霞ヶ関官僚が読む本
日本が加盟して50年、OECDは不変の世界最大シンクタンク

   中央省庁の役人の仕事の大きなものの1つに、海外との比較資料を的確に作成するということがある。そんなときに、使用するデータは、OECD(経済協力開発機構、Organisation for Economic Co-operation and Development)由来であることが多い。

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先進34か国集まる唯一の国際機関


図表でみる世界の行政改革 OECDインディケータ(2011年版)

   この機構は、国際経済全般について協議することを目的とした、民主主義を原則とする34か国の先進諸国が集まる唯一の国際機関だ。加盟国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国である。

   刊行当時、OECDについての唯一の邦文の解説書と自負する「OECD(経済協力開発機構)-世界最大のシンクタンク」(村田良平著、中公新書、2000年)のあとがきには、「OECDは日本において"知る人ぞ知る"国際機構にとどまり続けたが、この機構で行われた作業、その成果としての報告書、そして事務局が作成する多岐にわたる統計は、国会における立法、各省庁の政策立案、大学や研究機関における研究活動にとり、従来からも欠かせないものであった」とあるが、今もそれは全く変わっていない。

   なお、近時のOECDの動向については、財務省の広報誌「ファイナンス」の2012年1月号から4月号にOECDに関する特集記事が組まれ、ネット上からもアクセスできる。

   1964年、このOECDに、日本がオーストラリア・ニュージーランドに先駆けて21番目に加盟してから、今年はちょうど50年となる。先進国クラブであるOECDに加盟できたことは当時の日本にとって画期的なことであった。この5月に予定されている年1回の閣僚理事会の議長国は、日本が務めることが決まっている。

客観的資料として貴重なOECD報告書

   様々なOECDの報告書については、翻訳もなされており、客観的な資料として貴重なものだ。例えば、「図表でみる世界の行政改革 OECDインディケータ(2011年版)」(平井文三監訳、明石書店、2013年 「Government at a Glance 2011」の全訳)は、OECD設立50周年にあわせて2011年に発表されたものである。この2011年版においては、リーマンショックで膨れ上がった財政の再建(Restoring Public Finances)が特集され、先進国ではこの問題が普遍的に課題とされていることがわかる。また、政府の信頼を確保するための予算の透明性、公務員の清廉性などが重視されている。

   ネット上の「社会実情データ図録」を主宰する本川裕氏の近著「統計データが語る日本人の大きな誤解」(日経プレミアシリーズ 2013年)の第1章第4節「誤解されている政府の大きさ」で、「Government at a Glance」の2009年版のデータが使用され、「日本はOECD諸国の中で最も『小さな政府』に近い存在である。政府(中央、地方)のサービス水準に問題があるとすると、その原因は、政府の非効率・無駄遣いなのか、それともそもそも規模の小ささなのかを疑わなくてはならない」と冷静に指摘する。昨年11月公表の2013年版は、政府の信頼度の低下と資源の制約への対応について分析を深めているが、この翻訳も待たれるところだ。

経済官庁(課長級 出向中)AK

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