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企業公式アカウントに個性は必要、でも... SNS運用「任せて安心」な人

■短期集中連載(最終回)

   タカラトミーとタイツメーカー・アツギの企業公式アカウントが起こした炎上騒動。前回の記事で、ガイアックス(東京都千代田区)ソーシャルメディアマーケティング事業部の重枝義樹部長は、企業にとって「万人に配慮することはもはや不可能な時代」と指摘。それを受け入れ、自分たちらしい発信を行うことが重要だと話した。

   最終回は、ツイッター担当者として望ましい人物像、ツイッター運用における「個性」の出し方を分析する。

  • 企業公式アカウントに「個性」は必要か
    企業公式アカウントに「個性」は必要か
  • 企業公式アカウントに「個性」は必要か
  • ガイアックス・ソーシャルメディアマーケティング事業部の重枝義樹部長

一見矛盾した人格が同居しているとよい

   重枝氏が考える「ツイッター運用を任せた方がよい人」は、以下のようなタイプだ。

・趣味に強い愛情を持っているが、趣味の外側にいる人たちにも配慮できる視野と冷静さを兼ね備えている
・「ノリがよい話好きだが、ノレない人にも配慮できる視野と冷静さを兼ね備えている」という、一見矛盾した人格が同居している

   重枝氏は、アツギ担当者を「趣味への知識と愛が強いタイプ」と見ており、「実はそういう人たちは、SNS運用だといい動きをすることが多い」。趣味への豊富な知識によって、SNSで注目を集める発想ができるためだ。一方で「自分の趣味への愛着が強すぎるために視野狭さくに陥って、顧客への配慮を失うリスクもある」。

   積極的にユーザーとかかわれる人も運用担当者に向いているというが、こちらも「その場のコミュニケーションのノリを重視し過ぎて、その外側にいる人たちへの配慮を忘れることがある」と重枝氏。上記タイプに共通する「視野」と「冷静さ」を、常に損なわないことが望ましいのだ。

公私混同は煙たがられる恐れ

   企業公式アカウントの個性について、重枝氏は「発言には個性が表れていた方がいい」と賛成の立場だ。気を付けるべきは、個性を出しながらも、その企業にとって誰が顧客で、その顧客にどのような価値を提供しているかを忘れないこと。また、こうした人たちの価値観を否定する、あるいは嫌悪を与えるような表現を避ける。

   個性と言っても、出すべき部分とそうでない部分があるだろう。例えば、「記念日」にまつわる祝福ツイート。企業の創立日ではなく「ツイッター担当者の誕生日」を一つの話題にしてフォロワーと交流をするアカウントもある。祝福するユーザーもいれば、「どうでもいい」と冷ややかな視線も。ある意味、公私混同と受け取られかねない話だ。重枝氏は、出すべき個性と出すべきではない個性について「予め線引きできない」としつつ、こう続けた。

「中の人の誕生日をユーザーたちが祝ってくれて、企業の情報を拡散してくれたり、お祝いで製品を購入してくれたりはあるでしょう。だが、誰か他の人の誕生日を祝っている時に、全然違う日の自分の誕生日をアピールしたら『空気を読めよ』となる可能性もあります」

   アツギの炎上にも、「誕生日を祝う」投稿が関わっている。現在は投稿が確認できないが、20年9月29日に、「#ラブタイツ」企画にも参加した、あるイラストレーターの誕生日を祝うリプライを送っていた。このイラストレーターの作品をアツギが日頃頻繁にRTしていたこともあり、炎上の際に「公私混同」だと指摘する声が殺到した。

   見極めるべきは個性の出し方や「あんばい」よりも、誰が顧客か、その顧客にどのような価値を提供しているかという「ポジション」だ。

(この連載おわり)