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ツイッター運用「つらいなら休む」もアリ 目的に応じた判断を

■短期集中連載「SNS改革」(第3回)

   SNSマーケティング支援を手掛けるテテマーチ(東京都品川区)の力を借り、J-CASTトレンド(以下、トレンド)公式ツイッターアカウントを改革する様子を数回に分けて伝える本連載。

   第2回は「記者による独自企画」と「記事を画像で紹介する」ツイートに注力した結果を振り返った。いずれも一定の成果は出たが、テテマーチ社のアドバイザーは、何のために企画を行うのか「ゴール」を設定するようアドバイス。「◯◯できるようになるまで×日」と期限を明示したり、応援してくれるフォロワーにプレゼントしたりするのが例だ。2022年1月中旬から半月に渡り、更なる運用改善に挑んだ。

  • 3回目にして「全体的にエンゲージメントが伸び悩んだが、よいところがはっきりしてきた」
    3回目にして「全体的にエンゲージメントが伸び悩んだが、よいところがはっきりしてきた」
  • 3回目にして「全体的にエンゲージメントが伸び悩んだが、よいところがはっきりしてきた」

画像ツイートは低迷

   トレンドが展開している独自企画は、以下の三つだ。

(1)製麺機のある生活:料理が得意な記者が私物の「製麺機」との暮らしぶりを写真や動画でシュールに紹介
(2)Jミーのアイスタイム:甘いもの好きの記者が平日夜にアイスを食べ、画像ツイートで紹介
(3)J子一発芸習得するってよ:トレンドツイッター担当者「J子」(本稿執筆者)がボールジャグリングなど一発芸の練習動画(20秒前後)を投稿し、上達過程を見てもらう

   それぞれ (1)そば粉やライ麦粉など、「50種類の材料で麺作ってみる」チャレンジを実施、(2)ツイート末尾で「最近食べたアイスがあれば教えてください」と呼びかけ、リプライを促す、(3)一発芸の練習動画を上げ、「習得」できたと言えるかフォロワー投票で決める、など工夫を凝らした。(1)と(3)は目標を明示し、フォロワーが見続けたくなる挑戦、(2)フォロワーとの交流と、記者に話しかけやすい雰囲気づくり、がゴール設定だ。

   企画担当者が、ゴール設定後の運用から得られた所感はこうだ。

(1)製麺機のある生活:「50種類の材料で麺作ってみる」チャレンジ第一回が最も盛り上がった。続けるにつれ反応数が減っているが、毎回違うフォロワーからリプライをもらえている。チャレンジ達成に向け、投稿を続けたい。
(2)Jミーのアイスタイム:話を投げかける書き方にしてから、リプライが増えた実感がある。本企画を通じて知り合えたフォロワーが名前を覚えてくれ、別の機会に話しかけてくれたのがうれしかった。
(3)J子一発芸習得するってよ:なかなか「習得」認定がもらえないが、応援やイジりのリプライが寄せられ、フォロワーに楽しんでもらえていると感じた。

   記事を画像にして紹介する「画像ツイート」は週に一度、J子が作成し投稿。例えば、ゆうちょ銀行の「硬貨取扱料金新設」という時事に絡めたツイートを行った。

   画像枚数が多いほど、得られるエンゲージメント(ツイートへの反応数)が増すとわかっていたが、業務の合間に作れるのは2枚がやっと。結果は「いいね13、RT14」と、労力ほどの反響に結びつかなかったと感じた。

全体の結果はふるわず、でも「光明」が

   テテマーチの井村桃子さんは半月分の運用データを分析し、アドバイスをくれた。第一回、第二回の改革時と比べて記事中心の投稿となったため、全体的にエンゲージメントが伸び悩んだが、よい点がはっきりしてきたため、「次への投資になっている」との総評だ。

〇井村さんのワンポイントアドバイス
(1) フォロワーとのコミュニケーションのためには「オリジナル投稿」が不可欠。
(2) 「製麺機のある生活」企画に、さらなる工夫を。
(3) 画像を複数枚入れた投稿に再挑戦を。

   特にリプライを得やすいのは、運用者の人柄が出る「オリジナル投稿」だ。朝のあいさつや「Jミーのアイスタイム」に加え、「忙しくても、夕方などに一言でも交流目的のツイートを」と井村さん。毎週、オリジナル投稿を何回行う、この曜日はマストでツイートする、などルールを決める方法があるという。

   「製麺機のある生活」はインプレッションが高い。「画像が特徴的なので、フォロワーが思わず手を止めて見ている可能性がある」そうだ。ただエンゲージメントは低め。画像を見るだけで、いいねやRT、リプライといった行動にまで結びついていない、と考えられる。

「アイス企画同様、どういう行動をしてほしいかを示し、参加へのハードルを下げる工夫が必要です。麺レシピ募集をする、『右と左、どっちのラーメンがおいしそう?』と聞くなどですね」(井村さん)

   画像ツイートには課題が多く残った。1ツイートに添付可能最大枚数の4点貼り付けていたときと比べ、エンゲージメント(画像クリック数)が減っているという。ツイートに画像を2点しか添付できなかったことに伴い、反応数も落ちたのだ。

運用者の「メンタル面」も重要項目

   分析を聞き、記者は運用への迷いや不安が膨らんだ。オリジナル投稿が減った一番の理由は忙しさでなく、「ゆるいツイートをするのが怖くなった」からだ。

記者「フォロワー数3.6万なのに、たまに1ケタしか『いいね』がつかないことがあって怖いんです。面白くない、滑っていると思われるのではと」
井村さん「気持ちはよくわかります。J子さんが運用を開始した2、3年前と比べ、エンゲージメント獲得が徐々に難しくなっているため、『昔より難易度が高いことに頑張って取り組んでいる』と思うようにしてみてくださいね」

   理由は諸説あるが、「RTへのハードルが上がった」ことが考えられるそうだ。「自アカウントのタイムラインに、他アカウントの投稿を入れたくない」と考える人や、「いいね」をした投稿もフォロワーに表示されるようになったため「RT」するほどではないと判断するケースが増えてきたという。

井村さん「運用を頑張るための原動力は人それぞれです。J子さんの場合、気の持ちようで解決しないなら、担当から一度離れるのも手ですよ」
記者「他の人に任せたり、フォロワーに事情を話したりしてお休みするわけですね」
井村さん「そうです。ただ、説明もなくいきなり1週間、1か月と不在にし、アカウントの更新が止まると不信感につながるので注意が必要です」

   「フォロワーを悲しませたり、『裏切られた』と感じさせたりしなければ、基本的には全部正解」と井村さん。ツイッターは「投稿への反応がすぐ返ってくるため、PDCAサイクルを早く回せる」点に魅力があるという。そのため、他事業と比べてチャレンジを「細かく、短く」できるのだ。新しく始めた企画でも方法が合わない、手間に見合わない、運用目的に合致していないなら、思い切って「すぐにやめる」のも戦略だ。

井村さん「運用結果を確認し、企画を続けるならブラッシュアップしましょう。やめるにしても、内容が悪かったと断定しないように。実施タイミングや投稿文、画像を変えるだけで同じネタでも上手くいく場合があります」

   次回は、作業時間が多く取られ、反響がさほど得られない画像ツイートを一度止め、その分「オリジナル投稿」の強化に回すよう舵を切る。


大手文具メーカー広報、大手化粧品メーカーのブランディング担当を経て、2020年にテテマーチに入社。
SNSのプランニングディレクターとしてツイッターやインスタグラムの戦略立案を担当。2021年に広報責任者に着任し、立ち上げに従事。