月期は19750人。平均年間給与(単体)は559万9080円に。平均年齢38.6歳、平均勤続年数15.2年です。

   なお、山崎製パンの採用サイトを見ると、「大学生新卒」「高校生新卒」「高専生新卒」「中途(地域社員)」の4つの採用ページに分かれています。したがって平均年間給与は、たとえば工場などで勤務する高校生新卒も含めた金額であることを踏まえる必要があるでしょう。

   また、大学生新卒では「生産技術職」「営業職」「店舗運営職」「専門職」「管理部門」の5つの職種で募集が行われていますが、中途採用は「生産職(製造)」「生産職(仕分け)」「セールスドライバー」の3つの職種のみで、すべて転勤のない地域社員のようです。

原材料の高騰を販売価格にうまく転嫁できるか

   山崎製パンの株価は、2018年6月に一時3000円を突破しましたが、その後は下降傾向が続き、最近は1500~1600円あたりで推移しています。

   山崎製パンの事業リスクで気になる点は「原材料の調達および価格高騰」です。輸入小麦、砂糖、油脂、卵や包装資材などの仕入価格が高騰しており、これを販売価格に転嫁できなかったり、調達が難しくなったりした場合には、業績に影響を及ぼすおそれがあります。

   実際、2022年12月期の粗利率は、前期の34.5%から31.9%へ2.6ポイントも悪化しました。そこで販管費を前期比で約8%削減して営業利益率の改善につなげましたが、コストダウンにも限界があるでしょう。

   最近では、2023年1月1日出荷分より「薄皮シリーズ」の内容量を5個から4個に減らし、「ランチパック」3品の価格を平均4.7%値上げして話題になりました。

   売上高1兆円で営業利益率2%前後という薄利多売ビジネスということもあり、今後も適正な価格改定を続ける必要があります。しかしその一方で、消費者の離反を招くおそれもあり、新しい低価格商品の開発を含めた巧みな判断を迫られそうです。(こたつ経営研究所)