ワクチン2回接種後の「本当の効果」 東京「死者2人」の事情をひもとく

   新型コロナウイルスのワクチン効果について、様々な調査結果が出ている。多くの人にとって気になるのは、2回の接種を済ませたら大丈夫なのかということ。大阪府は「重症者も死者もゼロ」だというが、東京都は「死者2人」。調査結果に多少のばらつきがあり、2回接種後も油断できない状態だ。

今もワクチン接種が続いている
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軽症が多い

   大阪府は2021年8月18日に開いた新型コロナウイルス対策本部会議で、ワクチンと感染の関係を公表した。産経新聞によると、3月1日から8月15日までに確認された新規感染者計約8万5000人のうち、2回目のワクチン接種後、免疫を獲得するとされる2週間以上が経過して発症した人は317人(0.4%)にとどまっていたという。重症者や死亡者はいなかった。

   吉村洋文知事は対策本部会議後の記者会見で、「ワクチンを2回打って14日たてば発症自体を抑え、重症化や死亡リスクを下げる効果が非常に高い」と語った。

   一方、東京都では、ワクチンを2回接種したにもかかわらず、2人目の死者が出たことが報じられた。1人は70代の女性で、6月中旬に2回目のワクチン接種を済ませていたが、7月29日に感染が確認され、今月16日に死亡した。もう1人は60代の男性で、今月12日に亡くなったという。

   こうした情報は、散発的に各自治体から発信されている。埼玉新聞によると、埼玉県では12日、県管轄で968人が新規感染。そのうちワクチン2回接種済みが36人で、いずれも重症化していないという。

   読売新聞によると、和歌山県では、7月11日から8月10日の新規感染568人のうち25人は2回接種を終えていた。大半は軽症か無症状だったが、2人は酸素投与が必要だった。しかし、人工呼吸器が必要なほど重篤になる例はなかった。

   仙台市では、7月中旬から8月18日までの新規感染者約1600人のうち、60人が2回目の接種後に感染していたという。

高齢者の致死率は下がる

   日経新聞によると、厚生労働省は18日、未接種で感染した人は人口10万人当たり67.6人、2回接種後の人は4人で、15分の1以下になったと明らかにした。

   10~12日に全国で新規感染した約5万7000人の接種歴を調べてわかった。2回接種を終えた人の感染は約1700人で約3%だった。

   NHKは12日、「2回接種済の高齢者致死率 未接種の人の約5分の1」と報じている。厚生労働省が、感染者の情報を集約するシステム「HER-SYS」のデータをもとに6月の1か月間に登録された5万2743人の感染者のうち、死亡した人の割合を年代別に分析した。

   それによると、65歳以上では感染した6931人中、亡くなったのは282人。致死率は4.1%。かなり高い。65歳未満では感染した4万5812人中、亡くなったのは35人で、致死率は0.08%。年齢によって致死率に大差があった。

   65歳以上で亡くなった人で、ワクチン接種を受けていない人は、232人。致死率は4.31%。2回の接種を終えた人では112人中1人で0.89%。致死率は接種を受けていない人のおよそ5分の1だったという。

調査方法にばらつき

   こうしたデータには、多少のばらつきがある。一つは調査時期。大阪府の調査は3月を起点としているので、感染者全体に占めるデルタ株感染者が少ないと見られる。一方、厚労省の10~12日の調査は、直近の状況を示している。「新規感染者の3%が2回接種者」という結果は、同じく直近の調査をもとにしている埼玉、仙台、和歌山のデータとおおむね一致する。

   もう一つは、「2回目接種」から何日を経過しているか。大阪の調査は、「2回目のワクチン接種後、免疫を獲得するとされる2週間以上が経過して発症した人」となっており、ワクチン効果が確実に表れた人を対象にしている。そのこともあり、他の調査よりも、ワクチン効果が高く出ていると推測される。

   各調査をまとめると、「新規感染者の約3%はワクチン2回目を接種済み。ただし大半は無症状か軽症。東京のように感染爆発し、感染者が多くなると亡くなるケースもある」というところだろうか。

   読売新聞によると、和歌山県福祉保健部の野尻孝子技監は「ワクチンの効果はきわめて高く、接種を推奨するが『祖父母は2回ワクチンを打ったから大丈夫』とお盆に帰省されると感染する可能性がある。2回接種を終えた人同士で接触して感染した例も複数あり、感染予防対策はきちんと実施してほしい」と話している。

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