なぜ若者は殺し合ったのか?「実録・連合赤軍」DVD発売

   団塊の世代がまだ20代前半だった1972年、同じ年頃の若者たちが起こした「連合赤軍事件」が列島を震撼させた。特に、警察との銃撃戦がテレビ中継されたあさま山荘事件と、集団リンチで12人もの死者が出た山岳ベース事件は社会に大きな衝撃を与えた。当時の学生運動の鬼っ子として生まれた連合赤軍。その内部で何が起きていたのかを映画化した「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」のDVDが2009年2月27日、発売された。

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「なぜあんな事件が起きたのかを描きたかった」


事件から35年後に製作された「実録・連合赤軍事件 あさま山荘への道程」

   連合赤軍事件をテーマにした映画は、「光の雨」(高橋伴明監督)や「突入せよ!あさま山荘事件」(原田眞人監督)など、すでにいくつか存在する。今回あえて映画を製作した理由について、若松孝二監督(72)は次のように話す。

「どの映画も僕は『違う』と思った。特に『突入せよ!』は権力側の視点で一方的に撮っているだけで、彼らがなぜあんな事件を起こしたのかが全然描かれていない。僕はあさま山荘に立て籠もった板東国夫(逮捕後、超法規的措置で釈放・国外脱出)から直接、内部の様子も聞いたことがある。当時の事情を知っている映画監督はもう自分くらいしかいないから、もう年も年だし、撮っておかないといけないと思った」

   映画では、坂井真紀やARATA、並木愛枝らが演じる当時の大学生たちがどのようにして事件を引き起こしていったのかを丹念に描く。追い詰められた状況の中、仲間を集団で殴って殺してしまうリンチのシーンは凄惨で、目をそむけたくなるほどだ。

「映画を見る人には、もし自分があの団体の中にいたらどうなるか、と考えてもらいたい。あの中にいたら(仲間を殴れという)命令に従うか、親分の森(恒夫)と永田(洋子)を殺すかしか、助かる道がない。もしかしたら、自分もああなるんじゃないか、と」

「事件を知らない若い人にこそ見てほしい」


「連合赤軍の連中も、もともとは優しいヤツだった」と言う若松孝二監督

   1970年代以降に生まれた者には、連合赤軍事件のリアルタイムの記憶はない。「鉄球が山小屋にバンバンぶつけられた事件」として過去のニュース映像で知るにすぎない。だが、そんな世代にこそ映画を見てもらいたいと、若松監督は語る。

「日本の昭和という時代では、戦争と連合赤軍の二つがもっとも大きな事件だと思う。ましてや、明治以降で国家に銃口を向けたのはこの事件しかないんだから、知らん顔して通るわけにはいかない。若い人の頭には、テレビで見た"鉄球ボンボンの映像"だけが残っているんだろうけれども、はたしてあれは何だったのかということは誰も教えてくれない。この映画を見て初めて本当のことが分かったという人も多いんだよ」

   「実録・連合赤軍」は、キネマ旬報2008年邦画ベストテンで3位に選ばれたほか、毎日映画コンクール「監督賞」「撮影賞」などを受賞した。DVDは4935円で、CCREから販売される。

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