コロナワクチン2回では不足か 海外では3本目打つ「ブースター接種」

   新型コロナウイルスのワクチンについて「ブースター接種」という言葉をしばしば耳にするようになった。既定の接種回数では効果が不十分なので、追加接種することを指す。コロナとの闘いはなかなかゴールが見えない。

ワクチン接種を2回終えた人は、日本ではまだ少ない
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1年以内に再接種が必要になる

   「ブースター」というのは、英語で「押し上げる」という意味だ。エンジンの推進力を「積み増し」(ブースト)する場合によく使われる。最近では、秋田県に計画されていた新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画が突然停止になったときにメディアで頻発した。

   この計画を断念することになった大きな理由は、「ブースター問題」だったからだ。国は、迎撃ミサイルを発射した際に切り離す「ブースター」と呼ばれる推進補助装置が、安全な場所に落下することを確約できなかった。地元住民に不安感を与えないようにするには、ミサイル本体も含めた改良が必要で、約10年、2000億円がかかることがわかり、計画を断念したと報じられた。

   ワクチンの世界の「ブースター」は、主として最初に打ったワクチンの効果を持続・強化するために、さらに接種を追加する場合に使われる。インフルエンザのワクチンを人によっては2回打つのもブースターだ。

   新型コロナワクチンに関し、比較的早くにこの問題を取り上げたのは米CNNだ。5月20日には「新型コロナワクチン、1年以内に再度の接種が必要になる見通し」と報じている。米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が、「ワクチンの効果は少なくとも6カ月、恐らくはそれ以上続くことが分かっている。だがほぼ間違いなく、1回目の接種から約1年以内にブースターが必要になる」と語っていた。

製薬会社は臨床試験進める

   7月1日にはTBSが「イギリス 9月にも"ブースター接種"開始へ 新型コロナワクチンで」と報じた。朝日新聞も同2日、「世界で動き出す追加接種ブースター 『最強の保護策』」と各国の取り組み状況をまとめている。

   「ブースター促進」については未解決の問題も指摘されている。ロイターが6月28日に報じたところによると、米疾病対策センター(CDC)はブースター接種を奨励していないという。というのは、「ワクチンの免疫効果が弱まると示すデータはまだ多くない」からだ。

   その一方ですでに製薬会社は治験を進めているようだ。朝日新聞によると、モデルナは5月、3回目の追加接種をした40人の臨床試験の初期の結果を公表。モデルナ製を2回接種し、6~8か月が経過した人たちの約半数は、ブラジルで見つかった変異株(ガンマ株)と南アフリカで見つかったベータ株に対する抗体が検出できなかったが、3回目の接種後は抗体が確認できたという。

   インドで見つかったデルタ株については、英医学誌ランセットに発表された論文によると、ファイザー製のワクチンを2回打てば、感染予防の効果が79%あったという。ただ、ファイザーも2回接種してから半年以上たった人を対象に、3回目の接種をする臨床試験を始めているそうだ。

まだ1回目が終わらない

   ワクチン接種が進む英国では9月からブースター接種も始めるという。TBSによると、まず70歳以上の人や、介護施設の入居者、新型コロナの重症化リスクの高い持病のある人、医療従事者などから始め、終わり次第、50歳以上の人に移っていく予定だ。

   日本の対応について、加藤勝信官房長官は1日、「3回目接種の必要性について、新型コロナワクチンの効果はどの程度の期間持続するのか等に関する情報を踏まえ、検討していく必要があると考えております」と記者会見で答えている。

   しかしながら日本では1回目の接種もまだ不十分。国からの供給不足で、必要な新型コロナワクチンを確保できず、予約受付停止を余儀なくされる自治体が少なくない。企業の職域接種も休止になってしまった。そのため加藤長官は「一日も早くすべての希望する国民が2回の接種をまず受けられるよう取り組んでいく」と、ブースターの前にやるべきことがあることを強調している。

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