ウクライナから国外に420万人避難 隣国ルーマニアで日本の団体が支援

   ロシアに侵攻されたウクライナでは、戦禍を逃れようと多数の避難民が出ている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシアの攻撃が始まった2022年2月24日以降、国外に避難したウクライナ人の数は、4月2日までで420万人に迫る。

   日本の民間レベルで、ウクライナへの支援は広がっている。ピースボート災害支援センター(PBV、東京都新宿区)は、ウクライナからの避難者数がポーランドに次いで多いルーマニアで支援活動を実施。3月29日、現地入りしているスタッフからの報告会がオンラインで行われた。

ルーマニア・ブカレスト北駅。ウクライナからの避難民が大勢到着する(写真提供:ピースボート災害支援センター)
ブカレスト北駅には、地元団体が難民に食事や各種ケアを提供する場所がある(写真提供:ピースボート災害支援センター)
クルジュ・ナポカ駅に設置された休憩所(写真提供:ピースボート災害支援センター)
ウクライナとルーマニアの国境付近にかかる橋。避難してくる子どもたちのためにと、地元の人は橋の両脇にぬいぐるみを置いてプレゼントしている(写真提供:ピースボート災害支援センター)
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「言語の違い」早期のサポート重要

   PBVは、3月19日に3人をルーマニアに派遣。現地のNGO「ルーマニア平和研究所(PATRIR)」と連携し、視察と情報収集を進めてきた。

   現地から報告した、PBV事務局長の上島安裕さん。ウクライナと言語が異なるルーマニアは当初経由地として、そこから第三国へ向かうケースが多かったという。だが、「着の身着のまま」で逃れてくる避難民も多く、そのままルーマニアにとどまる人が増えてきた。UNHCRの統計によると、4月2日時点で同国に約63万6000人が逃れている。

   ルーマニア政府は国内6か所で、難民を受け入れる「避難所」を設置。ウクライナの避難者に、1年間の教育や医療、住まい、就労へのアクセスを保証している。一方、避難所に長期間滞在せず、国内のホストファミリーが受け入れて生活支援するのがルーマニアの特徴だ。NGO活動が活発で支援を続けているが、避難者の増大と共に受け入れ側の負担が深刻化している。

   避難民にとって、ルーマニアの「玄関口」のひとつが、首都にあるブカレスト北駅だ。ウクライナから鉄道で来る人が多く利用する。現在、ウクライナのパスポートや身分証明書(ID)を持っていれば、公共交通機関を無料で使える。

   現地を視察したPBV国際事業コーディネーター・鈴木郁乃さんによると、駅ではボランティアが、避難者の求めるニーズに応じたサポートを実施している。食事や物資の提供だけでなく、ここから西欧へ向かいたい人のために移動手段の手配、出国までの宿泊所の確保ときめ細かい。

   PATRIRの本拠地がある都市クルジュ・ナポカの駅でも、避難民が必要とする支援を行う。食料パッケージを配布し、休憩所や子どもの遊び場を確保している。また鈴木さんは、「早めに言語サポートできる人とつながることが大事」と指摘する。女性や子どもの避難者が多く、言葉が通じないなかで犯罪に巻き込まれる恐れがあるのだ。ブカレスト北駅同様、ここでも通訳が待機し、避難者の相談に対応しているという。

戦車にミサイル...眠れない子どもたち

   PBVの今後の取り組みとして、上島さんはルーマニア国内で、避難民の定住・移住支援、医療サービスを必要とする避難民の支援、避難民の心理社会的サポートを挙げた。またウクライナ国内で避難生活を送る人も、UNHCRの推計で650万人以上となっており救援を待っている。PBVでも、「一時避難所シェルターの増築、整備の支援」「医薬品の調達と運搬」「各地への食料・生活用品パッケージの配布」といった活動を行うと話した。

   ロシアが一方的にウクライナに侵攻してから、1か月以上。首都キーウ近郊ではロシア軍撤退後、大勢の民間人の遺体が発見された。東部は今も激しい攻撃にさらされている。上島さんによると、ルーマニアに避難してきたウクライナの子どもは、「自宅の庭に戦車が侵入してきた」「夜中にミサイルが飛来した時の様子が頭から離れない」と訴え、夜も眠れないという。救いを求めている人は、多い。日本からでも、支援団体を通じて支援を後押しすることはできる。

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   PBVでは、ウェブサイトで皆さんからの寄付を募っています。詳しくはこちらの文をクリックするか、以下のURLにアクセスしてください。

   https://pbv.or.jp/donate/2022_ukraine

(J-CASTトレンド 荻 仁)

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