J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

三菱商事、三井物産は初の純利益1兆円突破!総合商社、相次ぎ過去最高益 それなのに、24年3月期は減益予想のワケ

   総合商社の業績が好調だ。大手5社の2023年3月期連結決算は、資源価格の高騰や円安を追い風に、伊藤忠を除く4社が最終(当期)利益で過去最高を更新した。

   なかでも三菱商事と三井物産は商社として初めて最終利益が1兆円の大台に乗せた。24年3月期は資源価格の下落や円安修正の影響で、全社が減益予想となったが、この勢い、今後はどうなるのか。

最終減益の伊藤忠は、前の期の一過性利益計上の反動も 基礎収益は2年連続で「過去最高」

   まず、2023年3月期連結決算(国際会計基準)の各社の主な数字をみておこう。

   三菱商事は、売上高にあたる「収益」が前期比25%増の21兆5719億円、純利益が26%増の1兆1806億円。金属資源事業でオーストラリアの原料炭事業が、市況の上昇に伴い好調だった。

   そのほか、東南アジアを中心とした自動車・モビリティ事業や電力ソリューション事業などの非資源事業も伸びた。資源系を除いた純利益は5708億円とほぼ半分を占めており、中西社長は「資源以外の事業もしっかり追い風を捉える力がついてきた」と、手応えを示した。

   三井物産は「収益」が22%増の14兆3064億円、純利益が24%増の1兆1306億円だった。円安や資源高が追い風になった。円安だけで純利益を前期比1590億円押し上げたほか、原油や天然ガス、製鉄に使う原料炭などの市況も770億円の増益効果をもたらした。この結果、エネルギー部門の利益が、前期の1140億円から3094億円に大幅に増えた。

   伊藤忠は「収益」が13%増の13兆9456億円、純利益は2.4%減の8005億円。過去最高だった前の期に、金融決済会社の売却益など一過性利益で計約1300億円計上した反動もある。だが、2期続けて8000億円台となり、石井敬太社長COO(最高執行責任者)は「実力値である一過性損益を除いた基礎収益は、2年連続で過去最高を大幅に更新した」と説明する。

   事業別ではエネルギー、金属などが資源高と円安で利益を増やしたが、三菱、三井と比べ「非資源」の比率が高く、恩恵は限定的で、前者の利益で2社の後塵を拝した。それでも消費者ニーズを事業化につなげる「マーケットイン」戦略を掲げ、非資源事業の利益を2年で3000億円程度から6000億円規模まで倍増させている。

   丸紅は「収益」が8%増の9兆1904億円、純利益は28%増の5430億円。海外での電力販売や航空機のオペレーティングリースが好調だったほか、オーストラリアでの原料炭事業も堅調だった。

   住友商事は「収益」が24%増の6兆8178億円、純利益は22%増の5651億円。金属事業が北米で鋼管の市況が好調に推移したことや、資源・化学品事業で資源・エネルギー価格の上昇などが、利益を押し上げた。

この好調はいつまで? 今期は、資源などの市況の上昇が一段落か 今後の柱に脱炭素、デジタル

   この好調は続くのだろうか。

   各社の2024年4月期の純利益の予想は、資源などの市況の上昇が一段落して下落に転じるなどとして、一転して全社が減益の見通しを示している。

   三菱商事が前期比22%減の9200億円、三井物産が22%減の8800億円、伊藤忠が2.6%減の7800億円、丸紅が23%減の4200億円、住友商事は15%減の4800億円を、それぞれ見込んでいる。

   「過熱気味だった市況が落ち着きを取り戻す前提を置いた」(中西勝也・三菱商事社長)などと、各社、堅く読んだ数字であることを強調。「より次元の高い取り組みで、価格変動に耐えられるようにしたい」(堀健一・三井物産社長)というように、資源や為替に大きく左右されない事業構造の構築が引き続き各社共通の課題だ。

   そこで、脱炭素やデジタルなどを中心に、持続的な成長モデルの確立が大きな柱になる。

   三菱商事が「脱炭素投資2兆円」を打ち出し、23年3月期までに3000億円を投じ、国内外で洋上風力発電の開発を進めているが、こうした投資をしっかりと「稼ぎ」に結実できるかがカギになる。

   また、コンビニのファミリーマートなど「川下」事業に力を入れる伊藤忠は、資源価格の変動などでも利益がぶれにくいのが特徴で、こうした強みを生かして着実な成長を目指すことも重要だ。

大手商社株、バフェット氏が大量保有で話題に 株主還元をいっせいに充実へ

   大手商社といえば、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が21年3月期から大量保有を始めている。

   21年3月期と23年3月期を比べると、21年3月期は赤字だった住友商事を除く4社計の純利益は計1兆1346億円だったのが、23年3月期は3倍以上の3兆6547億円に増えた。この間、各社の株価もおおむね2~3倍に上昇している。

   今後もバフェット氏の「期待」に応えるべく、持続的成長の道筋を示し、実行することが不可欠だが、「株主還元の充実も避けて通れない」(アナリスト)。24年3月期、各社は減益見込みながら、株主還元をいっせいに拡充する。

   三菱商事が過去最大の3000億円(発行済み株式総数の6%に相当)を上限とする自社株取得枠を設定。丸紅と住友商事も追加の自社株買いを発表した。

   伊藤忠は年間配当を前期比20円増やし160円とした。三井物産も配当を10円増の150円にし、26年3月期までは年150円を下限とするとしている。(ジャーナリスト 済田経夫)