東京地検特捜部の「絶望的な」歪みとは 「自分たちの『正義』だけで企業を踏み潰す」

   自らの歪んだ正義や意図によって政治に過剰介入し、冤罪を生み出している検察への批判が、いまほど強くなったときはない。

   その検察が自らの「正義」だけを楯に、中小企業を追い落とす実態を告発する、石塚健司著『四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日』が、講談社から2012年9月7日に発売された。

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「粉飾決算し詐欺容疑」の実態


『四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日』

   2011年、東京地検特捜部は、中小企業経営者2人とそのコンサルタントを、粉飾決算書で銀行から融資を受け、お金を騙し取った詐欺容疑で逮捕した。しかし実態はまったく違っていた。

   銀行は中小企業が融資を申請する場合、決算書が黒字であることを要求する。銀行融資が入れば立ち直るケースでも、決算書が赤なら融資ができずに倒産することが多い。そこで融資を引き出すためやむなく取る措置が粉飾決算だ。コンサルタントは検察の理解を求めて一切を説明した。しかし検察は粉飾そのものが悪だと譲らない。

   別のコンサルタントは、粉飾した決算書で「東日本大震災復興緊急保証制度」を使った融資を引き出したのではないかと追及される。なるほど「震災詐欺」なら新聞の見出しが立つ事件になると著者の石塚氏は思い当たる。

   コンサルタントには詐欺の成立要件である利得がなく、本来なら逮捕できるようなことではない。しかし震災復興のお金をかすめ取った悪徳コンサルタントという図式にすれば、不祥事続きで失墜した特捜部の名誉を挽回できる事件になる。それこそ検察のねらいではないか――

中小企業の苦境

   著者は憤る。粉飾自体はたしかに悪いことだ。しかし、粉飾はほんの一部の悪徳企業がしていることではなく、中小企業約四〇〇万社のうち7割以上がしていると言われている。

   中小企業が粉飾決算をしないと生きていけない苦境に、検察は正面から向き合わず、自分たちの事件の見立てだけで「正義」を押し通す。そして業績が立ち直りかけていた会社の経営者を逮捕する。その会社は銀行取引をストップされ、従業員は職を失い、取引先は連鎖倒産する。家族や親類まで「犯罪者」扱いされる。こんな"絶望的な"ことがあっていいのだろうか?

   真相を探ると見えてくる、わが国の経済と司法の深刻な病が、本書では描かれている。

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