Xmasトリビア! 「ジングル・ベル」は、もともと「あの競争」用の曲だった

   政治的には力が落ちたと言われても、アメリカの文化的影響力は絶大なものがあります。イギリス発祥でも、アメリカで発達した「ハロウィーン」も日本ではすっかり市民権を得て、さらには、本家ヨーロッパでも、あまり関係のなかったフランスなどでも知られるようになってきました。最近では、日本でも「ブラックフライデー」というフレーズが聞かれるようになりましたが、商業化の波に乗って、アメリカ発祥のこういった習慣が全世界に輸出される・・というのを見ていると、まだまだアメリカの商業文化的伝播力のすごさを感じます。

楽譜に記された題名は「1頭立てのオープンのそり」
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クリスマスもトナカイも登場せず

   ブラックフライデー・・そして、インターネット販売で日本でも最近聞かれるようになったサイバー・マンデーは、ともに感謝祭の祝日に関連した催しです。感謝祭は、アメリカでは、11月の第4木曜日です。アメリカでは、木曜日であるため、金曜日も休みにして週末までの4連休とすることが多く、クリスマスシーズンの12月を控えているために、その金曜日を「黒字の金曜日」ことブラックフライデーとして、デパート・大型ショッピングモールなどが一斉セールを行い、たくさんの買い物客であふれる・・というのがアメリカの毎年の風景ですが、日本では、バーゲンセールだけが、先行して輸入されているような状況です。

   ところで、アメリカ先住民と欧州からの移住者のあいだの交流を源流として持つ、アメリカの「感謝祭」用に作られた歌が、日本でも大変有名なのをご存知でしょうか?

   その曲は、現在に「ジングル・ベル」として知られている曲です。1857年、ボストンの教会の牧師だったジェームズ・ロード・ピアポントが、自分の教区の感謝祭のお祭りのために、教会の合唱団が歌うために作詞作曲したといわれています。オリジナルの題名は、「One Horse Open Sleigh」(1頭立てのオープンそり)というもので、18世紀に盛んにおこなわれたそりレースに興じる若者たちを歌ったものだとされています。

   確かに、本来は4番まである歌詞を検討してゆくと、そこには、クリスマスもトナカイも登場しません。あくまでも1頭の馬が引いているらしいそりのレースで盛り上がる人々の様子が描かれているだけです。冬の始まりのシーズン、11月末の感謝祭のシーズンを盛り上げるにふさわしい曲だということがわかります。

「なんて楽しい1頭立てのそり!」

   しかし、軽快な音楽がもつ魅力でしょうか、次第にこの曲は人々の評判となり、感謝祭シーズンを大幅に超えて、クリスマスシーズンまで歌われるようになりました。日本語の歌詞では、「今日は楽しいクリスマス」という翻訳がされていることが多い末尾の部分ですが、これはいわば「替え歌」で、オリジナルにそのような歌詞はありません。この部分の英語のオリジナル歌詞は「なんて楽しい1頭立てのそり!」と、歌っているのです。

   心が浮き立つようなメロディー、そして、もともと橇の競争を歌った活力あふれる歌は、アメリカ以外では、内容が違った歌詞がつけられることも多く、フランスでは、ジングルベル~(ベルを鳴らせ!)のリフレインの部分に「風が吹く、風が吹く、冬の風が吹く!」という歌詞が当てられ、新年にあたり昔を回想する老人の歌、といった内容の歌になっています。

   「ジングル・ベル」は、もはや橇を引くのが馬かトナカイかなどは現在では問題にならず・・国によってはそりでさえなく、世界で最も歌われる「クリスマスの歌」として世界中で愛唱されています。

本田聖嗣

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